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エッセイ
   『手紙』

   〜 嘘の手紙がもたらしたもの〜

  監督:生野慈朗 (2006 日本 2時間1分)
  原作:東野圭吾
  出演:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵

  「手紙って、めちゃ大事やねん。命みたいに、大事な時あんねんで」。由美子(沢尻エリカ)の言葉で、私の涙は止まらなくなった。

  弟・直貴(山田孝之)の学費欲しさに強盗を働き、無期懲役で服役中の兄・剛志(玉山鉄二)。たった2人の家族を繋ぐのは、手紙だけ。けれど、兄の犯した罪の重さは何もかもを奪い、刑務所からの手紙は苦痛でしかなくなる。やがて、返事を書くのを辞めてしまう直貴。代わりに、秘かに手紙を書き続けたのは友人の由美子だった。

  直貴が書いたと偽る、彼女の葛藤はどれほどだっただろう。しかし、兄弟の絆を守るために必死だったに違いない。この嘘の手紙の存在が明らかになった時、直貴は由美子が乗り越えてきた辛い過去、彼女の直貴を想う深い気持ちを初めて知る。そして、直貴にとって由美子はかけがえのない存在に。

  「嘘」って、とてもその人の人間性が出るものではないだろうか? どんな時に、どんな嘘をつくのか。由美子の嘘には、彼女の「らしさ」が一杯詰まっていて、直貴と共に私は、守るべきものを持つ人の「優しさ」と「強さ」で、あったかい涙を久しぶりに流した。私利私欲のない純粋な嘘がもたらしてくれたものは、とても大きかった。

                                             (原田 灯子)


さよならゲーム

『さよならゲーム』

価格: 1480円(税込)
発売元: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
販売元: 株式会社ソニーピクチャーズエンタテインメント

(c)1988 ORION PICTURES.ALL RIGHTS RESERVED.

『さよならゲーム』

1988年,アメリカ,1時間47分
監督:ロン・シェルダン
出演:ケヴィン・コスナー/スーザン・サランドン/ティム・ロビンス

 「9回裏ツーアウトから逆転ホームランを打つのが子供の頃の夢だった」とケヴィン・コスナーは語った。彼ほど野球映画の似合う役者はいない。「フィールド・オブ・ドリームス」のラストで自分より若い父親の幽霊とキャッチボールをするシーンは,何度観ても涙がこみ上げてくる。

  そして,この「さよならゲーム」という作品が今でも心に残っている。マイナーリーグを舞台にした映画で,ケヴィンはベテランのキャッチャーを演じていた。ティム・ロビンス扮する若い才能のあるピッチャーをメジャーリーガーに育て上げて引退する。彼自身も名選手なのだがメジャーでは成功しなかった。ラストで恋人の所へ行って,「辞めてきた」と言う場面は哀愁があって本当に素晴らしかった。

  私自身アメリカ南部を旅したときに偶然観たマイナーリーグの試合が忘れられない。ゲームが終了すると子供達がウラウンドに降りてきてベースを1周する。男の子も女の子も一生懸命走っていた。小さな子供にはお父さんが肩車をして走る。ホームベースではチアガールが出迎えてハイタッチしていた。青い空、緑の芝生、ホットドックにビール。永遠にこの場所から離れたくない気分だった。         
                   (藤崎 栄伸)




『 ラフ 』
スタンダード・エディション


  DVD発売中
  ¥3,990(税込)
  発売元:小学館
  販売元:東宝

『ラフ』

監督:大谷健太郎 (2006年 日本 1時間46分)
出演:長澤まさみ、速水もこみち、阿部力

 どうしても忘れられない苦い思い出がある。流れる時の中で何度も抱きしめ、その痛みを懐かしさへと変えてきた。
練習・公式試合、通算0勝大敗。中学時代のバレーボール部の成績だ。試合だけではなく、友情も恋も「1勝」が超えられなかった。ボロボロに傷つきながら、自分と他人との間でもがき、1人1人が異なる人間なのだとようやく理解できた時、世界が広がった。決して無駄にはできない、かけがえのない過去。

  努力しても、手に入らなかった部活の風景を目の当たりにして眩しかった、「ラフ」。コミックでお馴染み、あだち充作品の映画化。高校の水泳部を舞台に、恋に友情に自分探しといった「青春」には欠かせないものがギッシリ詰まっている。主役2人の水着姿は勿論、物語自体がキラキラと輝いていた。

  「ありがとう」や「ごめん」、「好き」、たった一言の台詞がズシリと重いのだ。溢れ出る気持ちがうまく言葉にならなくて、もどかしくて仕方がない。でもだからこそ、その意味が最大限に活きて、本来の言葉の力が直球勝負で向かってくる。
 
