原題 | Albert Nobbs |
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制作年・国 | 2011年 アイルランド |
上映時間 | 1時間53分 |
監督 | ロドリゴ・ガルシア |
出演 | グレン・クローズ,ジャネット・マクティア,ミア・ワシコウスカ,アーロン・ジョンソン,ブレンダン・グリーソン |
公開日、上映劇場 | 2013年1月18日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、2月2日(土)~京都シネマ、元町映画館 他全国順次公開 |
~自分らしいペルソナで生きる幸せを思う~
19世紀後半の貧困にあえぐダブリンを舞台とする,哀しくも人生への慈愛に満ちた映画だ。アルバート・ノッブスは,生まれも本当の名前も知らず,ただ母だという女性の写真を大切に持っていた。彼女は,14歳のときから生きるために男としてウェイターの仕事をしてきた。死ぬまで独りだと覚悟を決めていたが,男として表舞台で生きている女性ヒューバート・ペイジの輝きに触発され,一度は消し去った自分自身を取り戻そうと決意する。
アルバートは,タバコ店を持つのが夢で,そのための資金をコツコツと貯めており,目標の600ポンドまであと半年くらいだった。同じホテルに勤める若くて可憐なヘレンは,ヒューバートから見ても魅力的で,アルバートの心をも虜にしてしまう。だが,彼女は,血気盛んな青年ジョーに希望を見出し,貧困から抜け出したいと願っていた。彼もまた,父親のようになりたくないとの思いから,現状を脱出して自分を表現したいともがいている。
アルバートは,ヒューバートと一緒にその妻キャスリーンが縫製した婦人服を着て出掛ける。家を出るときの表情は硬くて動きはぎこちない。そのため,両手を広げて海辺を駆けるアルバートの嬉しそうな表情が際立つ。だが,すぐに転倒してしまう。夢の実現に期待が膨らむ時間はあまりにも短い。その後,アルバートは自分に正直になって人生を変えようと行動に出る。その結末が暗示されたようで,明るいながらも遣る瀬なさが尾を引く。
誰しも幸せを求めて夢を実現したいと願いながら,現実と折り合うためにペルソナを身に付けて生きている。ホロラン医師の言うとおり,我々は自分自身の仮装をしている。彼は,偽りのアイデンティティの中で生きていたアルバートを哀れだと言う。だが,男の子を出産したヘレンが映されるエンディングには,彼女はきっとその子を立派に育て上げるという希望に満ちている。彼はアルバートやジョーが望んだ幸せを手に入れるに違いない。(河田 充規)
公式サイト⇒ http://albert-movie.com/
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