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『高地戦』

 
       

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作品データ
制作年・国 2011年 韓国
上映時間 2時間13分
監督 チャン・フン
出演 シン・ハギュン、コ・ス、イ・ジェフン、リュ・スンリョン、キム・オクビン
公開日、上映劇場 2012年10月27日(土)~シネマート新宿、シネマート六本木、11月3日(土)~シネマート心斎橋、11月24日~元町映画館、12月~京都みなみ会館


~「なぜ終わらない!」朝鮮戦争最前線の悲痛な叫び~

 3年1ヶ月続いた朝鮮戦争の戦闘が終わりを告げたのは停戦協定成立の瞬間ではなかった・・・。歴史にすら埋もれていた”停戦協定成立後の12時間の戦い”を初めて描き出したのは、『義兄弟 SECRET REUNION』のチャン・フン監督。『JSA』の原作者パク・サンヨンの脚本から、新たな朝鮮戦争の悲劇とその裏に生まれていた兵士たちの絆、そして史上まれにみる難地形、高地での激しい戦いを壮大なスケールでスクリーンに刻み込む。

 kouchisen-2.jpg1953年、韓国板門店。2年前に始まった停戦協議が難航を極める中、韓国軍防諜隊中尉のカン・ウンピョ(シン・ハギュン)は、激戦の最前線であるエロック高地のワニ中隊にいる人民軍内通者を調べる任務を命じられる。ウンピョはそこで開戦直後北朝鮮軍に捕まった、旧友スヒョク(コ・ス)と再会し無事を喜ぶが、実質的なリーダーとなったスヒョクに一抹の疑問を抱きはじめるのだった。

 一向に終わらない過酷な高地戦を戦い続けているワニ中隊では、精鋭揃いのイメージを覆す人間味溢れる兵士たちが、戦いの合間には水のような酒を酌み交わし、赴任したばかりの若者が歌う流行歌「戦線夜曲」に涙する。その裏には戦場で生き残ることは相手を殺すことだと身を持って知ったスヒョクたちの壮絶な体験と葛藤し続ける姿があり、兵士たちの心の描写に惹きつけられる。一方、既に何十回も韓国、北朝鮮が頂上奪回を繰り返す最前線ならではの物々交換や内通をチャン・フン監督はユーモアを交えながら表現し、世間では許されない両軍間の絆に驚かされた。

kouchisen-3.jpg 急斜面の高地で展開する死闘の数々を経て、ようやくラジオから聞こえた「停戦協定成立」の知らせに喜んだのも束の間、12時間の“延長戦”を言い渡された兵士たちの慟哭と怒りは想像を絶する。アメリカ空軍から矢のような爆撃が浴びせられる中、もはや何のために戦うのかも麻痺し、さりとて戦いを止めることも許されず高地に散っていく。朝鮮戦争最前線の兵士たちを真摯に捉えた作品から、「なぜ終わらない!」という心の叫びが痛切にこだまする。その叫びは時を経ても未だ統一されない両国民の叫びにも重なる気がした。(江口 由美)

公式サイト⇒ http://www.kouchisen.com/

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