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★ 第18回大阪ヨーロッパ映画祭(2011)インタビュー

 『アマドールからの贈りもの』”Amador”

(2010年 スペイン 1時間50分)
監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア 
出演:マガリ・ソリエル、ソニア・アルマルチャ、セルソ・ブッハロ
★作品紹介⇒ こちら

第18回大阪ヨーロッパ映画祭『アマドールからの贈りもの』フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督Q&A

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【上映後のQ&A】

━━━主人公が本国の人物ではなく、南米からの移民マルセラを主人公にした理由は?
この映画が10年前や15年前のものであれば、スペイン人女性をマルセラ役にしていたと思いますが、現在はご高齢の方を介護している約95%の人が移民という現実があります。
私にとって今回一番重要視したのは、主人公がどこの国籍かということではなく、観客がマルセラに感情移入してストーリーを感じてもらうことを考えたので国籍をそれほど重要とは感じていません。

━━━映画で伝えたかったことは?
今回の映画のテーマで「生き延びる」ということも伝えたいと思います。スペインに移住してくる人たちは困難に見舞われる環境が多いからです。また、アマドールがこれから生まれてくるマルセラの子どもに居場所を譲ると言っていますが、昔からスペインにすんでいる古い時代の人間、アマドールがこれから外の国からやってくる新しい命につないでいくということも表したいと思っていました。

━━━最後に故郷の詩が紹介されましたが、監督の考えは?
英語の最後に登場するマルセラの国の言葉ですが、これは実際アラブの詩人、カリブ・リザルファのものです。映画を締めくくる言葉として今までご覧いただいた内容をうまく言い表したフレーズで、特に「死が次の生に役立てられる」という意味で使っています。

━━━主人公のマルセラ役にマガリさんを抜擢した理由は?
『悲しみのミルク』を観てとても感銘を受けたので、彼女と仕事をすることにしました。今回初めて一緒に仕事をしましたが、私も彼女が大好きです。マガリさんはペルー出身で、アルプスの山沿いの非常に貧しい地域の出身です。表現がとても繊細ながらも、伝える力があり、非情に表現力があるところが気に入っています。スペインの俳優はなかなか彼女のように繊細な演技をするのが難しく、身振り手振りを大きくしたり、泣いたり騒いだりすることが多くなりがちです。実際に、撮影で非常に具体的で小さなことまで演技面で要求したこともありましたが、私の要求に対してしっかり応えてくれたすばらしい女優です。マガリさんは演技の教育を受けたことがないのですが、そういう意味では生まれ持った才能で演技をしてくださる方だと思います。

━━━インディペンデント映画を作っている人たちへアドバイスをお願いします。
一番重要だと思うのが、自分に対して常に目標を高く、要求を強く思うこと。努力を続ければ何でも可能です。撮りたい映画の種類にもよりますが、私は脚本を書くときに登場人物のキャラクターをとても重要視しています。そこの関係を強くすることでよい作品ができると思っています。もう一つ重要なのはプロモーションです。今回のように映画祭でみなさんの反応を直接観るのも重要だと思っています。

                       ★作品紹介⇒ こちら      (江口 由美)ページトップへ

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【フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督単独インタビュー】
第18回大阪ヨーロッパ映画祭『アマドールからの贈りもの』フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督単独インタビュー

オリジナリティー溢れる脚本と魅力的な人物描写、そして生きること、死者との向き合い方についての問いを投げかけられているかのような、味わい深い作品を作り出したフェルナンド・レオン・デ・アラノア監督。作品で監督が意図したことや作品の背景について、お話を伺った。

━━━「生と死」というテーマを扱おうとしたきっかけは?
「生き残る」ということをテーマにしたかったのです。色々な人が人生で壁にぶち当たるように、この映画では主人公のマルセラが子供を身ごもるという壁にぶち当たり、それをどう乗り越えていくかというアイデアを題材にしました。
また、「生と死」というテーマを狭いスペースで表現したかったので、今回はアマドールの部屋という狭い空間の中で「生と死」を表しました。第三のテーマは「愛」です。「愛」は「生と死」両方に共通するもので、小さい空間にその3つのテーマを表しました。

