原題 | JACK REACHER |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 2時間10分 |
監督 | クリストファー・マッカリー |
出演 | トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、ロバート・デュバル |
公開日、上映劇場 | 2013年2月1日(金)~全国ロードショー |
~新たなヒーロー誕生!トム・クルーズの挑戦~
混沌の現代、ヒーローもまた波にさらわれ、時に正体不明になる。複雑な現代にあって堂々と英雄になれるのは今やこの男だけではないか。トム・クルーズが新しく挑んだ新キャラ『アウトロー』のジャック・リーチャーに、時代にふさわしい乾いたヒーロー像を見た。近年の彼は『ミッション・インポッシブル』のイーサン・ハントが大人気。1996年から始まった同シリーズは4作続き、今なお強力だが、この当たり役・諜報員ハントより孤独な流れ者ジャック・リーチャーはもっと濃い。
“彼の映画”というだけでワクワクした感覚…団塊世代にはあのスティーヴ・マックイーン以来のことだ。ハンサムとは言い難い“サル顔”なのに、何をやってもサマになるカッコ良さが不思議だった。出世作『荒野の七人』、痛快戦争映画『大脱走』、刑事もの『ブリット』、反戦映画に通じる『砲艦サンパブロ』…あの頃、映画ファンならみんな一度は憧れた。ジョン・ウェインが年老い、フランス代表アラン・ドロンは男前すぎて少々キザだった頃、今のブラピ、ジョニデ、ディカプリオ以上にカッコいい、映画スターの代名詞だった。各ジャンルのどれもが代表作と言えた。
トム・クルーズ映画のワクワク感はマックイーンを思い起こさせる。『アウトロー』のトムはプロに徹する男なのだが、いったい何者なのか? 正体不明のミステリアスな男。彼は人間関係を避け、仲間、恋人、ましてや家族もない。カード、携帯など身元特定につながるものも持たない。
ジャックが手懸ける犯罪もまた難解だ。ピッツバーグ近郊で川沿いを歩いていた5人の男女が、対岸から無差別に射殺される。警察は素早い捜査で犯人、元米軍のスナイパー、ジェームズ・バーを逮捕。指紋や薬きょうなどの証拠品はすべて彼の犯行を示していたが、取り調べでずっと黙秘していたバーはひと言「ジャック・リーチャーを呼べ」と答える。
なぜ? 明快なトム・クルーズ映画にしては珍しく、謎に満ちた展開に引き込まれる。居所も不確かなジャックが突然現れ、バーの弁護士ヘレン(ロザムンド・パイク)はジャックの驚きの事実を明かす。彼は、かつてバーがイラクで起こした銃撃事件の完全犯罪を解明していた。なぜバーは自分の犯罪を証明したジャックを呼び寄せたのか? そこにはより複雑で謎めいた事件の闇があり、感情を表さない凄腕男がきめ細かい捜査で小さな嘘を暴いていく。背後には巨大な陰謀が隠され、難解な事件の真相に迫っていく。
イーサン・ハントもサマになるが、コケた頬、思い詰めた表情、笑いを忘れたヒーローもまた、トムにはよく似合う。
英作家リー・チャイルドのベストセラー“ジャック・リーチャー・シリーズ”はすでに17冊。95ヵ国で出版されているという。生活に疲れた現代人が憧れる、腕一本の放浪人生と言えばいいか。こんなにも孤独でストイックなプロは、日本なら往年の時代劇「座頭市」、現代劇なら「ゴルゴ13」が近い。どちらも凄腕の殺し屋だが、どちらも自分だけの正義感で仕事をする。9・11以降、アメリカはこんなヒーローを待っていたのかも知れない。
(安永五郎)
公式サイト⇒ http://www.outlaw-movie.jp/
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