制作年・国 | 2012年 日本 |
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上映時間 | 2時間13分 |
原作 | 辻村深月『ツナグ』新潮文庫刊 |
監督 | 平川雄一朗 |
出演 | 松坂桃李、樹木希林、佐藤隆太、桐谷美鈴、橋本愛、大野いと、遠藤憲一、八千草薫、仲代達也 |
公開日、上映劇場 | 2012年10月6日(土)~全国東宝系ロードショー |
~“死者”ともう一度つながる奇跡の物語~
人は誰しも、今は亡き大事な人にもう一度会いたいという気持ちを秘めているのではないか。ただ純粋に「会いたい」というだけでなく、時には懺悔や、真実を確かめたいという欲求を秘めているかもしれない。死者と生者を橋渡しする”ツナグ”と、”ツナグ”によって再会を果たす人々が織りなす一期一会の物語は、我々生きている者と逝ってしまった者が実は常に寄り添う存在であることを静かに問いかける。
本作が単独初主演となる松坂桃季が演じるのは、”ツナグ”修行中の高校生歩美。樹木希林演じる祖母アイ子は、幼くして両親が不可解な死をとげた歩美と暮らしながら、自分が数十年続けてきた”ツナグ”の後を継いでもらおうと、歩美を依頼人対応に向かわせる。最初は達成感を味わっていた歩美が、立ち会いを重ねるにつれ他人の人生に立ち会うことの重みや、死者を呼び出すことの傲慢さと葛藤し、成長していく姿が実に真摯だ。アイ子との食卓や日常の会話の中に、物語の縦糸として死者や死と対峙するというテーマがさりげなく盛り込まれている。
横糸となるのは、”ツナグ”を通して、母親に病気のことを伝えられなかった息子、親友への殺意を見破られていたか確かめようとした同級生、7年前に婚約者が失踪した男らが、最後に会いたい相手と一晩を過ごすそれぞれのエピソード。遠藤憲一や橋本愛、佐藤隆太が、会いたい人と最後に向き合おうとした心境を情感豊かに表現している。ようやく素直になれた人、本当に最後の機会なのに嘘をついてしまう人など、この世に遺された者の苦しみや孤独さが滲むのだ。
アイ子が劇中で語る詩「最上のわざ」(ヘルマン・ホイヴェルス著『人生の秋に』春秋社 所収)の一節に、「老いの重荷は神の賜物」というくだりがある。死者と生者を”ツナグ”奇跡の物語は、本作で見事なアンサンブルを見せた樹木希林、八千草薫、仲代達也ら名優たちを若手俳優陣と”ツナグ”物語であるかのようにも見えた。劇中で度々挿入される月や朝陽、エンドクレジットで流れる金環日食の映像が、生と死や我々の心の中の秘めた想いをも照らし出すファンタジー群像劇。自分にとって本当に大事な人を今一度思い巡らせる、貴重な時間を与えてくれた。(江口 由美)
公式サイト⇒ http://tsunagu-movie.net/
(C)2012 「ツナグ」製作委員会