制作年・国 | 2013年 日本 |
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上映時間 | 1時間58分 |
原作 | 乙武洋匡(おとたけひろただ)著『だいじょうぶ3組』毎日新聞社刊 |
監督 | 廣木隆一 |
出演 | 乙武洋匡、国分太一、余貴美子、榮倉奈々 |
公開日、上映劇場 | 2013年3月23日(土)~全国東宝系ロードショー |
~一番大事な授業が、ここにある~
観終わって、「こんな授業を受けたかった」と心底思った。乙武洋匡が自身の小学校教職経験を元に執筆した原作小説『だいじょうぶ3組』を、『余命1ヶ月の花嫁』の廣木隆一が映画化。TOKIOの国分太一が久々の主演で補助教員役を演じ、乙武が5年3組の担任を受け持つ新任教師・赤尾役で俳優デビューを果たした。子どもたちのイキイキした表情をドキュメンタリータッチで追いかけながら、山あり谷ありの一年を詩情豊かに綴る、奇跡といっても大げさではない感動学園ドラマだ。
教師だった頃保護者のクレームで教育委員会に異動となった白石(国分太一)は、自身が補助教員となることで、生まれつき手足のない障がいを持つ赤尾(乙武洋匡)の教師になる夢を叶えようとする。一年間という期限付きで臨時教員に採用された赤尾と白石が受け持つ5年3組で、生徒たちは戸惑いながらも”普通とは違う”先生に興味を示すが、上履き紛失事件が発生し、クラスは重い雰囲気に包まれてしまう。
桜の花が咲く始業式早々に遅刻してきた教師、白石と赤尾が二人で5年3組に現れた時の子どもたちの何とも言えない表情。そして、硬い空気の教室を一人ずつ目を見て教室を移動しながら出欠を取っていく赤尾、乙武演じるそのハツラツとした表情に、苦難の道はあれど、きっとこのクラスはうまくいく予感を感じさせる。桜の下で授業をしたり、運動会の徒競走で全員1位を取ったら坊主になると宣言して生徒たちを鼓舞したり、ことなかれ主義の先生がはびこる教育現場の現状を打破するかのように、生徒のためにいいと思ったことをひたすらやり通す赤尾の姿は、一度教職を離れた白石の心も大きく動かしていく。小学校時代を思い出すぐらい自然な乙武の授業ぶりや、主役でありながら役柄同様サポートに徹した国分のフォローぶりも見事だ。
ダウン症の姉を持つ少女や、つい先生に反発してしまう反抗期の表情を見せる少年など、様々な生徒の悩みを受け止め、時に自分の非力さや限界を思い知る赤尾。顔の表情だけで感情表現する乙武の演技を、キャメラは一瞬の変化も逃さず捉え、ルーキー先生の成長をじっと見守り続ける。赤尾がわかりやすい言葉で生徒たちの心に伝え続けているのは、人は一人一人違う個性を持っていること、そしてその個性を認めること。その問いかけは、自己や他人を否定しがちな大人への呼びかけでもあるに違いない。そして、つらくても「だいじょうぶ」と励ましてくれる声が、いかに子どもたちを救うかを教えてくれた。子どもたちのイキイキした表情とレトロな校舎の小学校風景に思わず自らの小学校体験が重なる学園ドラマ。廣木隆一監督が乙武と作り上げた直球勝負のドラマには、人生で本当に大事なことを教えてくれる“名授業”がいっぱい詰まっている。
(江口由美)
公式サイト⇒ http://daijyobu-3.com/
(C)2013「だいじょうぶ3組」製作委員会