━━━介護をするマルセラも南米からの移住民ですが、スペイン人にとって移民はどう受け止められているのですか?
スペイン国内では移民はかなり昔からの習慣となっているので、慣れているのですが、主人公マルセラを演じたマガリナはかなり驚いていました。彼女の母国ペルーでは、家族の介護は家族の中でやるのが普通だそうです。

━━━冒頭で移民の花泥棒と、移民のガードマンが対決するシーンがありましたが、このシーンで意図したことは?
最初のシーンは私が自分で何度も観たことがある情景です。使ってしまった花を捨てているところに、その花を盗んでまた売ろうとしている人がいるのです。警備の人たちが捕まえるのを見てインスピレーションを得ました。花を盗むのは数ある仕事の中で最も卑しいことの一つであり、それを阻止するのも同じ国の人というパラドックスが興味深かったです。また、花は消費するものですが、ゴミ同然のものも拾ってお金にする現実を表現しました。実際に花を盗んで逃げる側と、捕まえる側にそこまで差はないと思っています。それは単なる役でしかないと。

━━━主人公のマルセラ、アマドールに週一回通った老女の娼婦、アマドールの娘と皆非常にタフで魅力的な人物ですが、どうやってキャラクターを作り上げていったのですか?
三人ともすごくたくましい女性に仕上げたのですが、アマドールを通じて利益を得ている点も共通しているところにポイントを置いています。主人公のマルセラはペルー人でアマドールの娘ヨランダはスペイン人です。社会的地位は全く違うのですが、最終的にたどり着いているもの(お金)は全く一緒です。娼婦役のプディーさんは、娼婦たちの話を描いた前作『Princessa』からインスピレーションを得ました。娼婦たちの生活力、個人のたくましさをプディーに反映させたのです。

━━━冒頭で登場する大地にさく一輪の花をはじめ、様々な花が作品中に登場しますが、花を使って表したかったことは?
一番最初のシーンの一輪の花は、何もない大地にただ一輪美しく咲いている花で、花を盗もうと走っていく人たちの誰にも踏まれることなく、たくましく生き残っています。主人公のマルセラの強さやたくましさ、美しさを表現しました。
仲間のペルー人たちが一度切って死んでしまった花を冷蔵庫に入れたり、薬をつけたりして花を少しでも長く生き続けさせている様子は、マルセラがアマドール亡き後も生きているように介護する姿と重ねています。

━━━脚本や演出におけるポリシーは?
監督として仕事をする前は、何年も脚本家として仕事をしていたので、その辺がベースになっています。その結果、脚本自体に自分が堅く納得したものであることが第一で、その後に登場人物が自分が心から共感できる、自分自身が気持ちよく感じることができることが自分のポリシーです。

━━━監督が、マルセラやアマドールに共感しているところはどこですか?
マルセラは、生きる強い力、それから困難な場面にきちんと正しい判断ができる決断力がある女性です。そういう状況であっても人としてエレガンスで、周りで嫌なことがあっても決してうろたえることなく、凛としてドシリと構えているところが主人公としてとても好きです。アマドールは、主人公マルセラの恩人であり、教師の役割を果たしています。同時に、スペインの年輩の方によく見られるような少しとっつきにくいところがあるけれど、一度仲良くなるととても温かいキャラクターに共感しています。

━━━死者を生きていると見せかけ介護費用や年金を得ているマルセラやヨランダの行為は、スペインで本作をご覧になった観客にどう受け止められているのですか?
私はそういう本作の道徳的な部分こそ、観客に議論してもらいたいと思っています。自分自身、観客に疑問を投げかけるような作品が好きなのです。

 Q&A、インタビューを通じて、フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督が映画における脚本の重要性やキャラクターの表現方法などに独自のポリシーをもって映画作りに臨んでいることが伺えた。さまざまなモチーフを散りばめながら、人間の普遍的な営みを表現する作品は、詞を読み解くかのような楽しみすら感じられる。今後、フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督の作品が日本でも広く紹介されることを強く望みたい。
                      ★作品紹介⇒ こちら      (江口 由美)ページトップへ


   
             
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