～歩いて、歩いて、自由をゲット！～

　第２次大戦中の脱出劇は山ほどある。「大脱走」（1963年）に象徴されるように、多くはスリル感と脱出方法が醍醐味だった。その点、本作はちと異なる。酷寒のソ連・シベリアの労働収容所から７人がエスケープし、南へ向かって、ひたすら歩き続けるのである。目的地はインド。地図を見て、その距離にゾッとした。生命力、気力、体力、運の強さが求められる。どんな難関が待ち構え、誰が脱落していくのか、そこに目がクギ付けになった。

　リーダー役のポーランド軍兵士（スタージェス）の実話を元に映画化された。冷静な米国人技師（ハリス）とがさつなロシア人犯罪者（ファレル）の対照的なキャラ、途中から加わる謎めいた娘（ローナン）がメリハリを出していた。ただ、最大の難所である真冬のヒマラヤ越えをあまりにもあっさり描きすぎた。あゝ、残念。ともあれ雪と砂漠が出てこないサバイバル・ドラマは蛸の入っていないたこ焼きと同じだと再認識した。（武部　好伸）

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