制作年・国 | 2012年 日本 |
---|---|
上映時間 | 2時間21分 |
原作 | 沖方丁『天地明察』角川書店刊 |
監督 | 滝田洋二郎 |
出演 | 岡田准一、宮崎あおい、中井貴一、松本幸四郎、市川猿之助、笹野高史、横山裕他 |
公開日、上映劇場 | 2012年9月15日(土)~丸の内ピカデリー、梅田ブルク7、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、T・ジョイ京都他全国ロードショー |
~江戸時代、天体の謎に挑んだ男の闘い~
金環日食に始まる天文イヤーの今年に、江戸時代、日本独自の暦を作った人物の映画を見れるとはまさにグッドタイミングだ。本屋大賞第一位に輝いた沖方丁の『天地明察』を第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の滝田洋二郎監督が映画化。政治の思惑が絡む中、壮大な天体を相手に改暦事業を成し遂げるトゥルーストーリーは、事柄違えど利権や政治に翻弄されている現代に通じる悩みを描き、信じるものを貫く勇気を与えてくれるだろう。
太平の世となった江戸時代、碁打ちの名家に生まれ、算術や天体にも並々ならぬ情熱をかたむける算哲(岡田准一)は、会津藩主の保科(松本幸四郎)から日本全国の北極星の高度を測る北極出地の旅に出ることを命じられる。一年半後江戸にもどった算哲は、水戸光圀(中井貴一)に現在の暦のズレを指摘し、保科より改暦事業のリーダーに任命されるが、朝廷側の宮栖川(市川染五郎)らは、利権が幕府に移ることを危惧し、算哲の幕府案を阻止する。ついに算哲は民衆の前で蝕が当たるかどうかの三暦勝負に出るのだったが・・・。
岡田准一が囲碁の名人にして、現代風に言えば数学オタク、天体オタクの算哲の真っ直ぐさを茶目っ気いっぱいに表現。最初から母親のような視線でしっかり見守っている将来の伴侶えんを演じる宮崎あおいの存在が、男社会の物語の中でキラリと光る。また、徳川幕府の前で碁を打つという身分ながら位の高い人と人脈を持ち、信頼を得てチャレンジの機会を与えられる算哲と対照的に、寡黙にひたすら算術と授時暦の研究をつづけた算術家関孝和を、市川猿之助が熱演。この2人こそ、三暦勝負に敗れ、打ちのめされた算哲を奮い立たせた大いなる支えだった。
劇中で「暦は天と人、人と人との約束」というセリフがあるが、この約束を正確で新しいものとするため、天体という壮大な神秘との闘いと暦をつかさどる権力との闘いという二重の終わりなき闘いが算哲を待ち受ける。同志の期待を胸に、幾多の困難を乗り越え、最後は命がけで自らの信じる暦を証明しようとした算哲の成長ぶりから、信念を貫く大切さが滲む。血生臭い闘いこそないものの、真剣勝負に固唾をのんで見守る歴史エンターテイメントとして見応え十分。そして久石譲の壮大な音楽が流れる中、当時の観測ぶりを再現しながら時代を超えた天体の神秘に触れる楽しみも体感してほしい。
(江口 由美)
公式サイトはコチラ
(C)2012「天地明察」製作委員会