原題 | Life Without Principle |
---|---|
制作年・国 | 2011年 中国=香港 |
上映時間 | 1時間46分 |
監督 | ジョニー・トー |
出演 | ラウ・チンワン,リッチー・レン,デニス・ホー,ロー・ホイパン,ソー・ハンシェン,パトリック・クン,テレンス・イン |
公開日、上映劇場 | 2013年2月9日(土)~新宿シネマカリテ、シネマート心斎橋、他全国順次公開 |
~踊らされるのではなく,踊らないと損?~
香港を舞台として株価に翻弄される人々の姿を描いた映画だ。ちょっと群像劇っぽく,同時進行する複数のストーリーを巧みに交錯させている。テレサとパウという2人のキャラクターを主軸に据え,両者を繋ぐ人物としてユンを登場させる。この3人と関わりを持つ人たちもユニークだ。彼らの言動は可笑しくて哀しく,そして最後に人生は捨てたものではないと思わせてくれる。マネーゲームのスリルではなく人間の運に焦点が当てられた。
現実に起きた2010年のギリシャ財政危機を背景としている。ギリシャの国債がデフォルト不安から暴落し,ユーロが急落して株価も下落した。テレサは,そのころ銀行で投資信託の勧誘をしていたが,営業成績は最低だった。年配女性のチェンを勧誘する様子が丁寧に描写される。商品に関する説明を尽くして投資の了解を得た証拠を残すため録音するシーンは,滑稽ともいえる。手続が余りにも機械的に進められ,不気味な感触さえ生まれる。
パウは,裏社会を巧みに泳いでいる男で,人当たりが良くて割と手堅い。彼が警察に身柄を拘束されたワーの保釈金を苦労して集めるシーンは,コミカルで人情話の趣がある。パウが訪ねた社長ロンは,株価暴落による損失を軽減するため,投資額を改ざんしようとした。その辺りから複数のストーリーが大きく絡み合っていく。貸金業者ユンが銀行から1000万ドルの払戻を受けるが,500万ドルずつに分けられ,その帰趨から目が離せなくなる。
現金を貸して利息を稼ぐユンには,取引手数料で稼ぐ銀行より温かみが感じられる。そのユンが強盗に襲われる。強盗は金のために人の命を危険に曝すものだが,株価の変動にも似た側面がある。そう思わせる展開の末,テレサは辞表を上司に渡し,パウは葉巻をくゆらせる。エンドロールで流れるテーマ曲の「水漫金山」は味があり,人が生きることについてしみじみと考えさせられる。下りがあれば上りもあり,悲しみがあれば喜びもある。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://datsumeikin.net/
(C)2011 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved