原題 | Virginia |
---|---|
制作年・国 | 2011年 アメリカ |
上映時間 | 1時間29分 |
監督 | フランシス・フォード・コッポラ |
出演 | ヴァル・キルマー、ブルース・ダーン、エル・ファニング、ベン・チャップリン、ジョアンヌ・ウォーリー、トム・ウェイツ |
公開日、上映劇場 | 2012年8月11日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、9月4日~京都シネマ、近日~神戸元町映画館 ほかにて全国順次ロードショー。 |
~幻想と現実を交錯させる、新鮮味あるホラー~
フランシス・フォード・コッポラ監督の新作は、ホラー・ミステリーとなった。かつて作ったストレートなリメイクとも言える『ドラキュラ』(1992年製作)とは違い、構成に仕掛けを施したオリジナル作品である。ヴァル・キルマー扮するオカルト作家が、とある街を訪れ、かつて街で発生した少女集団殺人事件の謎を探り、それをヒントに新作を作ろうとする。
作家が主人公となるホラー映画というのは、実はスティーヴン・キング原作作品に多い。例えば、伝説的名作ホラー『シャイニング』(1980年)や、ジョニー・デップが作家役で主演した『シークレット・ウインドウ』(2004年)などがあるが、コッポラは本作では相当キングを意識しているようだった。それらしきセリフ「(主人公が書く作品は)スティーヴン・キングに及ばない」なども出てくる。作家の小説作りのメイキングを見せるような外装を装いながら、夢と現実を交錯させるという手法は、まさにキングのタッチである。
作りについてだが、夢シーンではモノクロあるいは脱色を使い、炎や顔の一部を色付けしている。黒澤明がモノクロ映画『天国と地獄』(1963年)で、煙をピンクにしたシーンを嚆矢とする、これらのシーンの頻出はやり過ぎの感もあるが、観客への幻惑効果が大きいことは大きい。また、戦前のハリウッド産のモノクロ吸血鬼怪奇映画の雰囲気も、それとなく仕込まれている。
この夢シーンには、重要な人物が2人登場する。『エクソシスト』(1973年)以降次々に作り出された少女ホラーとしての、少女吸血鬼役がまずその1人。コッポラの娘ソフィア・コッポラ監督が『SOMEWEARE』(2010年)で起用した、ダコタ・ファニングの妹エル・ファニングが少女役だ。今1人はベン・チャップリンが演じる、実在の作家で既に故人のエドガー・アラン・ポー役だろう。1955年に起こったらしい殺人事件を、主人公と共に推理していくだけでなく、小説作りのヒントまで主人公に伝授するのだ。その流れの中で、現実部が父娘との関係性と事件の中で繰り広げられる展開は、なかなかのものでありサプライズ効果も高い。コッポラの過去の名作と比較すると、決して傑作とは呼べないかもしれないが、ホラー映画の新味へと切り込む姿勢は評価できる。(宮城 正樹)
公式サイト⇒http://Virginia-movie.jp
(C)Zoetrope Corp. 2011