原題 | MARTHA MARCY MAY MARLENE |
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制作年・国 | 2011年 アメリカ |
上映時間 | 1時間42分 |
監督 | 脚本・監督:ショーン・ダーキン |
出演 | エリザベス・オルセン、ジョン・ホークス、サラ・ポールソン、ヒュー・ダンシー、ブラディ・コーベット、クリストファー・アボット、ルイーザ・クラウゼ |
公開日、上映劇場 | 2013年2月23日(土)~シネマート新宿、3月2日(土)~シネマート心斎橋ほか全国順次公開 |
~脱カルト後の傷跡を、繊細な映像表現でとらえる~
怖い、そして暗い。だけど、時間がたつにつれ、目にした映像やヒロインの表情が、じわじわと濃くなって、胸に広がっていく。そのじわじわの根源にあるのは痛切だ。現代、世界各地で秘かに活動しているさまざまなカルト集団。彼らは一般社会から離れ、自分たちが信じている桃源郷を創りだそうとしているが、時に、悲惨で哀しい事件を引き起こすことがある。
そういう世界から逃れようとしたのが、ヒロインのマーサだ。山あいの農場で、マーシー・メイという名を与えられて集団生活をしていたが、ある朝、こっそりと脱け出し、公衆電話から、しばらく会っていない姉のルーシーに連絡をとる。貸別荘で休暇をとっていたルーシーとその夫は、快くマーサを受け入れてくれたが、マーサの異常な言動に引っぱりまわされることになり…。
新星エリザベス・オルセンの魅力が、この映画の吸引力を高めたことは間違いない。夢見ているようでいて、力強さも感じさせる大きな瞳、裏にあるものをのぞき込みたくなるような繊細な表情。次々とオファーが舞い込んでいると聞くが、今後が楽しみな女優さんの一人になるだろう。その彼女が演じたマーサのエキセントリックなふるまいや、ワケのわからない言葉は、カルト集団が押し付けた烙印なのであり、それゆえに観る者は痛切をかみしめる。姉夫婦と過ごす静かなる時間に、いきなり、マインド・コントロールされていた集団生活の記憶が割り込んでくるのだ。現在と過去を自在に往来する映像によって、マーサの苦しみや、彼女を取り巻く世界に対する違和感が伝わってくる。
ラストシーン、観客の感性に向けて放たれた、ある恐怖。それをどうとらえるか、何に想いを馳せるか。答えは一つではないだろう。女友達が語ったという脱カルトの体験談をもとに解釈を絞り、弱冠29歳でこの作品を世に出したショーン・ダーキン。サンダンス映画祭では監督賞に輝いたという手腕をとくとご覧あれ。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://video.foxjapan.com/movies/marcymay/
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