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『ジョルダーニ家の人々』

 
       

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作品データ
原題 Le cose che restano
制作年・国 2010年 イタリア
上映時間 6時間39分(第1部:1時間40分,第2部:1時間40分,第3部:1時間42分,第4部:1時間37分)
監督 ジャンルカ・マリア・ダヴァレッリ
出演 クラウディオ・サンタマリア,パオラ・コルテッレージ,ロレンツォ・バルドゥッチ,エンニオ・ファンタスティキーニ,ダニエラ・ジョルダーノ,ファリダ・ラウアッジ,レイラ・ベクチ,ティエリー・ヌーヴィック,フランチェスカ・シャンナ
公開日、上映劇場 2012年7月21日(土)~岩波ホールにて公開、他全国順次公開 7月28日(土)~梅田ガーデンシネマ【前売り料金(第1部+第2部=1500円、第3部+第4部=1500円)】、8月4日(土)~京都シネマ【前売り料金(第1部~第4部=3000円)】

~人々は何を心の拠り所に生きていくのか~

 

Giordani-2.jpg ジョルダーニ家の二男ニーノを軸として多様な人生模様が描かれていく。長男アンドレアは仕事で各地を転々とし,心理学者の長女ノラには夫アルベルトがいる。ところが,高校生の三男ロレンツォの生命の火が突然消え去り,家族は悲しみの淵に沈む。母アニータは生きる気力を失って郊外の療養所に入り,父ピエトロは混乱の中で自分の弱さを隠すようにイラクに赴任する。家族を包んでいた家は空になるが,そこにシャーバがやって来た。
 

 彼女はイラクから娘アリナを探しにイタリアに密航して来た。アリナは,もう昔の自分ではないと言って母親と会うのを拒むが,同居していたイェレナのお陰で昔の自分を取り戻す決意を固める。彼女は,武器や麻薬の密売の捜査に協力して命を失うが,故郷のモンテネグロに戻って身内や友人らに暖かく迎えられる。この人々の繋がりと優しさを謳うシーンで第2部はクライマックスを迎える。人間同士の紐帯は家族や民族の枠に収まらない。
 

Giordani-4.jpg アンドレアと同棲を始めるミシェルは,ノラの患者で重い秘密を抱えていた。彼と麻薬中毒者ジェニファーとの間の幼い娘リラは,ロレンツォの部屋が気に入って自分好みに模様替えをし,ピエトロに「あなた誰?」と声を掛ける。微笑ましいと同時に,家族の移ろいにハッとさせられる。ノラは,夫との間に距離を感じる中で,アフガニスタンに従軍して記憶をなくしたブラージ大尉とその婚約者コリンナの関係を通して自分を見直していく。
 

 様々な輝きを放つ人たちの,心の向きと強さが丁寧に織り込まれたタペストリーを思わせる作品だ。ニーノの視線とその先のフランチェスカの首筋や唇など,情感あふれる詩のような映像が盛り込まれ,後に残る。ニーノは,大学の建築学科を卒業するが,工事現場の作業員として働き,卒論指導教授の妻フランチェスカに惹かれていく。決して青二才に見えてしまうことなく,モラトリアムに恵まれ人生を模索する姿に爽やかさが感じられる。
 

 彼をじっと見ている幼馴染みのヴァレンティーナは,現実的な質感を伴って明るい風を運んでくる。第4部では家族の問題がひとまず収束に向かう。ニーノだけが知っていた父の愛人シルヴィアが再び登場する。時間は容赦なく流れ,ロレンツォの車とはお別れだ。人々の出会いや別れが繰り返される中,家は活気を取り戻す。ここは家ではなく港だという台詞が心に残る。海を沖に向かって泳ぐ幼馴染みの2人。海面に反射する光がまばゆい。  (河田 充規)

           

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