原題 | Les Femmes du 6eme etage |
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制作年・国 | 2010年 フランス |
上映時間 | 1時間46分 |
監督 | フィリップ・ル・ゲイ |
出演 | ファブリス・ルキーニ,サンドリーヌ・キベルラン,ナタリア・ヴェルベケ,カルメン・マウラ,ロラ・ドゥエニャス,ベルタ・オヘア,ヌリア・ソレ |
公開日、上映劇場 | 2012年7月21日(土)~Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開 7月28日(土)~テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、8月25日(土)~京都シネマ にて公開 |
~別の世界への扉はすぐ近くにあるけれど~
1962年のパリを舞台とする生命力にあふれたコメディだ。当時フランコ独裁政権下から大勢のスペイン人がフランスに入ってきたという。その中にマリアや叔母コンセプシオンらも含まれていた。彼女らの住まいはジャン=ルイとシュザンヌの夫婦が住むアパルトマン6階の屋根裏部屋だった。家政婦として働く彼女らの,苦境にあるからこそ生まれてくる陽気なパワーに圧倒される。マリアの初仕事を助けるために一致団結する様子は爽快だ。
ジャン=ルイは,ブルジョワジーの憂うつを体現したような人物だ。祖父が創業した証券会社を受け継ぎ,妻と何不自由なく暮らしており,息子2人も寄宿学校に入っている。家政婦の作るゆで卵が正しい固さでないといけないというこだわりがあり,完璧なゆで卵を作るマリアに魅惑される。やがてスペイン女性らと交流を持つようになり,そのエネルギーに触発されて笑顔を取り戻していく。ファブリス・ルキーニの嬉々とした表情がいい。
時代を過去とすることで,ノスタルジックな感覚が漂い,現代を舞台とすると非現実感が勝ってしまうファンタジーをリアルなものとする効果が生まれた。ジャン=ルイは,妻の誤解で資産家の未亡人ベッティーナとの不貞を疑われ,6階の一室に移り住むことになる。彼は,やっと自由を得た喜びに包まれ,息子らが家に戻るよう頼んでも,「ここが居場所だ」と言って戻らない。全く新しい世界に踏み出した以上,もはや後戻りはできない。
マリアは,未婚の母で8歳になる息子ミゲルを養子に出していた。「また過ちを繰り返すの?」という叔母の言葉が一波乱を予感させる。ジャン=ルイは,全てをリセットしてマリアと一緒に暮らす決意をする。一方,マリアは,彼を残して一人で旅立つ。もちろん映画はそこで終わりはしない。まるで後日談のように,3年後のジャン=ルイの行動を映し出す。往年の名画のようなラストシーンがさも当然のように現実感を持って迫ってくる。 (河田充規)
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