© UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010
原題 | We Need To Talk About Kevin |
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制作年・国 | 2011年 イギリス |
上映時間 | 1時間52分 |
監督 | リン・ラムジー |
出演 | ティルダ・スウィントン,ジョン・C・ライリー,エズラ・ミラー |
公開日、上映劇場 | 2012年6月30日(土)~TOHOシネマズ シャンテ、7月7日(土)~梅田ガーデンシネマ他全国順次公開 |
~果てのない消耗戦のような母と子の関係~
エヴァは,伝説の冒険家と形容され輝かしい経歴を持っている。だが,人々の冷たい視線を浴び,いきなり顔面を殴打され罵られても抵抗しない。断片的に挿入される映像は何か悲惨な事件があったことを示している。エヴァの家と車が赤いペンキで汚される。その色が血のイメージをまとい,ペンキを剥がしていくエヴァの姿が痛々しい。妊娠し出産する過去のエヴァと刑務所へ面会に赴く現在のエヴァは,一体どのように繋がっていくのか。
エヴァは息子ケヴィンが来るまで幸せだったと言う。彼が父フランクリンとTVゲームをする姿が悪魔の父子のように見える。それはエヴァの心が見た2人の姿であり,彼女にはケヴィンの反抗的な態度が憎々しげに見えて仕方ない。これは成行で母と子として生活することになった2人の物語だ。エヴァの内部にケヴィンが存在し,彼女自身を反転させた分身がケヴィンである。互いに相反する本音を隠しながら相手の様子を観察している。
監督は,エヴァの現在と過去を並行して描きながら,ケヴィンがあと3日で16歳になるという事件の日に収れんさせていく。その日の朝,何の変哲もない日常の風景は,クリスタルのような繊細な輝きを放っていた。白いカーテンが風に揺れるシーンが冒頭にある。それが終盤で繰り返されるとき,怖さが頂点に達し,庭の噴水が寂寥感を湛えていた。あの日常が決して戻ってくることはないと,静かに,有無を言わせない強烈さで迫ってくる。
ケヴィンは,エヴァが独身時代への思いを込めた部屋を台無しにする一方,表面的とはいえ融和するような仕草を見せる。だが,高校生になったケヴィンの瞳には,的に突き刺さった矢が写っていた。ライチを口に含むシーンは,眼を噛んでいるような不気味さを漂わせる。彼にとって事件は一世一代の晴れ舞台だった。しかし,似た者同士の2人が相容れることはない。事件の日から2年目に息子をハグするエヴァは,厳しい表情をしている。(河田 充規)
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