原題 | Quatre nuits d’un reveur |
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制作年・国 | 1971年 フランス=イタリア |
上映時間 | 1時間23分 |
監督 | ロベール・ブレッソン |
出演 | イザベル・ヴェンガルテン、ギヨーム・デ・フォレ、ジャン=モーリス・モノワイエ、ジェローム・マサール、パトリック・ジュアネ |
公開日、上映劇場 | 2012年12月22日(土)~梅田ガーデンシネマ、2013年1月19日(土)~京都シネマ にて公開 |
~35mmニュープリントで甦る伝説の逸品~
青春時代は、トリュフォーやゴダール、ヴィスコンティ、そして、ブレッソンたちの名を上げ、語り合うことが、映画好きを証明するステイタスのようだった。しかし、いま彼らの作品に触れると、年輪を刻んでこそ、な~るほど!と膝を叩きたくなることもあるし、昔とは異なる感性で受けとめることもあるのだなとしみじみ思う。
ドストエフスキーの短編「白夜」は、1957年にルキノ・ヴィスコンティによって映画化されているが、ロベール・ブレッソンは舞台をパリに移して、彼ならではの切り取り方で4夜にわたるこの恋物語を展開したが、1971年の初公開以降、本国フランスでもめったに上映されることがなかったという。そのお宝のような映画を、35mmニュープリント版としてこのたびスクリーンで見ることができるのは、仕事を辞めてまで奔走した人の尽力があったからと聞き、有難くかつ非常に嬉しく思う。そして、やはりフィルムは美しいなと改めて実感した。
パリのセーヌ川、そして、レオン・カラックス作品でも有名なポンヌフを背景に、短い時間を共にした男と女の物語。夢想家肌の画家である青年ジャックは、ある夜、橋から身を乗り出そうとする美しい女性マルトと出会う。お互いのことを語り合ううちに、ジャックは次第に彼女に惹きつけられていく。実はマルトは、「結婚できるようになったら、一年後に会おう」という言葉を残して去っていった恋人を待っているのだ。ちょうど一年目のその晩も、次の晩も、三夜目も男の姿は現れない。ジャックと一緒に恋人を待つ夜のひととき、マルトの気持ちは次第に揺れていき…。
芝居がかった演技や大げさな感情表現を嫌ったブレッソンは、プロの俳優を使わない主義で、本作でも映画初出演の2人の個性を白いキャンバスに見立て、自らの筆、自らが好む色で彩った。抒情的なお話なのに、どこかユーモアすら感じさせ、特にジャックが自分の部屋で、テープレコーダーに、妄想とも希望とも夢ともとれる言葉を録音するシーンでは、ついくすりと笑ってしまう。
男がロマンティストで、女はリアリスト…よく言われるそういうことを描いたものだと思っていたが、逆転なのかもしれないと考える。マルトにとって、いつ会えるやも知れぬ恋人はロマンであり、実際に隣にいてくれるジャックこそが次第にリアルになっていく。だが、彼女が結局選び取ったものは、いつかリアルになるであろうことを考えもしない夢のようなロマンだったのだ、と。やっぱり、男のロマンと女のロマンはかくも違う。(宮田 彩未)