映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『野蛮なやつら SAVAGES』

 
       

savages-550.jpg

       
作品データ
原題 SAVAGES
制作年・国 2012年製作 アメリカ 
上映時間 2時間9分
監督 オリバー・ストーン
出演 ブレイク・ライブリー、テイラー・キッチュ、アーロン・テイラー・ジョンソン、ジョン・トラボルタ、ベニチオ・デル・トロ、サルマ・ハエック
公開日、上映劇場 2013年3月8日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条ほかでロードショー。「R-15」+指定映画。

 

~犯罪映画とラブ・ストーリーがミキシング!~

 

 オリバー・ストーン監督の新作だ。1980年代後半から1990年代前半をピークに、1990年代後半以降のストーン監督作品には、今一つピリッとしないものが多かったように思う。9.11テロを取り上げた作品もあったが、圧倒的なパワーを持ち得た作品ではなかった。だが、本作には出来はともかくも、何ともいえない熱気やパワーがあった。

 かつて自作『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年作)で、アメリカン・ニューシネマ『俺たちに明日はない』(1967年)が意識下にあったように、本作ではそれが『明日に向って撃て!』(1969年)になった。監督自身がニューシネマの洗礼を大いに受けているだけに、こういう原点回帰するような映画作りにこそ、映画作家性をリフレッシュし、自由に遺憾なく発揮できるポイントなのかもしれない。

 但し、男2人が女1人を共有するというところは、モラル的にはどうなのか。ヒロインの女性は2人共好きだからと言っているが、女性蔑視はないにしても、かなり男のエゴイズムが入っているのではと思ったりもする。女性が見たら、どんな風に感じるのだろうか。フィクションとして見ればそれで済むのかもしれないが、少し気になったところである。映画はR指定もされているので、ご想像ください。確かに『明日に向って撃て!』でも、そういう3人の関係性は描かれてはいたが、本作ほど過激かつディープではなかった。さらりとさわやかな作りになっていた。しかし、それがストーン監督流だとするならば、それもまたよしなのかもしれない。ギリギリだとしても許容範囲だと思うし、理屈抜きの面白さは確実にある。

 そして、決着は2パターンにて披露される。1つはニューシネマ的な悲しい結末だ。上記の2作もそうだが、『イージーライダー』(1969年)や『バニシング・ポイント』(1971年)などに通じる。ただ、それで終わってしまえば、ニューシネマのバイオレンス度を高めて、現代的にバージョン・アップしただけに終わってしまう。もう一つの結末が、映画の余韻を深めてジ・エンドかどうかは別にして、かなりユニークなエンディングだと思う。最後に…。日本ではよく知られていない主役級の若手の3人よりも、脇を固めたトラボルタ、デル・トロ、サルマの熱演ぶりに酔った。熱気あふれる演技とは何かを考えさせる、好助演ぶりであった。

(宮城 正樹)

公式サイト⇒ http://www.yabanna-yatsura.jp
(C)Universal Pictures

カテゴリ

月別 アーカイブ