原題 | Amour |
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制作年・国 | 2012年 フランス,ドイツ,オーストリア |
上映時間 | 2時間07分 |
監督 | 監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ |
出演 | ジャン=ルイ・トランティニャン,エマニュエル・リヴァ,イザベル・ユペール,アレクサンドル・ダロー |
公開日、上映劇場 | 2013年3月9日(土)~Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー |
~シンプルで濃密に夫婦の愛と人生を描く~
気付かないうちに容赦なく時間は流れている。人間の身体も意思に反して衰えが目立ってくる。その残酷ともいえる変化の過程を,要所を押さえて克明に映し出した作品だ。シンプルな脚本を基に構築された映像は,視覚的には現在という一点に集約しながら,そこから夫婦がこれまで歩んできた過去へと放射状のような拡がりを実感させる。人々は,透き通った哀しみに包まれた静謐な空間に誘われて,ミステリアスな開放と安堵に包まれる。
フレームに収められるのは音楽家の老夫婦ジョルジュとアンヌだ。パリの住まいは,優雅で快適な生活を感じさせるもので,ピアノも置かれている。それに引き換え,冒頭のシーンは強烈だ。消防署員がドアを破って入ってくる様子を,室内から待ち受けるように映している。窓を開けると外の音が室内に入ってきて外界と繋がる。ベッド上には埋葬するように横たえられたアンヌがいた。このような情景が生み出されるまでの顛末が描かれる。
カメラは現実の世界では一度だけ室外に出る。夫婦がシャンゼリゼ劇場に出掛けるシーンだ。アンヌの愛弟子のピアニストの演奏を聴くためだった。至福の時間を過ごすが,その翌朝アンヌの身体に異変が起きる。突然宙を見詰めたまま反応しなくなる。まるで彼女だけが周囲から取り残されたようだ。手術の後,右半身が麻痺して車椅子で自宅に戻る。そのとき二度と病院に戻さないで欲しいとジョルジュに頼む。新たな夫婦の蜜月が始まる。
だが,それは決して甘くない。アンヌは自由に動けなくなった自分に内心では苛立っている。言葉には穏やかさが影を潜め,表情も固くなっていく。そんな中,彼女がアルバムを見る場面が映え,「素晴らしい,人生よ」という台詞が煌めく。一方,管理人夫婦が買物や掃除を手伝ってくれるが,看護師にも頼ることになる。カメラはジョルジュの不安を具現する夢のシーンで少しだけ室外へ出る。冒頭のシーンがひたひたと確実に迫ってくる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.ai-movie.jp/
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