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記者会見レポート

  『猿ロック THE MOVIE』 大阪キャンペーン

『猿ロック THE MOVIE』
主演:市原隼人が大阪城豊国神社で大ヒット祈願!!

(2009年 日本 1時間52分)
監督:前田 哲 原作:芹沢直樹(「猿ロック」)
出演:市原隼人、比嘉愛未、高岡蒼甫、芦名 星、渡部豪太、
    和田聡宏、光石 研、西村雅彦
2010年2月27日(土)〜梅田ブルク7 ほか全国ロードショー
公式サイト⇒  http://saru-movie.jp  

            〜心の鍵も開けちゃう天才鍵師の純情〜

 累計450万部を突破した大人気コミック『猿ロック』のテレビドラマに続く映画化作品。監督は『パコダテ人』『ブタがいた教室』等の前田哲監督。主演は、『リリイ・シュシュのすべて』『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』『ROOKIES−卒業−』などで、繊細な役からツッパリ根性ものまで、男の子らしい強い個性でのぼり龍のごとき勢いのある市原隼人。巻き込まれ型のドタバタ感はあるものの、真っ直ぐすぎる鍵師が大都会を疾走する痛快作。

【ストーリー】
 サルこと猿丸耶太郎(市原隼人)は、下町の商店街の天才カギ師。彼の弱点は女にはとにかく目がないこと。ある日、マユミと名乗る美女(比嘉愛未)の依頼でスポーツクラブの金庫を開ける事に。彼女は記憶障害で番号を忘れたというのだ。金庫の鍵を開けると、そこには先日銀行から盗まれたトランクが!何も知らずに取り出すと、何故かヤクザが追ってくる。
 そこでサルはマユミを守ることを約束する。しかし、トランクの中には警察の権威に関わるデータが入っていたのだ。データ流出を防ごうと二人を追う江戸川警察署署長・水樹(小西真奈美)。このままでは、サルが指名手配!?いったいこの女は何者?どうなるサル!それでも、約束を守れるのか?
***********************************************************************************

ファンの応援もあって上機嫌♪


神妙な面持ちで鍵を受け取る 。


どうです?
この益荒男(ますらお)ぶり!



ヒットしますように!
 主人公の天才カギ師・猿丸耶太郎(通称:"サル")を演じる市原隼人が"サル"こと天下人・豊臣秀吉公が奉祀されている大阪城敷地内の豊国神社にて、『猿ロックTHE MOVIE』の天下統一を目指して大ヒット祈願を行った。小雨の降る悪天候の中、袴姿で登場した市原隼人に、集まったファン(350名)は大興奮!

 お祓いでは、タイトルロゴをカギの形にかたどった、特大カギを奉納。お祓い後、参道を歩く市原に少しでも近づこうと、ロープを超えるファンが続出。ファンにもみくちゃにされ、大混乱。一時、イベントが中断するトラブルも起こるほどの熱狂ぶり。

――― 大阪城は初めてということですが、大阪の印象は?
『猿ロック』も下町で展開していくストーリーですが、大阪も下町の温もりを感じさせてくれるところが似ていると思いました。
――― 豊臣秀吉については?
頭のいい、世渡り上手という印象です。
――― 今日の衣装は自前ですか
いえ違います。こういう神聖な場所でお祈りさせていただくので、きちんとした格好で来たいと思い、自分からお願いしました。

――― バンクーバー・オリンピックのスピードスケート選手の高木美帆さんが、市原さんの大ファンだということですが……?
えっ、本当ですか?
――― 好きな理由は、ツっぱてるけどとても優しくて男らしいところがカッコイイということです。
嬉しいですね〜。それに恥じないような役者になりたいです。

――― 撮影現場に入る時、いつもテンションが高かったと聞きましたが、今日のテンションはいかがですか?
今日の方がハイテンションです。撮影がすべて終わって、これからが新たなスタートだと思っています。ぜひ皆さんに見ていただきたいです。

 最後に、「本当の正義は何かを見つめていく映画です。本当に世の中、何が良くて何が悪いか分からなくなっています。でも何か一つだけ、みんなが共通して肩を組んで笑えることがあるんだと追及している映画です。本当にピュアで真っ直ぐな映画です」とアピール。 秀吉同様、「猿ロック THE MOVIE」で天下統一を目指す!

(1月20日には、ドラマ「猿ロック」のDVD-BOXが発売された)


こんなに着物が似合うのなら、
時代劇も見てみたい!
 最初、坊主頭に背中に龍の刺繍のある紋付き袴姿を見て、驚いた。どこかのこわ〜いおにいさんかと・・・ところが、前日まで大阪市内でボクサー役で映画の撮影をしていたというではないか。その役作りのため体重を増やしたのだろう、全体的にがっしりと逞しくなっていた。また、質疑応答にも言葉を選びながら落ち着いて語り、大人になったな〜という印象でした。
(河田 真喜子)ページトップへ

  『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 記者会見

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
ゲスト:三浦大輔監督、峯田和伸

(2010年 日本 1時間54分)R-15
原作: 花沢健吾
監督・脚本: 三浦大輔
出演:峯田和伸 黒川芽以 YOU リリー・フランキー 松田龍平 小林薫
2月13日(土)より、テアトル梅田、MOVIX堺、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都にて公開
公式サイト⇒  http://www.botr.jp/
〜痛々しく、生々しく、熱い男の青春を銀杏BOYZ・峯田が熱演!〜  


 熱狂的ファンを多くもつ花沢健吾の同名原作コミックを、劇団ポツドールの三浦大輔が映画化。三十路を目前に、初めて本気で女性に恋をしたサラリーマン・田西敏行の不器用な“性春”の暴走を描く。監督と、主演を務める銀杏BOYZの峯田和伸が揃って来阪し、合同会見を行った。

 弱小玩具メーカーで働く29歳の田西は、実家暮らしの素人童貞で、自分の誕生日をテレクラで祝う情けない男。気になる同僚の女子・ちはるにアタックすることすらままならず、非モテ街道をひた走っている。だが、ある日。ひょんなことから、ちはるとメアド交換に至った田西は、ライバル会社のモテ男・青山にアドバイスを仰ぎ、彼女を飲みに誘う。そうして少しずつ距離を縮めていく2人。だが、ちはるが田西への好意を確信した時、事件は起こる。
 欲望が高まるあまり、“大失態”を招いて自爆!その後、挽回を目するも、ちはるが青山に寝取られた上にポイ捨てされたと聞いた田西は、無様にも青山の元へ乗り込む決意をする。
この田西の何者にもなれない不器用さに共感できる男子は、哀しき男の性に笑い、泣き、感動すること間違いなし。下品で醜くとも、誇りをかけて一途に突っ走る男の純情がまぶしい傑作。

