(C) Televisio de Catalunya, S.A c Massa d'Or Production Cinematografiques I Audiovisuals, S.A
原題 | Pa negre |
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制作年・国 | 2010年 スペイン=フランス |
上映時間 | 1時間53分 |
監督 | アグスティー・ビジャロンガ |
出演 | フランセスク・クルメ,ノラ・ナバス,ルジェ・カザマジョ,マリナ・コマス,セルジ・ロペス |
公開日、上映劇場 | 2012年6月23日(土)~銀座テアトルシネマ、ヒューマントラストシネマ渋谷、6 月30日(土)~テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマ 他全国順次公開 |
~少年の選択,彼は飛んだのか堕ちたのか~
監督によると,1940年代のカタルーニャ州を舞台とする作品だが,劇中では明確に示されていない。スペインでは,1939年に内戦が終結し,フランコ独裁政権が人民戦線派の残党に激しい弾圧を加えていた。具体的に「アカは粛清される」という台詞が出てくる。アンドレウの父ファリオルは,左翼の運動に加わっており,殺人事件の被疑者として身柄を拘束される。だが,犯人捜しではなく,逼塞した状況下での人間像に主眼が置かれている。
ディオニスと息子クレットが森で襲われ殺害される。アンドレウが「ピトルリウア」というクレットの最期の言葉を聞く。それは洞穴にいる怪物の名前だった。光の差し込まない心の暗闇に巣食う怪物なのかも知れない。肺病の青年は,自分が望めば別世界に飛んで行けると言う。ファリオルは,鳥は自由に空を飛ぶために生まれたと言う。何を理想とし何を愛するかの自由を奪われた人々の心は荒んでしまう。それが少年の生きる世界だった。
一貫して少年アンドレウの視点で描かれるため,彼が最後に苦渋の選択を迫られたときは身につまされる。彼は,黒パンしか口にできない貧しい階層で育ち,祖母の家に引き取られるが,よそよそしい空気に包まれる。従妹ヌリアだけが拠り所となる。彼女は,手榴弾で左手首を失い,亡父を慕って裸でベランダに立ち,教師と性的に関わっていた。その超越した体験が,アンドレウに現実を直視させて,究極の選択をする力を獲得させたのだ。
アンドレウは,ディオニスの妻から彼が知らなかった父親の過去を聞かされる。その動揺の激しさと呼応するように,ストーリーも大きな振幅を見せ始める。1941年に23歳の若さで死んだマルセルは自然に背く汚れた罪を犯したという。これが全ての出発点だったことが明かされていく。資産家マヌベンス夫人は,ファリオルから沈黙を守る代わりに息子を頼むと言われ,アンドレウを養子にしようと申し出る。さて,アンドレウはどうするか。 (河田 充規)
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