(C)2011 Lago Film GmbH, Talking Cure Productions Limited, RPC Danger Limited, Elbe Film GmbH. All rights reserved.
原題 | A Dangerous Method |
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制作年・国 | 2011年 イギリス,ドイツ,カナダ,スイス |
上映時間 | 1時間39分 |
監督 | デヴィッド・クローネンバーグ |
出演 | マイケル・ファスベンダー,ヴィゴ・モーテンセン,キーナ・ナイトレイ,ヴァンサン・カッセル |
公開日、上映劇場 | 2012年10月27日(土)~Bunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条)、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー |
~濃密な舞台が放つ空気感に包まれた映像~
人間の行動は自分の知らない無意識に大きく規定されているというフロイト(1856生)とユング(1875生)。ユングは,精神分析学を創始したフロイトを一時は父親のように慕ったが,約6年で決別した。そのころのユングの心の軌跡をたどるドラマだ。後に分析心理学を打ち立てたユングも自分の内面は十分に分析できなかった,というトーンで描かれている。カメラが捉えるビジュアルも,割と安定感のある構図で,心の変容を映している。
ザビーナがユングの勤めていたチューリッヒの精神科病院へ連れて来られる。彼女は強いヒステリー症状を呈していた。正に無意識から浮かび出ようとする情動に必死で抵抗して苦悶しているようだ。その後,彼女が抑圧していた4歳ころの体験が自由連想法で明らかになるシーンは興味深い。ユングが自分の妻を被験者として言語連想検査を行うシーンもある。そのとき助手を務めたザビーナの鋭い分析は,何とも危うい方向性を示していた。
もう一人,登場シーンは短くても観客に強い印象を残し,ユングに大きなインパクトを与えた人物がいる。ユングは,精神分析医で強迫神経症のグロスを診察する。彼は,快楽原則に忠実に生きているような人物で,逆にユングが抑圧していたザビーナへの欲望を刺激する。一方,ユングとフロイトの間の亀裂が見えてくる。フロイトは,息子は父親に敵意を抱くという自らの理論にユングとの関係を重ねていたのかも知れない。無意識の中で。
それがアメリカ行きの船のシーンで端的に示される。2人は夢の分析をするが,フロイトが自分の権威を脅かされまいと話を止めてしまう。ユングが初めてフロイト宅を訪問した際にも印象的なシーンがあった。そこにはフロイトとの話に夢中で空気の読めないコミカルなユングがいた。20世紀から現在に至る人間観や世界観といった思想に大きな影響を与えた2人も決して特別な存在ではない。紳士然として,ちょっと茶目っ気のある作品だ。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.dangerousmethod-movie.com/
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