 『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』などで、俳優としても才気を発揮する峯田和伸の、鬼気迫る熱演がスゴイ!もう、田西なのか、峯田なのか。その完璧なヘタレ具合とピュアな瞳がスクリーンで輝きまくっている。  
 田西役は彼しかいないと公言する監督は「現場では、峯田くんが演じてみて感情の乗らない所はそのままにせず、彼が気持ちをもって行きやすいように脚本を変えて対応していました。というのも、峯田くんが田西に似せてしまうのが嫌だったから。無理やり漫画の田西に合わせるのではなく、峯田くんに近い素の状態で演じて欲しかった。演技なのか、素なのか分からない、せめぎ合っている状態を目指した」と話す。田西役の話が自分に来て驚いたという峯田は「原作が好きすぎて、本当は映画化して欲しくないと思っていた。でも、三浦大輔が監督をするということで、出演を決めました。田西は僕自身ではないし、原作とも若干違う。監督と僕が生んだ第三者のような存在です。自分らしく演じられました。」
 原作コミックは2005年から2008年にかけて連載され、単行本は全10巻で完結している。映画化は5巻までのエピソードでまとめられているが、そのことについて監督は「5巻までにしたのは相当悩みました。5巻以降こそが『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の本質かもしれないとも思ったのですが、10巻までをミックスして2時間にまとめると内容が薄くなってしまう危険性がある。ここは潔く“ボーイズ・オン・ザ・ラン”の前提をしっかり描こうと思い、5巻までに決めたんです。」


 さらに、田西を翻弄する可愛くも憎たらしいちはるのキャラクターについては「彼女は漫画の方がもっと“ビッチ”な印象が強い。でも、実写化にあたって、ちはるにも一本筋を通さないといけないと。2時間という枠で考えると、ちはるを馬鹿な女に描きすぎると先が読めてしまう。田西とちはるが、うまく行くか、行かないかの緊張感を最後まで保ちたかったので、そこら辺は慎重に描きました。」

 映画には田西が青山との決闘を控え、岡村孝子の「夢をあきらめないで」を歌うシーンがある。湧き上がる思いを吐き出し、その場に崩れるように歌を熱唱する姿は、滑稽だがジーンと胸を熱くする名場面だ。さすが、ミュージシャンと感心するあのカットはどんな思いで挑んだのか。「あそこは、ああするしかなかった。うまく歌おうという念が入ると、かえってわざとらしく聞こえてしまうので。この間、友だちとカラオケに行ったとき、フラれたばかりの友だちが、ヤケ酒を飲んで“絶唱”していた(笑)それを見て「魂」というのは、こういう物かなと刺激を受けました。なので、田西だったらこう歌うだろうとかは考えなかったです。」
 本作は、“心で真剣に恋をしているのに、下半身の暴走により敗北を帰す”純情男子のみっともない生態をさらけ出したボーイズ・ムービーであるが、監督は女性にも積極的に見て欲しいと伝える。「30代に迫って焦りを感じている男たちに共感して欲しいのはもちろんですが、エンタテインメントとして女性も楽しめると思う。男の生態を見てどう思うのか聞きたいですね。男ってこんなにバカなのかと分かって欲しい(笑)」さらに峯田も「男ってあんなのばっかりですよ。もう原作を読んでいた時から、何で僕のことを描いているんだろうって(笑)ただ、決闘をしに行くシーンはスゴイと思う。僕だったら直前になって「ウソでした。ゴメン」ってごまかすと思う。だから、漫画の田西は“理想”なんですよね。」
 最近の若者は“結果が見えていることには手を出さない”欲望を失った世代と呼ばれているが、この映画を見ていかに結果より“過程”が大事かと気付かされる。泣き寝入りするより、仲間の助けを借りてでも自分の気持ちにケリをつける方が、確実に人として成長するのだから。「夢や希望だけじゃない、醜さの果てにある爽快感を得られるはず」と監督が語るように、カッコ悪さを肯定する勇気を与えてくれる作品だ。
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  『パレード』 藤原竜也&林遣都 大阪キャンペーン




『パレード』 ゲスト:藤原竜也、林遣都

〜ゆとりと閉塞感の狭間で居場所を探す
                5人の若者のリアル〜

(2010年 日本 2時間58分)
監督・脚本: 行定勲  原作:吉田修一
出演: 藤原竜也 香里奈 貫地谷しほり 林遣都 小出恵介
2010年2月20日(土)〜 梅田ブルク7 なんばパークスシネマ MOVIX京都 シネ・リーブル神戸 にて全国ロードショー
公式サイト⇒
 http://www.parade-movie.com/

 第15回山本周五郎賞を受賞した吉田修一の同名小説を、『世界の中心で、愛をさけぶ』のヒットメイカー・行定勲が映画化。アパートでルームシェアをする5人の男女の何気ない日常と、そこに潜む“焦燥と恐怖”をあぶり出す青春群像劇。出演は、藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介と若手実力派の豪華な顔ぶれが揃う。
 先輩の彼女に恋をする大学生、酒グセの悪い女性イラストレーター、人気俳優と恋愛中の女の子、映画会社勤務の青年、謎めいた男娼。ひとつのアパートを共有しながらも、深いつながりはなく、表面的なつきあいをサラッとこなす。家に見知らぬ青年が上がり込んでいても、きっと誰かの友人だろうと疑いもせず受け入れてしまうなど、曖昧でつかみどころのない“ケータイ世代”のリアルに、若者は共感し、大人は凍りつくだろう。
 今や犯罪は悪から生まれるのではなく、日常の至る所に点在している。そして、それを取り立てて咎めることなく記憶の奥底へとしまってしまう若者の無関心さを表したエンディングは衝撃的だ。
 5人それぞれのエピソードに潜在する小さな違和感が、ラストに大爆発するのだが、それを効果的に見せるには、やはり俳優の演技力が一番の要となってくる。その点、本作の役者陣は優秀で安心して物語にのめり込むことが出来る。中でも、最年長として5人をまとめる直輝役の藤原竜也と、『ダイブ!!』や『風が強く吹いている』のさわやかイメージから一転して金髪の男娼・サトルに扮した林遣都が絶品だ。そんな2人が、大阪で開催された先行上映の舞台挨拶に登場。満員の観客を前に笑顔を見せた。


 2人は本作が初共演で、俳優デビューは藤原の方が10年先輩にあたる。林の印象を「いい意味でサラッと芝居をして度胸がある。ナチュラルな表現をする俳優」と藤原が話すのに対し、林は「現場ではストイックな方だと聞いていたので、最初は近寄りがたかった。でも、すぐに「お前、上下関係ちゃんとしろよ」とイジッて来てくれて(笑)そこから気が楽になりました」

 さらに、役作りで金髪にした林は「撮影中に3回くらい染め直して、頭が焦げるかと思った」と苦笑い。他にもヌードで際どい場面に挑むなど、サトル役を体当たりで演じている。だが、本編を一緒に見た彼の両親は、気まずくて「途中でどこかへ行っちゃった(笑)」のだとか。
 「同年代の俳優とガッツリ芝居ができたことが、いい経験になった」と話す藤原は、最後に観客へ向け「大きなエンタテインメントというよりは、純粋にいい映画が出来たなと思います。」と締めくくった。

