原題 | Woody Allen:A Documentary |
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制作年・国 | 2011年 アメリカ |
上映時間 | 1時間53分 |
監督 | ロバート・B・ウィード |
出演 | ウディ・アレン、ペネロペ・クルス、スカーレット・ヨハンソン、ダイアン・キートン、ショーン・ペン、クリス・ロック、ミア・ファロー、ミラ・ソルヴィーノ、ナオミ・ワッツ、ダイアン・ウィースト、オーウェン・ウィルソン、マーティン・スコセッシ他 |
公開日、上映劇場 | 2012年11月10日(土)~TOHOシネマズ シャンテ、11月17日(土)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS 他公開 |
~たぶん巨匠などと呼ばれたくない映画の虫~
「…こんなにも運が良かったのに、人生の落後者の気分なのはなぜだろう」。ラストでウディ・アレン自身が語るこの言葉に、彼の人となりが顕著に表わされている。本人が出演しようがしまいが、彼の幾つかの映画の主人公には彼自身が色濃く投影されていて、それは、理屈っぽい皮肉屋で、頑固なところがあり、やたら惚れっぽく、青くさい少年みたいなロマンティストの側面を持ち、しかしながら、女性や世間に対して癒されぬコンプレックスを抱え続け、自信がありそうに見えて全く自信を持てない…というようにかなり複雑な男である。彼は、1年に約1作という多作ぶりでも知られるが、できあがったものに満足できず、常に次へと進もうとする。これまで与えられてきた栄誉に興味を示さないというより、実は今でもまだ、自分の力を疑ってさえいるのではないかという気すらするのだ。しかし、そこにこそ、彼の原動力があるのではないだろうか。
プライヴェートなことを露わにするのを極力避けてきたアレン監督だが、このドキュメンタリーでは今まで語られなかった秘話や、創作の拠りどころまでが紹介される。彼のミューズたちの率直な意見や、ギャグ・ライターから始まってスタンダップ・コメディアン、映画監督へと足を運んできた彼の歴史を常に裏から見つめてきた人たちの証言、カンガルーとボクシングするテレビ番組など古い貴重な映像もいっぱいで、実に興味深い。
コメディを起点とした彼だが、人間の光と影を浮き彫りにするような作品づくりを希求し出す。アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞・脚本賞に輝いた1977年制作の『アニー・ホール』は大きな転機となったようだ。当時恋人だったダイアン・キートンのキュートな魅力は、今でも繰り返し観たくなるほどだし、私にとって、ウディ・アレンって凄いと思った最初の作品。独特のユーモアと乾いたセンチメンタリズムにはまってしまった。それ以降の幾つかの作品は、手を変え、品を変えた『アニー・ホール』だ、ある意味で。
どんな芸術作品でも、お金や権力を持つ人間が余計な口を出せば出すほど、作品はレベルダウンしてしまう。彼は、口を出さず、お金だけ出してくれという姿勢を貫いてきた。自分が作りたいものだけを作れる環境にある、そんなことが可能な人間は非常に稀であり、これこそが、彼に与えられた至上の幸福なのだと思う。77歳、そう簡単には枯れそうにない、いまだ落後者だと思い続けているのだから。(宮田彩未)
公式サイト⇒ http://woody-documentary.jp/
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