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『渾身 KON-SHIN』

 
       

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作品データ
制作年・国 2012年 日本
上映時間 2時間14分
原作 川上健一「渾身」(集英社文庫刊)
監督 監督・脚本:錦織良成
出演 伊藤歩、青柳翔、長谷川初範、宮崎美子、井上華月、中本賢、甲本雅裕、笹野高史、中村嘉葎雄、財前直見
公開日、上映劇場 2013年1月5日(土)~島根・山陰地区先行公開、1月12日(土)~全国ロードショー

 

~神集う出雲の国から届いた日本人の“心意気”~

 

konshin-2.jpg 「出雲から〈日本〉を伝える新しい映画文化を」と、出雲市に映画製作会社〈出雲ピクチャーズ〉を作っちゃった! 「真の豊かさとは何か、人々の心に響く映画を世界に発信しよう」という情熱の現れが形になったのだ。その第一弾が『渾身 KON-SHIN』である。酒や相撲、鉄、歌舞伎と神代の時代から日本文化を発信し続けてきた出雲の国だからこそ、作品にも説得力がある。このように誇りを持って故郷を描ける環境が羨ましく思えるほどだ。舞台は、島根県隠岐の島。出雲大社に次ぐ格式を誇る水若酢(みずわかす)神社の境内で20年に一度開催される隠岐古典相撲大会をクライマックスに、ばらばらになった家族が再び和解し、愛情を育む様子を、気負いなく情緒豊かに描いた感動作である。

 親の反対を押し切り麻里と駆け落ちした英明(青柳翔)は、一旦は隠岐の島を出て行ったが、故郷への愛着から島に戻ってくる。親に勘当され肩身の狭い生活の中、幼い子供・琴世を残して麻里が亡くなってしまう。麻里の親友だった多美子(伊藤歩)が、二人の面倒をみるようになり、琴世も多美子になつき、英明は古典相撲に情熱を注ぐ。次第に周囲の人々に認められるようになり、誠実な英明の人柄もあって二人は結婚し、親子3人平穏に暮らしていた。島では、20年に一度開催される水若酢神社の隠岐古典相撲大会を控え、なんと英明が地区代表として出場することに。しかも、正三役大関に選ばれるという名誉なことだ。いよいよ夜を徹して行われる宮相撲最後の大一番の取り組みが始まろうとしていた。

 地方での生活は、地域特有の因習やしきたりがありよそ者には住み辛いこともあるが、上手く馴染めばそれもまた地方の良さとして、豊かな生活に繋がる。生まれ育った土地なら尚更のこと。英明と多美子と琴世の3人を見守る周囲の人々の表情は一応に優しい。孫の琴世に初めて会う英明と亡くなった麻里の両親が対面する辺りも、宮相撲の緊迫感と厳かな境内の雰囲気が、ばらばらになった家族の心をひとつにまとめているようだ。頑張っている若者がいる、血を分けた孫がいるなら尚更だ。隠岐古典相撲の特徴のひとつに、「勝負のしこりを残さないように、一勝一敗の引き分けで終わること」というのがある。なんと平和的相撲なんだろう。神様の前では皆が寛容になり、疎遠になった心も再び和むといもの。それにしても、相撲のシーンでは2トンの塩が用意されたとか。普通、力士が土俵に上がる際一握りの塩を撒くが、隠岐古典相撲では観客が大量の塩を撒く。それが、一握りどころか、バケツでぶっかけるような量を大勢で撒くのだから、とんでもない量の塩が使われていた。まるで力士の漬物ができそうなくらい!?

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://kon-shin.jp/
© 2012「渾身」製作委員会