～心の琴線をつま弾く、壊れかけた男女の軌跡～

　時々、すごく地味なのに、何度も反すうしたくなり、いつしか、心に住みついてしまう映画と出逢う。これは、私にとって紛れもなくそういう一本になるだろう。ジョセフは妻に先立たれ、酒を飲んでは大暴れする失業中のトラブル男。怒りに任せて、飼っていた犬まで殺してしまう。そんなどうしようもないジョセフと、チャリティ・ショップで働くハンナの人生が交差していく。だが、彼は知らなかった、ハンナの実生活がどれほど悲惨で、どんな事件を招いてしまうのかを。

　ジョセフに似た人が私の周囲にもいて、多感な頃は嫌な思いをしたが、今ならわかる。彼のやり場のない怒りとその切ないほどの悲しみが。ハンナの店で古着に顔を押しつけて泣くジョセフの姿やハンナの健気さに胸がえぐられ、事件の後、二人が再会する場面では涙が止まらなかった。ガラス細工のように繊細なラヴストーリー！俳優たちの緻密な演技に加え、俳優から転身した監督の力量にも圧倒される。（宮田 彩未）

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