◆舞台挨拶後に行われた、囲み取材ではそれぞれが役や監督について語ってくれた。
藤原:「僕の役は、先頭を走っているつもりが、気がついたら取り残されている。帰る場所が見つからずアパートに戻っていく…。しっかりしたように見えて、寂しい男です。僕も夕暮れ時に、ふと寂しさを感じて、どこに行ったらいいんだろうと考える瞬間もあるので、今回のキャラクターが抱えている悩みにも共感できた。行定監督の演出は、とても細やか。映画少年のようにストイックで、1ミリの妥協もしない粘る監督でした。ただ、そのこだわりが質感となって映画に出ていたので、うまい監督だなと思った。妙な懐かしさを感じて、昔の日本映画を見ているようでした。」
林:「一番あぶない感じの役だったので、先輩たちをとの共演を前に、プレッシャーはありました。でも、コミュニケーションを取るうちに、段々とリラックスして撮影にのぞめて、ルームシェアの一員になれた気がします。監督は、役者やスタッフさん、他全てに対して完璧。いつ寝ているんだろうと疑問に思うくらい。この作品に出演して、人とか世の中は、これが本当の姿じゃないのかなと思った。映像は、すごく大人な雰囲気があって、おしゃれで、行定監督ってスゴイ!他にない映画を取る人だなと感じました。」
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  『真幸くあらば』 主演:久保田将士
『真幸くあらば』

(2009年 日本 1時間31分)
監督: 御徒町凧 
音楽監督: 森山直太朗
出演:尾野真千子、久保田将至、佐野史郎、
    ミッキー・カーチス、 テリー伊藤 
2010年1月9日〜梅田ブルク7 公開予定
公式サイト⇒ http://www.masakiku.com/
【STORY】
 空き巣に入った家でカップル2人を殺害し、死刑を宣告された南木野淳。そんな彼のもとをクリスチャンの薫が面会に訪れる。実は、淳が殺した男は薫の婚約者だった。淳の罪を通して婚約者の裏切りを知った薫は、淳を憎み切れない複雑な気持ちを抱えていた。やがて、面会を重ねるうち、2人は互いの孤独に惹かれあい、愛し合うようになる。
 「真幸(まさき)くあらば」とは、有間皇子が処刑される際に詠んだ辞世歌の一編で「もし(神に祈願して)叶えられたら」という意味。死刑囚・淳と、彼に婚約者を奪われた女性・薫の禁断の恋をシリアスに描く。監督は本作がデビューとなる御徒町凧。薫役を『クライマーズ・ハイ』の尾野真千子、淳役を国内外でモデルとして活躍する一方、俳優活動も行う久保田将至が演じる。
 本作がヒットしなければ俳優を引退と公表した久保田将至が来阪。全身全霊で役にのめり込み、初主演映画に取り組んだ意気込みを語ってくれた。死刑囚を演じるにあたって「刑務所は見学することができないので、刑務所の内部事情が書かれた本を読んだりしてリサーチしました。製作の奥山さんからは、引退覚悟でやってみろと言われていたので、撮影期間はずっと淳を“生きる”ことが目標でしたね。役者としての経験も浅いので、本当に必死でした。」
 第一審判決後に控訴を自ら取り下げるなど、死を明確に覚悟していた淳が、薫との出会いを経て再び生を取り戻していく過程は、静かに詩的に綴られる。「淳は、孤独で愛を知らずに育ったので、人の温かさに対して敏感。薫との出会いはもちろんですが、彼女だけではなく、ミッキー・カーチスさんやテリー伊藤さん演じる死刑囚たちと関わっていくなかで、少しずつ「生」を取り戻していったと思う。」
 「監督からは悲壮感が欲しいと言われていた。撮影は順撮りだったので、控訴を取り下げて、坊主になって、という風に段々と研ぎ澄ましていった。その分、消耗しましたね。僕は、役に入るスイッチのオンとオフが出来ないので、撮影後も淳から抜け切れなかった。人を信用せず、何に対しても敏感な淳を追及していくと家に帰っても意味のない行動を取ったり、人と話そうにも言葉が出なかったりしました。でも、終わった後は達成感と充実感はすごくあった。尾野さんとも撮影が進むにつれ会話が減っていたのですが、クランクアップしたあとは抱き合って喜びましたね。」
 面会や秘密の手紙のやりとりで二人は互いに理解を深め、心を満たすが、いくら求め合っても触れ合うことは決して出来ない。透明のアクリル板が2人の体温の交流を阻んでいるようでもどかしい。そして、二人はある満月の夜、同じ時間に互いを思い、愛し合う。突拍子もないが美しい、2人の“真幸くあらば”を象徴するシーンは衝撃的だ。「あの場面を初めてスクリーンで見たとき、直視できなかった。でも、撮影の時は、僕は淳だったし、薫と恋愛していたので、あの行動は必然でした。だから気負うこともなかった。客観視が出来るようになった今はちょっと恥ずかしい(笑)でも、それよりも、薫がしてくれたことを初めて見たときは、嬉しくて涙が出ました。」
 そんな2人の恋を「屈折した愛」と語り、「純愛に飽きた人に見て欲しい」と話す。自身が最も印象に残っているシーンは、「面会の場面で僕が「淳でいいですよ、母親なんでしょ薫さん」って話すところで、尾野さんがアドリブで「淳」って呼んでくれるんです。そこは、もう感情のふり幅がヤバかった。あとは、四葉のクローバーを眺めるとか、クモの巣を壊さずに窓を開けるとか、徐々に淳が人間らしくなっていく場面が気に入っている。その逆で、死刑が執行される日の撮影は、廊下を歩くシーンが淳になっているからこそ怖かったんです。あの光に向かっていくと死んでしまうと思って、最初の一歩が踏み出せなかった。そんな時に監督が「この光に向かっていけば薫に会えるんだよ。アクリル板を飛び越えられるんだから、もっと大きく歩いて行っていいんじゃないのと言ってもらって、やり終えることができました。」
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  『アバター』 12/21完成披露試写会での舞台挨拶
『アバター』
〜ジェームズ・キャメロン監督の新作『アバター』を、
        オール巨人&池野めだかが応援〜


 (2009・アメリカ/2時間42分)
監督・脚本 ジェームズ・キャメロン
出演 サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ ミシェル・ロドリゲス スティーブン・ラング シガニー・ウィーヴァー

2009年12月23日(金)より
TOHOシネマズ梅田、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸、シネモザイクほか、全国超拡大ロードショー

・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒
 
http://movies.foxjapan.com/avatar/
 世界史上最高の興行収入を記録した『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が、12年ぶりにメガホンを取った『アバター』をひっさげて来日。東京・六本木で開催されたジャパンプレミアに登壇し舞台挨拶を行った。同時開催された大阪のプレミア試写にも、その模様を3Dで生中継!映画界の“巨人”ジェームズ・キャメロンにちなんで招かれた、関西お笑い界の“巨人”こと、オール巨人&池野めだかが監督と“3D対面”した。
 映画に登場する身長3メートルの異星人・ナヴィを意識して全身ブルーのスーツで決めたオール巨人は、「僕がナヴィで、めだかさんが人間です」とキャメロン監督に紹介。2人の身長差に感心を示しながら、「『アバター』は、ビジュアル以上にハートに訴える作品です。この映画はCGで作られていますが、本当の俳優の演技をCGに映しているので、小さな動作もとてもリアルに描かれています。その辺りを楽しみながら、パンドラに旅をしてください。」と、映画の見所について語ってくれた。
 『アバター』は、キャメロン監督が製作に4年を費やしたスペクタクル・アクション。地球から遥か彼方の衛星パンドラに暮らす先住民ナヴィと、利益のため彼らの森を破壊する人間との戦いを描く。最新鋭のCG技術を駆使して創られた驚異の映像は、3D新時代にふさわしくまさに革命的。一歩踏み込めばスクリーンに吸い込まれそうな迫力で、観客を冒険の旅へと誘ってくれる。
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  『蘇りの血』 豊田利晃監督 記者会見
『蘇りの血』 ゲスト:豊田利晃監督

