原題 | L'ordre et la morale |
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制作年・国 | 2011年 フランス |
上映時間 | 2時間14分 |
監督 | 監督・脚本:マチュー・カソヴィッツ |
出演 | マチュー・カソヴィッツ,イアベ・ラパカ,マリク・ジディ,アレクサンドル・ステイガー |
公開日、上映劇場 | 2012年11月24日(土)~シネマスクエアとうきゅう、梅田ガーデンシネマ、T・ジョイ京都、神戸元町映画館 他全国順次公開 |
~対立より対話を,伝えられなかった思い~
なぜこんな結末になったのか,というフィリップ・ルゴルジュ大尉のナレーションで始まる。彼は,憲兵隊治安部隊に所属する,人質救出が任務の交渉人だ。1988年4月,フランス領ニューカレドニアでカナック独立派に憲兵隊宿舎が襲われ,約30人が人質となる事件が勃発し,その解決にルゴルジュの部隊が派遣される。本国では,大統領選が間近に迫り,再選を目指す社会党のミッテラン大統領と保守派のシラク首相が厳しく対立していた。
フランス軍が攻撃を開始した5月5日までの10日間の出来事が描かれる。ルゴルジュの部隊が空港に到着すると,シラク首相により既に陸軍が派遣されており,その指揮下に置かれた。その中で,ルゴルジュは,カナック族のリーダー,アルフォンス・ディアスとの信頼関係を築き,解放戦線とフランス国家との間で平和的な解決の可能性を探っていく。一貫してルゴルジュの視点から描写されるため,彼の抱えるジレンマが直に伝わってくる。
我々の土地だ,フランスじゃないという村長の言葉が重い響きを持つ。彼らは,自分たちの風習や伝統が消えるという危機感から立ち上がり,独立を目指していた。ルゴルジュは敵の理解こそ解決の早道だというが,政府は解放戦線をテロリストとみなして強硬路線に進んでいく。対立より対話が重要だという訴えが本国に届かない。大統領選のTV討論そのものが対話ではなく対立だった。ルゴルジュの思惑と反対の方向に時代が動いていく。
ルゴルジュが妻と電話で話すシーンでは,カメラはずっとその後ろ姿を映している。彼は,ポンス海外大臣から大統領が攻撃を認めたと告げられた後で,自分の無力さに消沈しながらも,人質救出に向かう決死の覚悟を固めていた。事実を客観的に追い続ける中で,唯一と言ってもいいエモーショナルなシーンだ。ここには本作のエッセンスが凝縮され,ルゴルジュが体験した険しい現実と痛ましい記憶が,より一層深く観る者の心に刻まれた。(河田 充規)
公式サイト⇒ http://uragiri.ayapro.ne.jp/
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