制作年・国 | 2012年 日本 |
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上映時間 | 1時間15分 |
原作 | ジョージ秋山(講談社) |
監督 | さとうけいいち |
出演 | 声の出演:野沢雅子、北大路欣也、林原めぐみ、玄田哲章、平田広明、島田敏、山口勝平 |
公開日、上映劇場 | 2012年9月29日(土)~梅田ブルク7、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸ほかでロードショー。 |
~ジャパニメーションの異端派、ココにあり!~
応仁の乱の時代を背景にした、いわゆる時代劇アニメ。しかし、ジャパニメーションとして本作は、定番を完璧に外した作りとなっている。簡単に言うとピカレスクというか、アウトローを主人公にした映画である。しかも、少年ものだ。戦乱の時代に生まれ落ちた少年は、赤ん坊の時に母を飢餓で亡くしてしまう。その後どのように生き抜いてきたのかは描かれないが、映画は8年後へと進み、少年はとんでもない野獣になっていた。人を食い殺し、もちろん言葉は喋れない状況だ。こういうバイオレンス少年を描いたアニメは、かつてないのではないか。そんな少年を僧侶と農村の優しい女性が、親身になって別々に導いていくのだが…。
アシュラと僧侶から名付けられた少年は、女性とのコミュニケーションで、やがていろんな言葉を覚えていく。ただ、映画はそんな癒やしのシーンはあるが、少年のけだもの的残虐性をメインにして、少年が生き抜いていくスタイルが、追究された仕上がりとなっている。「こんな世の中に産みやがって」などと暴れる少年の姿には、打ちのめされてしまうだろう。あくまでネガティブなジャパニメーションである。ポジティブなスタジオジブリを始め、希望に満ちたアニメが多い中で異彩を放っている。ラストロールで歌われる「希望」という歌も、アンチ・テーゼな感じがした。秋山ジョージという漫画家が1970年に発表したマンガが原作だが、当時発禁問題まで起こしたという取り扱い注意作なのだ。当時の「ゲゲゲの鬼太郎」などの裏版的イメージだろう。それが40年の時を超えてアニメ化されるとは、今の時代にこそ刺激的な作品なのかもしれない。
さて、ユニークな色使いにも魅せられた。最近の邦画アニメは、例えば『ももへの手紙』『グスコーブドリの伝記』『おおかみこどもの雨と雪』など薄色の、目に優しい色合いをメインにしているが、本作も確かに薄色といえば薄色だ。方法論的には、水彩画をCGによって動かすという手法らしい。ただ、血の色をけばけばしい原色にしたり、夕景の赤と赤黒さの斑とか、これまでにないような配色ぶりに目が点となる。ラストの方ではモノクロ・シーンの間に、黄金色を色付けするなどのサプライズもある。とにかく、今までにないジャパニメーション作りを目指す姿勢に、驚かされた1本だった。(宮城 正樹)
公式サイト⇒ http://asura-movie.com
©ジョージ秋山/アシュラ製作委員会