映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『もうひとりのシェイクスピア』

 
       

shakespeare-1.jpg

       
作品データ
原題 ANONYMOUS
制作年・国 2011年 アメリカ 
上映時間 2時間09分
原作 脚本:ジョン・オーロフ
監督 ローランド・エメリッヒ
出演 リス・エヴァンス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ジョエリー・リチャードソン、デヴィッド・シューリス、ゼイヴィア・サミュエル、セバスチャン・アルメストロ、ジェイミー・キャンベル・バウアー、デレク・ジャコビ
公開日、上映劇場 2012年12月22日(土)~TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館、2013年1月12日(土)~TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/TOHOシネマズ西宮OS/シネ・リーブル神戸 他全国順次公開

 

~シェイクスピア劇より面白いシェイクスピア別人説~

 

shakespeare-3.jpg 時代を超えて世界中で親しまれているシェイクスピア劇。英文学界で燦然と輝くウィリアム・シェイクスピアに、なんとゴーストライターがいたとは!? シェイクスピアはエリザベス1世の頃の劇作家として有名だが、イングランドの片田舎ストラトフォード・アポン・エイヴォン出身で、高等教育を受けた記録もなく、作家なのに自筆の書簡や詩集、原稿の一枚も残されていないという。そんな彼が、宮廷内部の詳細な人間関係を描いた『マクベス』『リア王』『オセロ』『ハムレット』などや、イタリアにも行ったことがないのに、『ロミオとジュリエット』『ベニスの商人』『ジュリアス・シーザー』『真夏の夜の夢』などが書けるはずがないという。

 そうしたシェイクスピア別人説は17世紀ぐらいからあったらしい。別人だとすると、一体誰が? 哲学者のフランシス・ベーコンや同年齢の劇作家のクリストファー・マーロウ、遠縁にあたる外交官のヘンリー・ネヴィル、そして、本作の主人公となる第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアなどが推定されている。

 本作は、『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』『2012』などSF大作を多く手掛けてきたローランド・エメリッヒ監督が、シェイクスピア別人説の構想を長年温めてきた脚本家のジョン・オーロフと組み、「第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィア説」に基づいて、英文学の常識を覆す一大史劇ロマンを格調高く描いている。

 エリザベス朝演劇隆盛の頃のロンドン。自作の芝居が奮わず低迷していた劇作家のベン・ジョンソン(セバスチャン・アルメストロ)は、ある貴族から分厚い戯曲を渡され、それを自分の名前で公演しろと言われる。ところが、売れなくても作家としてのプライドが許さず、無記名で役者兼演出家のシェイクスピア(レイフ・スポール)の手にゆだねてしまう。するとたちまち大人気となり、それを書いた劇作家に注目が集まる。そこですかさず名乗り出たのがシェイクスピアだった。それから謎の貴族が書く戯曲は次々とシェイクスピアの名で公演され、政治に不満を抱く人心を捉えるようになる。子供の頃、芝居好きな女王のために演じたことが忘れられず、戯曲を書くようになったオックスフォード伯。それは、ある理由で彼を宮廷から締め出した宰相セシル(デヴィッド・シューリス)とその息子への積年の恨みや、エリザベス女王への思慕など、複雑な感情が織り込まれた物語だった。

shakespeare-2.jpg 主演のオックスフォード伯には、『ノッティングヒルの恋人』(‘99)でヒュー・グラントのルームメイトをコミカルに演じ、また『アメイジング・スパイダーマン』(‘12)では哀愁漂う悪役を演じたリス・エヴァンスが演じている。宮廷への出入りを禁じられ、書くことによって正気を保つという悲運の貴族を、見まごうばかりの迫力で演じている。また、エリザベス1世をヴァネッサ・レッドグレイヴが、その若い頃を彼女の実の娘であるジョエリー・リチャードソンが演じ、他にもデヴィッド・シューリスや、自らもオックスフォード伯説を唱えるデレク・ジャコビなど、舞台出身の名優が脇を固める。さらに、『トワイライト』シリーズにも出演したゼイヴィア・アミュエルとジェイミー・キャンベル・バウアーのハリウッド若手の美貌もプラスされ、絢爛豪華な宮廷内や演劇隆盛のロンドンの街を活写して惹きつける。ルネッサンス調のコスチュームも美しく、あのリス・エヴァンスをこれ程までに魅力的に見せるとは、びっくり!

 演劇を志す者なら一度はその舞台に立ちたいと憧れるシェクスピア劇。韻を踏むその文体が奏でる美しい響きは、時代を超越した世界観を醸し出し、人間社会がもたらす矛盾や理不尽さが生み出す悲痛、苦悩、愛憎、歓喜など、普遍的テーマで人の心を魅了する。あなたはどの物語がお好きですか。様々な国の様々な階級の人々の人間性を精密に描出した物語や詩篇は、一体どんな人物が編み出したのだろうか。ますます興味津々!

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://shakespeare-movie.com/
(C) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC All Rights Reserved