〜この映画は豊田版「火の鳥」。
  自分がどうやって蘇るのかはずっとテーマだった。〜

(2009・日本/83分)PG-12
監督・脚本 豊田利晃
音楽 TWIN TAIL(中村達也・勝井祐二・照井利幸×豊田利晃)
出演 中村達也 草刈麻有 渋川清彦 新井浩文 板尾創路
12月19日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸
1月23日(土)〜京都シネマ

公式サイト⇒ http://yomigaeri-movie.com/
【STORY】
 闇の大王の病を癒すため、ある砦に招かれた按摩のオグリ。満足いく施術を披露するも、忠誠を誓わない彼の態度に腹を立てた大王に抹殺されてしまう。しかし、現世への未練を捨てきれないオグリは、体の自由がきかない「餓鬼阿弥」となってあの世から舞い戻ってくる。一方、大王の元を逃げ出したテルテ姫は、その道中でオグリと再会。彼を現世に蘇らせるため“蘇生の湯”を目指す。

 『空中庭園』から4年。しばらく映画界を退いていた豊田利晃監督の待望の新作が12月19日(土)より公開される。歌舞伎の演目にもなっている寓話「小栗判官」をモチーフに、強欲な支配者に葬られた男の“再生と復讐”、人間がもつ“生命と愛”の神秘を描く。主演のオグリを、元BLANKY JET CITYのドラマー・中村達也、大王に捉えられる姫を草刈麻有が演じる。
 映画から遠ざかっていた間、中村達也・勝井祐二・照井利幸が組むバンドTWIN TAILに映像担当として参加し、ライブ活動を行っていた豊田監督は、映像と音楽が一体化したストーリー表現に興味を抱く。そんな時に訪れた紀州・熊野の“蘇生の地”。小栗判官が不治の病を治した壺湯を前にして、“蘇り”というテーマが浮上した。
 「初めはTWIN TAILのDVDを作ろうと思っていた。でも、どうせなら音楽ありきの映画にしようと。セリフも少なくして、音楽が前に出てきて語りだすスタイルを目指した。」確かに映画を見ていても音楽こそ主役のようで、ある意味TWIN TAILの長編PVと言っても過言ではない。序盤から飛ばす中村達也のドラムは、ホレボレするほどカッコいい。その力強い音は、主人公の波乱の幕開けを予感させる。「でも、音楽に関しては、こっちの注文は何も聞いてくれない(笑)。TWIN TAILって、ステージ全てが即興演奏。決まった曲というものがないから、ライブの音源を持って帰って、曲になっているなと思う部分をストックして、編集が終わった時点で音楽を当てはめていった。そして、上映しながら再演奏してもらうんだけど、必ず一緒のことはやってくれない(笑)」

 音楽に関しては新たな挑戦に終始したようだが、主演の中村達也についても、今まで誰も彼の本当の魅力を引き出せていないと感じていたという。「達也さんは、ルックスからしてチンピラの役が多いけど、本人は静かな人。でも、醸し出している雰囲気は凶暴。この映画ではその存在感をきっちり映そうと思った。達也さんが血の池で叫ぶシーンは、人間が蘇る所ってどんな画なんだろうという発想から出来た。あの叫びを撮るためにこの映画がある。」さらに、オーディションを経てテルテ姫に抜擢した草刈麻有については「美しく凛としているオーラが姫にピッタリ。こういう新人女優に出会えるのは僕の方がラッキーですね。現場では、マネージャーさんも初日で帰ったから、刺青男たちと一緒の宿でご飯食べていました。度胸がある(笑)」
 撮影は全編、下北半島で行われ、冒頭の場面は有名な観光地「仏ヶ浦」を舞台にしている。観光地で一体どうやって撮影したのか聞くと「一応、許可は取っているけど、あんなことするとは言ってない(笑)。観光地なので4時までお客さんがいる。4時からセットを組んで、夜中から撮影をスタートして、朝には撤収!まぼろしの撮影です。
ポスターカットにもなっている巨木の場面は、クレーンをもって山道を30分くらい歩く。建設会社のおじさんたちに頼んで、3往復くらいしてもらって撮った。おじさんたちが今までの仕事で一番きつかったって言っていました。本当に下北半島全面協力のもと、スタッフとキャストの情熱と覚悟が詰まっています。」

 「エコロジーじゃない、禍々しく荒々しい自然と、中村達也のドラムのような人間本来がもっているエネルギーを描きたかった。実際、ロケハン中に右足が動かなくなるハプニングにも見舞われた。下北半島の森の生命力にやられたんでしょうね。車椅子で仕事して、東京に戻ったら治りました。その自然や音のパワーを感じてもらえれば」とメッセージを伝える。そして最後に、これからも作品を撮り続ける意思を明かしてくれた。豊田監督ファンには朗報と言えよう。「休んでいた分の本数を取り戻し、地元大阪でもいつか映画を撮りたい」と気込む豊田監督の今後にも期待したい。
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  『脳内ニューヨーク』 トークイベント
『脳内ニューヨーク』土田英生/春岡勇二トークショー
〜現実と虚構の狭間に迷い込み…〜

(2008年 アメリカ 2時間4分)
監督・脚本:チャーリー・カウフマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、サマンサ・モートン、ミシェル・ウィリアムズ、キャスリーン・キーナー、エミリー・ワトソン
2009年11月28日(土)〜テアトル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネ・リーブル神戸
公式サイト⇒  http://www.no-ny.asmik-ace.co.jp
 家族とうまくいかず、失敗続きの劇作家ケイデン。失望にうちひしがれた彼の下に演劇賞受賞の知らせが入る。ケイデンは、賞金を全て注ぎ込み、巨大な倉庫の中にニューヨークの街を作り上げ、俳優たちに、自身の実人生を舞台で演じ、再現していくプロジェクトに取り組む。何が現実で、何が芝居なのか、混沌としていく中で、終盤、ある老優がケイデンを演じることになり、ケイデンも家政婦エレンを演じることになる。壮大な企画は一体いつ終わりを迎えるのか…。

  観客を迷路の中に迷い込ませ、不思議な感覚とユーモアで包みこむ本作のメガホンを握ったのは、『エターナル・サンシャイン』、『マルコヴィッチの穴』と、奇想天外な想像力で観客を魅了する脚本家チャーリー・カウフマン。