〜ラフ、未完成こそが私達の武器〜このフレーズを、中学生の私に贈ってやろうと思う。人生の勝負は始まったばかりなのだ。       
                        (原田 灯子)




 『 タッチ 』 
スタンダード・エディション


  DVD発売中
  ¥3,990(税込)
  発売元:小学館
  販売元:東宝

『タッチ』
〜戦う者の裏側にある人々の想い〜

監督:犬童一心 (2005年 日本 116分)
出演:長澤まさみ、斉藤祥太、斉藤慶太、風吹ジュン、小日向文世、宅麻伸

 ぎらぎらと照りつける太陽の中、汗とドロにまみれて戦った、高校球児の熱い夏が終わった…。そして爽やかな秋風が、甲子園の熱い戦いと思い出をさらっていく。

  私が以前勤めていたホテルは、球児たちの常宿であった。毎年、甲子園の土を踏むことのできる、幸運な少年たちがやってくる。いが栗頭の彼らは「ただいま〜」と元気に帰ってくる。フロントはたちまち汗臭さでいっぱい。溢れんばかりの若さに、いつもパワーをもらっていた。私たちの務めは、彼らが自分の力を出し切るプレーができる環境作り。食事に一番注意を払い、慣れないホテル生活をサポートする。そうやって世話するうちに、母や姉のようなに気分になっている。堂々とプレーする姿に感動し、手に汗をにぎり応援する。そして一緒に笑って、一緒に泣く。

  「タッチ」の浅倉南も、家族のような想いで応援したのだろう。上杉達也が兄の和也やたくさんの人の想いに答え、挑戦する姿に胸が熱くなる。原作あだち充の「タッチ」が何十年も支持されているのは、そんな純粋な人々の想いが常にそこにあるからに違いない。

  彼らの夢のお手伝いができたこと、熱い思いにさせてくれたこと。一言「ありがとう」と伝えたい…。   
                           (田中 陽子)


『チアーズ』
いつまでも「Bring it on!(かかってこい!)」でいこう!

 今年もこの季節がやってきた。大阪における秋の恒例行事「御堂筋パレード」。大阪市役所前から難波まで約3.3キロがお祭ムード一色になり、沿道を埋め尽くす人々とパフォーマー達は不思議な一体感を共有する。

  中学生の頃、私が所属するチアガール部に御堂筋パレードの参加話が舞い込んだ。日頃はスポーツ試合を「声援(チア)」する影の存在である私達の初「晴れ舞台」。しかし出場できるのは10人以上いる同級生の中で4人。初めはユニフォームがかわいいという理由で入ったチア。でもいつのまにか私の一部となっていたチア……出たい。どうしても出たい。私は生まれて初めて「本気」になった。

  「チアーズ」。この映画を観るとその頃の自分を思い出す。全国大会で優勝を続けているチアリーディングチーム「トロス」。新キャプテンとなったトーランスは、過去の振り付けが盗作だった事を知り、振り付け変更を余儀なくされる。大会までは3週間。彼女は日頃の2倍練習すれば間に合う、といい見事全国大会に出場する。

  私は最終4人に残り、御堂筋パレードに出場した。人々からの注目と歓声よりも努力が実ったことが何よりも嬉しかった。映画の台詞の様に「何万回も練習した」からこそ味わえる充実感……あの頃の様に、本気になればきっと何か出来るはず。すっかりいい訳上手になってしまった私に「渇!」を入れてくれる貴重な作品なのである。                                                                            (芝田 佳織)


『マラソン』
 
監督:チョン・ユンチョル (2005年 韓国 1時間57分)
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン、ぺク・ソンヒョン

 とにかく運動オンチで、人前で何かをすることが大の苦手な私にとって、小学校時代の「マラソン大会」は苦痛でしかなかった。一生懸命走っても、結果は“最下位”。その日、親に順位を報告する瞬間の恥ずかしさと悔しさ。その気持ちが、毎年大会の前日になると腹痛や発熱を起こすという事態に。結局ほとんどを欠席し、私は自分の弱さから“逃げた”のだった。

 それから何年もの時が経って、『マラソン』という映画に出会った。自閉症の青年が、フルマラソンを見事に完走したという実話である。

 私は思わず、あの“苦い記憶”を思い出してしまった。そして、同時に気付かされてしまった。良い順位を取って、褒められたい。良く思われたい。でも走るのが遅いから、そんな姿は見られたくない。そんなことにこだわって、本当に大事なことを見失っていたのだ。“最後まで走る”という、一つの「目標」を達成することにこそ、意味があったのに…。

 もう後悔はしたくない。この先立ちはだかる、人生の「でこぼこ道」や「坂道」に、たとえつまずいてもいい。決して諦めず、自分のペースで“完走”しようと思う。           
                                             (篠原 あゆみ)

 
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