原題 | Searching for Sugar Man |
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制作年・国 | 2012年製作 スウェーデン・イギリス |
上映時間 | 1時間27分 |
監督 | マリク・ベンジェルール |
出演 | ロドリゲス |
公開日、上映劇場 | 2013年3月16日(土)~角川シネマ有楽町、梅田ガーデンシネマでロードショー |
~無名ミュージシャンが、ある日突然!を描く~
無名のミュージシャン、ロドリゲスを描いたドキュメンタリー映画だ。無名、アマチュア、売れずに音楽業界から消えたミュージシャンなど、これまで無数に近い人数に及ぶであろう。そんな中、彼を採り上げたのはなぜか。ドキュメンタリーだが、実にドラマティックで型破りなところがあるからだ。
彼は1968年にスカウトされて、1970年から1971年に2枚のアルバムをリリースした。ところが、発表したアメリカでは全く売れず、その後、彼は行方をくらました。しかし、1980年代に南アフリカで50万枚以上も売れる珍現象が起きた。アパルトヘイトの抵抗運動にピッタリの、歌詞内容を含めた音楽性が現地の人々を魅了したのであるらしい。ロドリゲスのビートルズ・タッチのキャッチーな曲「シュガーマン」などに魅せられた1人の南アフリカの男が、謎めいたロドリゲスの消息を探っていくことになる。というわけで、前半はミステリー・タッチで物語は進行していくのだ。
但し、ミステリー部は本編の半ばでストップし、後半は1人のミュージシャンのサプライズが、なだれるように映し出される。音楽ドキュメンタリーは多々あるが、今までは有名ミュージシャンを核にしたものが多かったように思う。というか、そうでなければ、映画館に人が入らないからだ。でも、それでは有名度によりかかって、ヒットを狙う映画のように見えなくもない。しかし、本作は全く違う。最近でいうと、「フラッシュバックメモリーズ3D」のような、アーティストが無名に近くても、特筆すべきエピソードがあるかないかが、大いなるキー・ポイントになるのだ。ぜひ、そのあたりを堪能していただきたいと思う。
それで、ビートルズやボブ・ディラン級の音楽をクリエイトしていたのに、なぜ彼は売れなかったのか。音楽業界にディープに関わっている人ならば、大たいは分かるであろう。彼はレコード会社「A&M」からメジャー・デビューしてしまったのだ。レコード会社によってファクトリー(会社的)・サウンドなるものが存在する。「A&M」はさわやかさがキーだ。所属アーティストでいえば、たとえばカーペンターズなど。ジョン・レノンのような内省的な音楽性だった彼が、ブレイクするには程遠いレコード会社だったのだ。1人のアーティストがいろんな要素を絡めてどのようになっていくのか。それを巧妙に分かりやすく描いた映画として、本作は記憶されるべき作品になった。
(宮城 正樹)
公式サイト⇒ http://www.sugarman.jp
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