  関西での公開前の11月24日、テアトル梅田で試写の上映後、劇作家で劇団MONOの脚本・演出、役者もされている土田英生さんをゲストに迎え、映画評論家の春岡勇二さんとのトークが行われた。
 劇団MONOは京都を拠点に活躍する結成20年の劇団で、2004年の中谷美紀ら出演の映画『約三十の嘘』は、同劇団の同名戯曲の映画化。土田さんは数多くのTVドラマの脚本も手がけるコメディー作家。楽しくユーモアにあふれた舞台をつくりあげ、ほろりと暖かな感動で観客を包み込み、公演の場も全国へと広がっている。主人公ケイデンと同じ劇作家として活躍中の土田さんの目に、本作はどのように映ったのか、トークの概要をご紹介します。
 2週間ほど前に観たという土田さんは「とてもおもしろかったです。演出をしていくうちに、どれが自己なのかわからなくなり、いつのまにかまわりに操られてしまっている。きっとカウフマン監督はアイデンティティが揺らいでいる、不安的な人ではないかと思いました。僕自身、自分が夢遊病じゃないかと思うことがあるんです。というのも、餡子が大好きで、朝、起きると、アンパンの袋だけ残っているのに、食べた覚えがない。ひょっとしたら、ト書きに『土田、アンパンを食べる』とあって、誰かに操られてるんじゃないかと思ったりするんです」と話し、観客の笑いを誘った。
 観客と一緒に観終わったばかりで、やや興奮ぎみの春岡さんが「演出家というのは、役者を動かして、物語を設計していく、いわば神のような立場でもありますね」と言うと、土田さんは「確かに作者が操っているといってしまえば、身も蓋もありませんが、僕が好感を持ったのは、結局は、自分では操れないと思っているところですね。」とコメント。
 ペシミズム(悲観主義)の中にオプチミズム(楽観論)の萌芽を忍び込ませ、不思議な世界を描き出した本作。土田さんが、「僕には、この映画が人生を肯定的、前向きにとらえ、希望を持っているようには思えませんでした。ケイデンの妻アデルが描く絵もすごく小さいですよね。人間なんてそんなちっぽけな存在でしかない。短い中にもそれぞれの人生はあるけれど、人の人生ってそんなもんだよ、と言われているようにしか思えませんでした。カウフマンは悲観的な人では?」と、この作品の哀しみの部分に着目。

  対する春岡さんは「ケイデンの両親の死も描かれ、終始、死に方にこだわっています。最後の荒廃したニューヨークの街の光景も、終末観です。人間は死に向かっていく存在というのが、映画のベースにあります。人生そのものを咀嚼してみると、こんなふうに人の一生は短いし、人間全てが操られているかのような存在にみえる。だけど、運命を切り開いていくのはその人自身だし、皆それぞれの人生の主人公であり、頑張ろうというメッセージを僕は感じました」とポジティヴな面を指摘した。
 脚本のつくり方について、土田さんは「はじめにきちんとプロットがつくってあって、プロットどおりに書いていったという感じではなく、仕掛けの上に、また仕掛けを載せていって、次々とできていった感じに見受けられました。観ていくうちにわからなくなってくる浮遊感があり、それもおもしろかったです」と話す。春岡さんは、「監督は、次々と自由に新たなプロットを加えていくんですが、全体としては、整合性があって、きっちりしています。映画の最初に示される時刻と最後の時刻とがほぼ同じ時間なんです。ケイデンが起きようとして、最後には死んでいる。死ぬまでの一瞬の間に見た夢を、映画としてみせられた、そんな解釈もできると思うんです」と熱っぽく語る。
 劇作家は、一体、どんなふうに脚本を書き進めていくのだろう。そんな疑問に土田さんが答えてくれた。「僕は、テーマとか何かを訴えるという形では、脚本を書いていませんね。普段、書いている時は、劇的なことを連続させたい、このセリフの後に観客をどきりとさせる、その連続をしたいと思って書いています。劇の時間がおもしろいかどうか、観客の皆さんに楽しんで観てもらえるかどうか、にしたがって書いているうちに、ラストに到達するという感じです。脚本が完成し、舞台を観てもらい、批評家からテーマとかを指摘されて初めて、そんなつもりはなかったけれど、言われてみれば、と思うことも多いです」春岡さんが「テーマとかは、観ている人たちが、後から勝手にくっつけていくものですよね」と言えば、土田さんは「つくり手には、これはこうだと簡単に解釈されたくない気持ちもあると思います」と劇をつくる側としての率直な気持ちを語ってくれた。

  最後に、春岡さんは「映画というのは、おもしろいかつまんないかだけで、テーマなんてどうだっていいんだと僕は思いますね。観ている人たちがおもしろがれるかどうか。その意味では、この作品はかなりおもしろいです」とご自分の映画観を熱く語られ、「他の人がどう思ったのかなんてどうだっていいんです。自分にとって、なぜおもしろいかを考え、映画を反芻する。今日の映画も、一つの表現を体験したというふうに心の中におさめてもらったらどうでしょう」と締めくくった。
 今回、再見だったという春岡さんは、この話の本当の主人公は、家政婦エレンであり、ケイデンを含め、全員、エレンの夢の中の人物ではないかと独自の解釈を披露。映画をよくみれば、時間経過の描写もかなり省略されており、時計やカレンダーが示す日付、役者たちのセリフから、観客は、数ヶ月ときに数年もの歳月が過ぎ去っていることに驚かされる。
 ケイデンを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの老化し衰えていく肉体。人間誰もがいずれ死ぬ存在というペシミズム。だからこそ、何か書き残したいというケイデンの強い思い。何もできあがらないまま疲弊していく彼に優しく声をかける女性たち。

  幾通りもの解釈や想像が広がっていく本作。「始まりは終わり」という冒頭のラジオから聞こえてくる言葉や、牧師の説教の言葉など、きっと心に残るシーンやセリフがあるはず。どう考えるかは、観客次第。ラスト、ケイデンがイヤホンから聞いていた声は、決して冷たい響きではなく、むしろ暖かで、詩のようにも聞こえた。ラストシーンのぬくもりをどう感じるだろうか。
 エンディングの歌がすばらしい。“ちっぽけな自分”、“ちっぽけな自分の人生”をかみしめながらも、一つの生の輝きとして、今という瞬間を人は生きている。ぜひ、この迷宮の世界、スクリーンで浸ってみてください。

(参考情報)
劇団MONO公式サイト⇒http://www.c-mono.com/
第37回公演「赤い薬」2010年2月19日(金)〜28日(日)(大阪 HEP HALL)
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  『なくもんか』 天神橋筋商店街でキャンペーン!

                                                   (写真はすべて東宝提供)
『なくもんか』天神橋筋商店街レッドカーペットウォーキング!
ゲスト:阿部サダヲ、竹内結子、水田伸生監督


配給 東宝(2009・日本/134分)
監督 水田伸生
脚本 宮藤官九郎
出演 阿部サダヲ 瑛太 竹内結子 塚本高史 
11月14日(土)全国東宝系ロードショー

公式サイト⇒ http://nakumonka.jp/index.html

〜笑って切り抜けよう! 不幸でもなんでも〜
 2007年、宮藤官九郎の脚本で、阿部サダヲ主演、水田伸生監督がタッグを組んだ『舞妓Haaaan!!!』が大ヒット!あの敷居の高い祇園を、クドカン流の笑いの旋風で身近なものにしてくれた。 (特に関西での人気は高かった) 今回は、人情味あふれる古き良き商店街でハムカツ屋を営む主人公と、その家族が巻き起こす、笑って笑って泣ける感動ドラマで、見る者の心を軽くしてくれる。

