原題 | DREAM HOUSE |
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制作年・国 | 2011年 アメリカ |
上映時間 | 1時間32分 |
監督 | ジム・シェリダン |
出演 | ダニエル・クレイグ,ナオミ・ワッツ,レイチェル・ワイズ |
公開日、上映劇場 | 2012年11月23日(金・祝)~シネマサンシャイン池袋、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条)ほか全国ロードショー |
~家族を愛するが故に葛藤する心理ドラマ~
ウィルが最高の編集者と讃えられ,名残を惜しまれながら,家族のために退職する。これが始まりで,その後時折,謎めいた台詞や人物描写が挟まれる。郊外の“ドリームハウス”では妻リビーと娘2人が待っていた。満ち足りた家族の情景がスクリーンの中で展開する。だが,その家で5年前,4月の吹雪の日に妻と娘2人が銃で惨殺され,夫も妻に撃たれる事件があった。雪明かりの夜の光景がスクリーンの外まで冷たい空気を運んでくる。
チラシに〈ヒューマンサイコスリラー〉と謳われている。確かに,スリラーから心理ドラマ,そしてサスペンスへと,ウィルの心情に即して趣を変えていく作品だ。5年前の事件で生き残った夫ピーターは,家族の死から自分の心を守るために幻想の世界で生きていた。彼が事件の容疑者だったが,未だ真相は解明されていなかった。ウィルは,家族を守るため真相を追求するが,混迷と葛藤が深まり,家族や自身の存在さえ危うくなっていく。
開巻して10分程で印象的なシーンがある。妹ディディが窓に男の人が見えたと脅える夜が明けた朝,雪に足跡が残されていた。それに気付いたウィルが訝しげな表情で足跡を追って家の周りを歩いていくと,前のシーンで娘たちが練習していた「エリーゼのために」が流れてくる。窓から覗くと,家の中では姉トリッシュがピアノを弾きディディが踊っている。更に別の窓に進んでいくと,家の中には妻の姿が見え,何気ない日常のようだった。
それは,ごく短いが,ウィルが鏡の裏側へ行ったような奇妙な感覚が残るシーンだ。彼がいつの間にか別の世界に入り込み,そこから妻子の姿を覗いているような感覚である。全てが解決して振り返ったとき,このシーンを映し出した監督のセンスの良さに脱帽するしかない。その後,向かいの家の住人アンがウィルに言えない何かを隠している雰囲気を漂わせ,要所で登場してドラマに深みを与える。ラストでは,夫婦愛へと見事に着地する。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.dreamhouse-movie.com
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