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『ラム・ダイアリー』

 
       

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(C) 2010 GK Films, LLC. All Rights Reserved.

       
作品データ
原題 THE RUM DIARY
制作年・国 2011年 アメリカ
上映時間 2時間
監督 ブルース・ロビンソン
出演 ジョニー・デップ、アーロン・エッカート、アンバー・ハート、リチャード・ジェンキンス
公開日、上映劇場 2012年6月30日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー

~ジョニー・デップ渾身作!酒まみれのジャーナリスト騒動記~

 やっと観れたか!ジョニー・デップファンとしてはまさしくそんな心境だ。テリー・ギリアム監督作でハンター・S・トンプソン原作の『ラスベガスをやっつけろ』(1998)では、役を掴むためにしばらくトンプソンの自宅で共同生活をしたというジョニー。それからほどなく本作の企画が持ち上がったものの、実際に映画が完成するまで10年近くかかっているだろう。自らが企画、制作、主演を務め、故人となった盟友のトンプソンに敬意を捧げながら完成させた本作は、ジョニーにとって間違いなく特別な思い入れのある作品だ。そして、何よりも当の本人がハチャメチャに楽しんでいるのだから、一見の価値はある。

 rum-1.jpg舞台は1960年、プエルトリコ。ゴンゾージャーナリストとして後世に名を残したトンプソンが、まだジャーナリストとして独り立ちするまでのラム酒にまみれた苦悩の時代(生涯ラム酒漬けだったかもしれないが・・・)にスポットを当て、監督のブルース・ロビンソンが脚本も担当。ニューヨークから地元紙で執筆するためプエルトリコにやってきたジャーナリスト、ポール・ケンプ(ジョニー・デップ)が、安っぽいイベントネタしか掲載しない地元紙のすさんだ実態や、メディアの力を利用して土地開発を既成事実にしようとするアメリカ人企業家のアンダーソン(アーロン・エッカート)に利用されそうになりながら、自身にとってのジャーナリズムを見い出していく。

 『VORALE』からはじまり、南米特有の乾いた空気感と渋いチョイスの音楽がジャンキーな雰囲気のこの作品にピタリとはまる。新聞社の同僚たちとの貧乏&ラム酒まみれの生活や、絵にかいたような恋物語、真っ赤なシボレーオープンカーでの疾走やポンコツミニカーの迷走ぶりなど、アナログ感いっぱいのカーアクションも味がある。演じていることを感じさせないぐらいケンプ=トンプソンと同化していたジョニーのいつになくナチュラルな演技がいい。

rum-2.jpg  ジャーナリストを名乗りながら、何も書いていないとツッコミを入れようと思ったら、ようやく最後にタイプライターを打ち始めるケンプ。自らの言葉で伝えるべき現状を書くことに迷いがなくなったとき、ようやくジャーナリストとしての大きな壁を乗り越えた自信に目が輝いていた。

 闘牛ならぬ闘鶏や、カーニバル、雑然とした街並みなど、当時のファッション、政治状況、ジャーナリストの姿を織り交ぜ、ゆるく見えて案外掘り下げがいがある、でもちょっとヘンテコリンな愛すべき作品。こういう映画は、こちらもラム酒を傾けながら見たいものだな。(江口 由美)

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