原題 | Moonrise Kingdom |
---|---|
制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間34分 |
監督 | ウェス・アンダーソン |
出演 | ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード他 |
公開日、上映劇場 | 2013年2月8日(金)~TOHOシネマズシャンテ/TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/TOHOシネマズ西宮OS/シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー |
~大人の世界をかき回す少年と少女の逃避行~
少年と少女の駆け落ち…となると、思い出すのは、大好きな映画『小さな恋のメロディ』(1971年、ワリス・フセイン監督)である。幼い恋を素晴らしい音楽と共にみずみずしいタッチで描いた名作だが、その古典的な描き方と比較すると、本作はかなり毛色が異なる。要するに、現代的でシニカルなマセガキたちのひと夏の冒険、それに引っ張り回される大人たちの滑稽さを暴露している。だが、ウェス・アンダーソンという特異な個性を放つ監督の手にかかると、オフビートでありながらも、どこかファンタジーの色合いを帯びてくるようだ。
少女スージーが住む家を映した冒頭のシーンで、すでにおとぎの国に連れて行かれたような気分になる。“いかにも作り物”感を前面に出し、そこの住人たちは現実離れしているかのような、或いは誰かの操り人形のごとし。スージーは双眼鏡でしょっちゅう外の世界をのぞいているのだが、その双眼鏡は双方向効果をもたらす小道具なのだと気づかされる。映画を観るということは、登場人物たちの世界をのぞき見することなのだということを強く感じさせる。そして、舞台となるのが、ニューイングランド沖に浮かぶ小島。限られた狭い空間だから、どうせそうなるだろうという展開は見えてくるが、これもまた計算づくなのだ。
キャストには名優の名がずらり並んでいるが、従来のイメージから考えて非常に意外性があって面白かったのが、孤独な警部役のブルース・ウィリスと、とんまなボーイスカウト隊長役のエドワード・ノートン、さらに、無情な福祉局の職員を演じたティルダ・スウィントン。ご本人たち、かなり楽しみながら、この演技合戦を繰り広げたんだろうなと想像してしまう。周囲からお互いに変人扱いされている少年サムと少女スージーの恋、それはどこか“ごっこ遊び”のようでいて真剣、ドライな哀切感の中から、誰かを誰よりも大切に思う気持ちの素敵さがじんわりとにじみ出てくる。
(宮田彩未)
公式サイト⇒ http://moonrisekingdom.jp/
© 2012 MOONRISE LLC. All Rights Reserved.