原題 | La frontiere de l'aube |
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制作年・国 | 2008年 フランス |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | フィリップ・ガレル |
出演 | ルイ・ガレル、ローラ・スメット |
公開日、上映劇場 | 2012年8月18日~第七藝術劇場、9月8日~神戸アートビレッジセンター、近日~京都シネマにて公開 |
~幻想か恐怖か、ガレルの愛の“殉死”映画~
「フランス映画は色物に強い」とは今も世界の常識。男と女の話では他国の追随を許さない。ルネ・クレール、ジュリアン・デュビビエの30年代から連綿と続く伝統を引き継ぐ現代の第一人者はフィリップ・ガレル以外にない。
愛の概念があいまいになりつつある今、ガレルの“愛”はよりドラスティックになり、極北の恋愛劇に結晶したのが「愛の残像」である。そこではこの世もあの世も紙一重、こんなにも激しい愛には慄然とするばかりだ。
16歳から映画を撮ってきた伝説の映画監督フィリップ・ガレルの愛の極致。人妻で女優のキャロル(ローラ・スメット)は若く美しい写真家フランソワ(ルイ・ガレル)と運命的な恋に落ちるが、関係はあっけなく終わる。だがキャロルは激しい恋のため狂気に陥り自殺してしまう。フランソワを映す鏡の中にキャロルが姿を現し彼に語り掛ける。「今は虚しいだけでしょう。こちらへ来て」と彼を呼ぶ。その結果…。
童話集原作の「スノーホワイト」や「白雪姫と鏡の女王」同様、鏡の人格との会話はもうファンタジーかはたまたホラーの世界。日本なら怪談「牡丹灯籠」の妄執の世界だ。フランス映画にはジャン・コクトー「オルフェの遺言」という詩人の映画があり、生と死を行き来する物語は人間の深遠さを感じさせた。
「愛の残像」はもはや幻想的なるものを超え、鏡の中のキャロルの顔がどんどん怖くなっていくあたりはダリオ・アルジェントのゴシックホラーと紙一重の恐怖感覚ではないか。
伝統のフランス色物の真骨頂と言うべきガレル映画。死ぬほどの愛や恋には縁遠い“お茶漬け日本人”にはまぶしいような“殉死映画”であった。 (安永 五郎)
公式サイト⇒ http://bitters.co.jp/garrel-ai/
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