 その「商店街」にちなんで、大阪を代表する天神橋筋商店街で一大イベントが開催された。天神橋筋商店街と言えば日本一長い商店街で有名ですが、今回は天神橋3丁目から1丁目にかけて、「史上最長」(912.9m)のレッドカーペットが敷かれ、そこをゲストのお三方が練り歩くという趣向。勿論、ハムカツ屋が舞台とあって、天神橋筋商店街の中にある、美味しいコロッケで有名な「中村屋」の前で、特別に揚げてもらったハムカツを頬張るゲスト(左写真)。

 その後、多くの見物客にもみくちゃにされながら、無事に天神橋1丁目まで歩き通した。いやはや、キャンペーンとはいえ、ご苦労様でした。その後、大阪天満宮で「ヒット祈願」。その後行われた囲み取材では、やっとゲストの声を聞くことができた。

――― 大阪のおばちゃんは如何でした?
阿部:ええっ?おばちゃん限定の質問ですか?大阪のおばちゃんは熱かったですね〜ヒット祈願しなくても、もう見て下さっているような、既にヒットしているようだと勘違いさせて頂いて嬉しかったです(笑)

―――世界一のレッドカーぺットを歩いた感想は如何でしたか?
竹内:楽しめたらいいな〜と思っていたら、予想以上の迫力で驚きました。さすが大阪は世界一だな、と思いました。

――― 監督は如何でしたか?
監督:本日、松井秀喜さんが所属するニューヨーク・ヤンキースが世界一になりましたが、この勢いに乗って世界一とまではいかなくても、一人でも多くの大阪の方に見て頂きたいと思いました。

――― 大阪を舞台にした企画はないのですか?
監督:すでに企画はあります! この映画が当たれば!ですが・・・是非大阪で。でもあの商店街では恐いかな?と。

――― ここはタイガースファンのお膝元ですが、ジャイアンツファンの阿部さんから見て、今年の日本シリーズは?
阿部:ちょっと、言いにくいですね〜凄く熱いし、見ていて楽しいですね。日本ハムもジャイアンツも素晴らしいですよね。ハムカツ屋としては、どっちを応援するか悩みますよね〜今のところ、(小声で)原辰徳さんが好きなんで・・・
――― どうぞ大きな声で
阿部: 大丈夫ですか?こんなこと言って? 原辰徳さんが好きなんで、ジャイアンツを応援しています!

――― 時間もなくなりましたので、この辺で・・・
監督:ええっ? 野球の話だけですか〜! 野球もいい試合をすることが大事ですが、我々も一所懸命いい映画を作ったつもりなんで、是非見て頂きたいです。

――― 竹内さんは?
竹内:ええっ? 私が締め? 今日集まって下さった皆様はとても温かく迎えて下さったので、今度は映画をご覧になって、今日のように温かく感じて下さればいいなと思います。

 今回のイベント取材の撮影は、商店街では指定された一箇所だけで、しかもシャッターチャンスもなくピンボケばかり。また、囲み取材では質問は司会の代表質問だけで撮影も許されず、ゲストの素顔を撮ることができなかった。物足りなく思っていたら、控え室から出てきた阿部サダヲさんを発見!大阪のおばちゃんになりきって声を掛けてみた。「舞台の方も見ております。『R2C2』最高でしたね!」。すると、「あっ、どうもありがとうございます! またこれからもよろしくお願いします」とまあ律儀にご挨拶して下さった。 小劇団で鍛え抜かれた演技と舞台センスの良さ、そして、ずば抜けた身体能力の持ち主。主役の舞台や映画が続いても、謙虚な阿部サダヲさんに出会えて嬉しかった。また、竹内結子さんの、子供っぽい明るい笑顔も印象的だった。ようやく充足した気分で大阪天満宮を後にすることができた。

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  『アンナと過ごした4日間』 監督インタビュー
『アンナと過ごした4日間』 原題:Cztery noce z Anna
ゲスト: イエジー・スコリモフスキ監督


(2008年 フランス=ポーランド 1時間34分)
監督・脚本・製作:イエジー・スコリモフスキ
出演:アルトゥル・ステランコ、キンガ・プレイス、

10/31〜第七藝術劇場、11/14〜京都みなみ会館
12/5〜シネ・リーブル神戸

・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒ 
http://anna4.com/
〜ただ一途に見守り続ける愛〜

 
ポーランドの巨匠、71歳のイエジー・スコリモフスキ監督が、17年ぶりに撮った最新作。「ポーランドのゴダール」と異名をとり、ジャン=ピエール・レオー主演の『出発』('67)で青春の痛々しい衝動を描いてベルリン映画祭金熊賞を受賞。『早春』(‘71)の、少年の報われぬ初恋は、当時の映画ファンを熱狂させた。セリフや説明を極端なまでに省略し、美しい映像で綴る物語は、観客の心に強烈な印象を残す。『手を挙げろ』('67)がスターリン批判に当たるとして上映禁止処分を受け、以来、故国を離れ、欧州各地で活動し、近年は、アメリカを拠点に、俳優、画家としても豊かな才能を発揮。

  本作は、ポーランドの田舎の小さな村が舞台。病院の焼却場で働く中年の独身男レオンは、向かいの宿舎に住む看護師のアンナを想うあまり、自分の家の窓から双眼鏡でのぞき見を続けていた。祖母の死後、レオンは、アンナが紅茶に入れる砂糖に睡眠薬を混ぜ、夜半、アンナの部屋に忍び込むという大胆な行動に出る。レオンがアンナの部屋に通い、そこで過ごした4夜を描き、最後、レオンのあまりに純粋で一途な想いが胸に迫る傑作。この夏、キャンペーンのため監督が初めて来阪。合同取材の機会に恵まれたので詳細をご紹介したい。
――――女性を眠らせて部屋に浸入するという日本の事件をヒントに脚本を書かれたということですが、どんなところにひきつけられたのですか?

10年ほど前に、「ロサンゼルス・タイムズ」の「curiosity」(好奇心)というおもしろい出来事が書いてあるコラムの中の一つの文章を読んで、何かのストーリーの種になるかもしれないと思い、そのまま心にしまいこんでいました。
数年後、ポーランドで映画をつくらないかというオファーを受け、どんな映画でも、とにかくつくりたいものをつくってくれ、予算もすごく大きくはないが、つけてくれるということでしたので、ポーランドに戻ろうと決めました。

まず、ポーランドのどこに住むかということで、街は嫌で、街の外で暮らしたいと思い、森の奥の方のハンティング・ロッジ(猟のためのロッジ)を見つけ、そこに落ち着きました。その近くで映画をつくりたいと考え、ちょうど10キロほど離れた、ロッジに一番近い村を見つけ、ここを舞台にどんなストーリーなら映画にできるか考えた時、10年ほど前に見た文章を思い出したのです。

――――レオンはアンナの部屋で眠ってしまいますが、実際に日本で起きた事件でも犯人は眠ってしまいます。それはご存知でしたか?

記事ではなく、とても短い文章で読んだだけなので、詳細は知りませんでした。

――――レオンは、抑圧を受けているような感じの人物で、ポーランドが受けてきた歴史や、監督ご自身の体験にもどこか通じるように思えます。レオンに投影させたところはありますか?

