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『ダークナイト ライジング』

 
       

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作品データ
原題 The Dark Knight Rises
制作年・国 2012年 アメリカ
上映時間 2時間45分
監督 クリストファー・ノーラン
出演 クリスチャン・ベイル、アン・ハサウェイ、トム・ハーディ、マリオン・コティアール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、ジョセフ・ゴードン=レビット
公開日、上映劇場 2012年7月28日(土)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ 他全国ロードショー ★7月27日(金)先行上映決定!★

© 2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC


~周囲みんな敵、暗闇の騎士の役割は?~

  ハリウッド・メジャーのSFX大作でアメコミ原作なのに、こんなに奥が深くて重厚なA級作品はそれこそ「ダークナイト」以来だ。奥深く重厚な作品はアメリカ映画史上、燦然と輝いている。古くは“米映画の父”D・W・グリフィス『イントレランス』に始まり、60年代ハリウッド黄金時代の金字塔、デビッド・リーン『アラビアのロレンス』、キューブリック『2001年宇宙の旅』……。これら米映画界の巨匠、名匠の代表作を凌駕するほどの興奮と感動をもたらしたのは時代を映す天才クリストファー・ノーラン監督だ。
 

darknight-3.jpg 題材はアメコミ・ヒーローのバットマン。ノーラン監督はブロックバスターとして人気集めていたこのシリーズに'05年『バットマン・ビギンズ』から登場、クリスチャン・ベール演じるバットマンは子供のヒーローなのに、善と悪を兼ねた複雑なキャラクターに大胆にリニューアルされて関係者もファンも驚かされた。続く『ダークナイト』('08年)がバットマンのキャラを超えた複雑な物語で全世界で10億ドルというメガヒットを記録したことは記憶に新しい。傑出した代表作は1本あれば十分なのだが、そこは天才監督、バットマンの壮絶な最期を描いて見せたのが3部作最終章『ダークナイト・ライジング』である。
 

 前作「ダークナイト」で表社会の正義のヒーロー、地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)が死に、ダークナイト(夜の騎士=バットマン)も責任を負って、大義のためにゴードン市警本部長(ゲイリー・オールドマン)とともに姿を消してから8年。ゴッサムシティにしばしの平穏が訪れるが、偽りの平和はしなやかでセクシーな泥棒ネコ、キャットウーマン(アン・ハサウェイ)の出現で破られる。だが、ゴッサムにとって真の脅威は覆面をした異形のテロリスト、ベイン(トム・ハーデイ)だった……。


darknight-2.jpg ダークナイト規格外の人気は、アメコミの看板である“勧善懲悪”を脱したことにある。アメコミ界のエース、スーパーマンが絶対の正義なのに対して、対抗馬と言えるバットマンはこうもり男の名前通り、悪か正義か、その時々によって変わる微妙なヒーローだった。スーパーマンの絶対的正義が通用しなくなった今の時代、ヒーローもまた複雑な社会を反映せざるを得ない。2001年9月11日の「9・11事件」後、周囲みんなが敵に見える時代の要求にジャストフィットしたのが“ダークナイト”ではないか。


 冒頭、飛行機で運ばれるベイン奪還のド派手な飛行機宙吊り奪取計画。あ然とするしかない大仕掛けから画面に魅入られてしまう。野放しになったベインの悪業の数々。頼りのバットマンは“引退”したまま。ブルース・ウェイン(バットマンの素顔)も大企業のCEOの地位を投げ捨て後任に任せる。だが、ベインは核爆弾を製造出来る装置を利用して、警察を脅迫、警官隊をおびき出し、トンネルに閉じ込めてしまう。街がピンチに陥った時、ようやくバットマン(クリスチャン・ベール)登場。ベインが散々悪らつさを見せつけた後、画面にさりげなく現れるバットマン。やはり正義を託せるのはこの男しかいない、という期待感であふれる。なんと頼もしい。


 darknight-4.jpg プロレスよろしく、最初にベインとガチンコ対決する場面では、バットマンは負けて血にまみれ、傷だらけになる。どん底まで追いつめられ、再起不能か、と思わせるバットマン……。さながら任侠映画の鶴田浩二・高倉健、はたまた外国人レスラーに散々痛めつけられる力道山(ちょっと古いけど)といったところ。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、街の真ん中で核爆発の消滅の危機を迎えた時、ようやく“絶対の正義”を取り戻したバットマンが甦る。


  信じていた身内に裏切られたり、宿敵だった女を信じて共闘を組んだり……。まったく敵味方が定かでない情勢にも、なお前を向いて立ちあがる。その姿は正義を守る戦いには必ず後が続く、というクリストファー・ノーランのメッセージのように思えた。(安永五郎)

  

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