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『テイク・ディス・ワルツ』

 
       

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作品データ
原題 Take This Waltz
制作年・国 2011年 カナダ 
上映時間 1時間56分
監督 脚本:サラ・ポーリー
出演 ミシェル・ウィリアムズ、セス・ローゲン、ルーク・カービー、サラ・シルヴァーマン
公開日、上映劇場 2012年8月11日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、梅田ガーデンシネマ、T・ジョイ京都、8月18日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国にて順次公開


~マーゴの心の旅路~

 結婚していても、孤独を感じることはある。自分だけではままならないからこそ、重く心にのしかかる。そんな夫婦の機微を、カナダのトロントを舞台に、『死ぬまでにしたい10のこと』の主演女優サラ・ポーリーが、『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』に続きメガホンをとった『テイク・ディス・ワルツ』。今度は結婚5年目の若い夫婦を、ビタミンカラーのファッションやポップな音楽、心に沁みるような映像美で、鮮やかに写し取って魅了する。『マリリン 7日間の恋』のミシェル・ウィリアムズと、『グリーン・ホーネット』や『50/50』のセス・ローゲンがキュートで微笑ましい夫婦を演じて、新鮮だ。

take-2.jpg 結婚5年目で仲のいい夫婦マーゴとルー。フリーライターのマーゴは旅先で知り合ったダニエル(ルーク・カービー)に自分の心を見抜かれたような気がしてハッとする。さらに彼が近所の住民とわかり心乱される。一方、ルーは、チキンの料理本を執筆中で、毎日チキン料理に余念がない。子供を欲しがらないルーに対し、マーゴはルーの姉の娘に夢中。二人は、冗談で残酷な殺し方の表現をし合っては優劣を競い合ったり、「愛してる」とじゃれ合ったりしているが、どこか本気で絡めない空しさを感じていた。そして、ダニエルの存在が次第に大きくなり、マーゴの心の隙間を埋めるようになる。

 マーゴはルーの母親や姉とも仲が良く、何の問題もなさそうに見える。だが、明らかに夫との間の緊張感はなくなり、マーゴがトイレで用を足している横でルーが歯磨きをする。スタンリー・キューブリック監督の『アイズ ワイド シャット』でも、トム・クルーズの横でニコール・キッドマンが用を足すシーンがあった。まさしく冷めた夫婦関係を感じさせていた。

 マーゴが通うプールのシャワールームで、友人が「夫婦のエチケットよ」と言ってムダ毛処理をしている。「新たな恋に走ったら?」という話題に、「最初の内だけよ」と老女が男女の情熱のはかなさを口にする。結婚記念日恒例のレストランでの食事中、沈黙に耐え兼ねて喋ろうとするマーゴに、ルーは「会話をするために話すのは嫌だ」と言って、黙々と食べ続ける。かみ合わなくなった二人の関係が顕著に出ているシーンだ。それでもルーはマーゴと一緒に暮らせるだけで満足だったが、マーゴはダニエルとの時間に喜びを見出す。バグルスの「ラジオスターの悲劇」が流れる遊園地のシーンや、ルイスバーグ要塞の灯台のシーンなど、ダニエルと過ごす時の映像のなんとカラフルで鮮やかなことか!

take-3.jpg 結婚している人だったら誰でも共感できるような心情の変化を、微に細に多彩な表情で魅せるミシェル・ウィリアムズ。『ブルーバレンタイン』でも、ライアン・ゴズリング相手に、愛が冷めていく様子を熱演していた。童顔の割には、どうも破滅型のキャラが多いようだ。また彼女が身にまとうビタミンカラーの夏服にも注目!オレンジやイエローのチェックや爽やかなブルーのプリントのワンピースなど、すぐにでも欲しくなるような服ばかり。外見だけでなく、振る舞いにもあどけなさの残るマーゴにぴったり。

 本作のいい処は、少々子供っぽいマーゴを、新しい恋に走った愚かな女のお手本のように描くのではなく、どんな選択をしようが自分で選んだ道であることをしっかりと受け止めさせている点だ。家を出たマーゴが久しぶりに帰って来て再び別れるシーンで、ルーはマーゴの背中に向かって、「フルーツ用のスプーンで目ん玉をくり抜きたい」と二人にしか分からないジョークを飛ばす。実際のセス・ローゲンもこんな可愛い人なんだろうな~と、ルーに感情移入して、グッと来てしまった。サラ・ポーリーのセンスの良さが光る作品。 (河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://takethiswaltz.jp/

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