もちろんレオンがポーランドの典型的な人物というわけではありません。私は、今まで、映画の中で、アウトサイダー的なキャラクターを描いてきました。なぜアウトサイダーに興味があるかというと、子供時代、第二次大戦中、ドイツ軍に家が爆撃され、私は瓦礫の中に埋まってしまいました。その時、母が自分の手で掘り出してくれたのですが、大変なショック状態で、顔も大怪我をして、かなり長い間しゃべることができませんでした。やっとしゃべれるようになった時には、ひどいどもりがありました。少年時代に自分自身、ハンディキャップを経験し、それを何とか克服しようとしてきたということで、―今でも多少どもったりしますが―、ほかの人と同じではなく、学校でもちょっと脇にいて中心にいない、それがどういうことなのかを、私自身の経験で知っています。私自身がある意味、アウトサイダーであり、アウトサイダーとしての気持ちがわかるわけです。それで、アウトサイダー的なキャラクターに非常に関心があります。

――――内気だったレオンが睡眠薬を入れたり、忍び込んだり、行動的になります。祖母の死がきっかけのように思えるのですが?

おっしゃるとおり、引き金になったのは祖母の死でした。レオンにとってとてもショックなことでしたから、祖母が死んだ後の彼の人生は、それ以前の人生とは違うわけです。そこで、彼は祖母の物を全部焼いてしまいます。それから、人生を自分の手に入れるための決心をします。彼が望んだのは、あのアンナの近くに行くことだったのです。

窓辺でアンナが使っていた砂糖の入っている瓶は、ある特定の銘柄の蜂蜜の瓶で、レオンはスーパーで同じものを探し、買い求め、中の蜂蜜を出してきれいに洗って…というふうに順番に進んでいきます。ですから、レオンが砂糖に混ぜて瓶に入れている粉が何かということは、祖母に睡眠薬をあげたときに薬をつぶしている音を聞いた観客なら、すぐ睡眠薬だと思い出すはずです。こうして、砂糖を入れ替えたりして、レオンの考えにしたがい、その求めるところへ、一つひとつ準備を進めていくということです。

――――祖母との関係はそこまで深く踏み込んで描かれていたのですね?

3つの重要なシーンがあります。1つめは、祖母が食事を終えた後、レオンは睡眠薬を飲むかどうか尋ね、祖母は初め断ってから、やはり飲むと言います。2つめは、祖母の死に大変ショックを受けたレオンの姿です。3つめは、裁判所のシーンで、裁判官が、レオンは祖母に育てられてきたが、祖母は心身に何か問題を抱えていたようなことを言います。この3つのシーンから二人の関係、二人の間にどういうことがあったのかを観客は理解できると思います。もう一つ、レオンが祖母の墓を訪れる、ほろ苦いユーモアを交えたシーンがありました。そこでレオンは、祖母が“いつもずっと”望んでいたとおり、自分は今、一人の女性と会っていると言うのです。

――――回想シーンは別にまとめて撮ったのですか?

回想シーンは先に撮りました。レイプシーンは戸外なので、最初の方、アンナ役の女優が撮影に加わった最初の日に撮りました。

看護師寮とレオンの家と二つの建物をセットとしてつくりましたが、室内のシーンについては、ここで撮影すると非常に寒くて俳優たちが凍え死んでしまうということで、地元のディスコを借りて、その中に二つの部屋の内装(インテリア)をつくって撮影しました。最初は、全部外で撮影しようと思っていたのですが、天候のためにできなかったので、室内の撮影は、スケジュールの最後の方で撮影しました。

――――脚本を書くに当たって、どのように準備されたのですか?

ポーランドで住む場所を見つけるのに大変時間がかかり、やっと落ち着いた時には、契約で、脚本を書き上げる締切まで6日しか残っていませんでした。6日間という時間的制約の中で、まず、新聞で見た一つの文章を思い出し、この近くで撮りたいということで場所が決まりました。
次に、物語の構造を決めようということで、いろいろな質問をつくり、それに対する答えをつくっていきました。たとえば、レオンはどういう人物で、アンナはどんな人か。レオンはアンナを手に入れることができないという設定ですから、アンナの方がレオンより社会的地位は上でなければなりません。アンナは看護師であり、レオンは病院の中でも、切断した手を焼くという一番底辺の仕事をしています。ですから、二人の間には非常に大きなギャップがあって、隔てられているということがあります。
続いて、そういう事実をどうアレンジしていくか、です。レオンは彼女を見つめている。でも彼女は見られていることに気づかない。このことをどういうふうに配置すれば、表現できるか。これを正確につくりあげていかなければなりません。
まず、病院ですが、この村に実際に病院はなかったのですが、もともと刑務所として建てられ、今は孤児院として使われている建物があり、ちょうど病院にみえるということで、これを使うことになりました。アンナの住んでいる看護師寮とレオンの家は、映画のセットとしてつくることにしました。

レオンの家は看護師寮の反対側80メートルくらいのところに建てました。寮とレオンの家との間には、果樹園のようなものがあり、いろいろ小さな木が植わっており、金網のフェンスもあります。アンナは寮とすぐ隣にある病院の間を行き来します。レオンは、病院から離れたところにある仕事場の焼却場と、家の間を行き来します。レオンが病院に行ったのはボスに呼ばれて行った1回だけで、レオンとアンナが偶然出会うことは、可能性としてとても低いぐらいに、レオンの家と看護師寮は離れているわけです。
映画の最初の方で、夜になって、レオンが斧を持って、フェンスをくぐり、アンナの部屋の方に歩いていきます。斧を持っているから、彼女を殺しに行くのじゃないかと観客は思うわけですね。でも、実際のところは、部屋を見るのに邪魔になる枝を切り落としただけです。映画全体がディテール(細かい部分)の積み重ねであり、ストーリーを構成するロジスティクス、位置関係などを基に綿密に組み立てられているのです。

――――奥さんのエヴァ・ピャスコフスカさんと一緒に脚本を書かれたということですが、どのように分担されたのですか?

 脚本については、まず最初に、事実関係を頭の中で決めていきます。ここで何が行われ、どんなふうに物語が進むかを1日かけて積み上げていきました。レオンの家と仕事場と、アンナの寮と病院の4か所でドラマが進行します。
もう一つ考えたことは、一体、幾晩なら、観客は耐えうるのか、ということです。10日では長過ぎる、5日でもまだ長過ぎる、4夜か3夜なら可能か、2晩、1晩では短過ぎる、ということで4日に決めました。それから、夜にどういうことが起こりうるかを考えました。看護服のボタンをつける、床を掃除する、ペディキュアをする、誕生パーティの後片付けをするというふうに、材料を集めていって、4つの夜に何がどういう順番でそれぞれ起こるのか、を考えていく作業をしました。
 そうして、まず私が各シーンのサマリーを手書きで書いていきます。それをエヴァに渡し、エヴァがコンピュータに自分が考えたことを付け加えながら入力し、つくったものを、私が見て、「これはいいね」、「これはだめだ」と言いながら書き込んで、また渡す、それをまたエヴァが・・という形で、一つのシーンを行ったり来たりしながら、つくりあげていきます。9割方OKになったら、次のシーンに移る、という形で順番にやっていき、最後に少し付け加えたりして6日の期限内で脚本を仕上げました。

――――建物の位置関係をきちんと決めてから撮影に入ったというのは興味深いですが、このやり方は今までの監督の脚本づくりではよくやられたことですか、それとも珍しいことですか?

