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『ソハの地下水道』

 
       

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作品データ
原題 W ciemności (In darkness
制作年・国 2011年 ドイツ・ポーランド 
上映時間 2時間25分
監督 脚本:アグニェシュカ・ホランド
出演 ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ、ベンノ・フユルマン、ヘルバート・クナウプ
公開日、上映劇場 2012年9月22日(土)~TOHOシネマズシャンテ、9月29日~テアトル梅田、10月27日~シネ・リ-ブル神戸、近日公開 京都シネマ


~一介の労働者の苦渋に満ちた、勇気ある決断~

 実話の重みが観る者の心を撃つ。1943年、ナチス占領下のポーランド。下水修理と空き巣稼業で、貧しくも妻子を養っていたソハは、強制収容所行きを逃れるため地下に逃げ込んできたユダヤ人達を見つける。地下水道の隅々まで知り尽くしているソハは、金品と引き換えに彼らをかくまうことを約束するが…。

soha-2.jpg ソハには、初めから強い信条や道徳心があったわけではない。食糧を運んだり、面倒を見続けるうちに、いつしか情が移り、引くに引けなくなってくる。ユダヤ人狩りが執拗に行われる中、秘密が露見すれば、ソハだけでなく家族までもが処刑される恐怖が迫る。命を危険にさらしてのあまりの重圧に、迷いながらも自分の信じるままに生きたソハの、言葉にならない葛藤、忍耐が伝わり、胸が熱くなる。ソハを支える妻を演じるのは、『アンナと過ごした4日間』の主演女優キンガ・プレイス。寛容で温かな笑顔がソハを勇気づける。

 暗闇に包まれた、迷路のような地下水道の中で、肩寄せ合って生きるユダヤ人の家族や恋人達。次々と押し寄せる苦難を乗り越え、何か月も恐怖と隣り合わせで過ごす緊張の中、人はどこまで賢明で冷静でいられるのか。生きる希望を失うことなく、互いに支えあって生き抜く姿に圧倒される。観客もまた、下水道の闇の中で、人のつながりのぬくもりを感じながら、一緒に過ごしてきたような気持ちになる。

soha-3.jpg ソハの心をとらえたのは、ユダヤ人の幼い子どもの存在。そっと手を差し出したソハの手に手を重ねることで生まれる絆。映画のポスターの、赤いリボンをつけた少女とソハとが地下の下水道孔から少しだけ顔を出して外を眺める写真。この不思議な絵の裏側にどれだけの思いと祈りと優しさが詰まっていることか。

 罪もない人々の命を理不尽に奪うナチスへの怒りが全篇を貫く。ラストの登場人物たちのリアルな表情の描写は特筆すべき。感傷に流されることのない冷静な演出が深い感動を呼ぶ。(伊藤 久美子)
 

公式サイト⇒ http://www.sohachika.com/
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