普通は、先に脚本を書いてから、どこで撮るか場所を探すわけですけれども、今回は、私がポーランドに戻って住む場所を探して、そこに落ち着くのが最初でした。家の近所の村で撮影しようと決め、どういう建物にするか、まず、病院として使える建物を見つけました。それからこの壁ですね。これはもともとあった壁なんです。その前にバラックの看護師寮をセットとしてつくりました。だから、バラックを壊すと後ろの古い壁が現れるということで、映画の最後に古い壁が現れ、非常にパーフェクトな印象を与えることができたと思います。ですから、いろんな要素を計算した上で、脚本を書いたわけで、普段のやり方とは非常に違うやり方で今回は撮りました。

――――これからもその方法で撮っていくつもりですか?

すでに次回作について準備しているところで、全部、屋外、森の中で起こる作品になります。私の家の周りの森です(笑)。だから、今回のように組み立てていく必要がありません。シンプルなストーリーで、森の中で、一人の男が別の男を、まるで動物をハンティングするように、追いかける、というもので、タイトルも『The Essence Of Killing』と決まっています。

 
通訳さんが日本語に訳している、手持ち無沙汰な時間。監督は、メモ用紙に、看護師寮の向かいに少し離れてレオンの家を、寮のすぐ横に病院、病院の向かいにやや離れて焼却場と、4つの建物の位置関係をさらさらと鉛筆で書いてくれた。そして、映画の最初に、レオンが焼却場を出てベンチに座り、看護師が仕事を終えて病院から出て寮の方に歩いていくのを見ると、一緒に自分も家の方へ、平行に歩いていき、壁の小さな窓から寮をのぞく、というレオンの一連の動きを、生き生きと手振りを加えて説明してくださり、映画の場面がありありと目に浮かぶ、感動的な体験だった。

  説明をするよりも示唆するほうが好きなので、極力説明を排除する構成になったと語る監督。過去の回想シーンがフラッシュバックのように何度も挿入され、決してわかりやすい作品とはいえない。しかし、観客は、戸惑い、困惑しながらも、一つひとつの映像が持つインパクトに圧倒され、映画が終わってからも、ずっと心の中で反芻できるような深みに満ちている。

  ぜひ耳をすまし、目を凝らして監督の魔術に酔ってほしい。レオンの一人の女性を想い続ける一途な心の叫びに、最後、思わず呆然と立ちすくんでしまうにちがいない。

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  『風が強く吹いている』 合同記者会見
『風が強く吹いている』
ゲスト:小出恵介、大森寿美男監督


監督・脚本:大森寿美男 原作:三浦しおん (2009年 日本 2時間13分)
出演:小出恵介、林遣都、中村優一、ダンテ・カーヴァー、水沢エレナ、津川雅彦

2009年10月31日(土)〜梅田ピカデリー、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://www.kaze-movie.com/
〜襷(たすき)をつなぐ責任と信頼の連携プレーに感動!〜

 お正月の風物詩ともなっている箱根駅伝。鍛え抜かれた精鋭達が襷をつないでいく姿に、毎年胸を熱くしておられる方も多いだろう。本作は、様々な問題を抱え、果敢にも箱根駅伝に挑戦する10人の若者達の奮闘記を、イキのいい俳優陣のシャープな走りに加え、リアリティに拘ったキレのある演出で爽快さにあふれた作品となっている。
【STORY】
 寛政大学1回生の走(カケル)は、変な先輩・灰二(ハイジ)に食事付きで3万円という曰わくありげな青竹寮に連れてこられる。そこには、他に8人のこれまた変わった住人がいた。賄いから寮の管理までハイジが住人の面倒をみていたが、それにはハイジの密やかな目的があった。カケルが入ったことで10人になって、突然、「箱根駅伝を目指そう!」と爆弾発言!
 致命的怪我が元でスターダムから脱落したハイジと、同じくある事件が元で第一線から逸脱したカケル。この二人を中心にメンバー全員で、ハイジの夢のために箱根駅伝を目指すことになる。だが、交替要員なし、誰が欠けても成立しないレースに、果敢にも挑戦していく。

 主演の小出恵介さんは、映画のみならずTV・舞台と、最近特に存在感のある演技で大活躍。公開を前に、大森寿美男監督とキャンペーンのため来阪し、記者会見に応じてくれた。

――― 小出さんは、今回初主演ということですが、如何でしたか?
小出:今回初めて主演させて頂いて、取り組み方に変化が出てきたように思います。作品や役柄について深く考えるようになってきましたし、この作品が大きなキッカケになりました。

――― 仲間を束ねたり、素晴らしい走りをされてましたが、役作りについては?
小出:台本を頂いた時点で最後の本選の走りが大事だなと思いましたので、ここで観ておられる方の心を動かすようなものを伝えないといけません。そこで、走りに重点を置いて、フォームを始めこだわって練習しました。

――― 具体的にどんな練習をしたのですか?
小出:去年の夏に最初の合宿をして、4ヶ月位休んで冬に再開したのですが、その間も各々練習していました。私の場合は、去年の夏体調を崩していたので、冬に向けて徐々に体作りから始めていきました。
―――トレーナーがそれぞれに応じたトレーニングメニューを組まれたようですが、具体的には?
小出:高校卒業以来まともに運動していなかったので、腹筋背筋を鍛えてしっかりした軸をつくって、最初は2q〜3qから始めて、慣れてきたら5〜10qと増やしていきました。スピードを変えて走ったり、日々違うメニューをこなしていました。たまにみんなで練習した時は、追い込んだ練習をしたりしていました。毎日練習することを心掛けていました。

――― 林遣都さんを始め、共演者の間で競争心とか湧いてきましたか?
小出:私と違って何人かは以前からトレーニングしていて、彼等の中では少し競争心があったようです。一度、5000m走をやったのですが、その時はメラメラと競争心を燃やしていましたね〜(笑)
――― ハイジとカケルの精神的な愛の物語的な展開がありましたが、カケル役の林君とのコミュニケーションは如何でしたか?
小出:最初は喋らないタイプかなと思っていたらそんなこともなく、きつい練習や合宿を通して自然と仲良くなれたので、特別に気を遣うこともなく、とても気持ちのいい距離間で仲良くなれました。
監督:林君は俳優として小出君から吸収したものが多かったと思いますよ。映画の中のハイジとカケルのような関係で、随分変わっていったようです。ひとりのランナー=役者として感じるものがあったのでしょう。芝居に対するアプローチの仕方も変わってきましたし、現場でもとてもいい関係でしたよ。

――― 女性には入り込めない世界とは?
監督:一緒に走るという行為をする仲間は、一緒に走ってない者からすると入り込めないものがあると思います。
――― 箱根駅伝のシーンでこだわったことは?
小出:受け取ったタスキを絞ってパンツの中に入れるって意外と難しくて、中々上手くいかなかったですね。まったく練習していませんでしたので、盲点でした。
監督:先ずリアリティを出すことが大事。走りに説得力がないと何も伝わらないと思ったので、ランナーの姿だけは本物に近づけたかった。芝居より先ずランナーになって欲しいという意図を理解してくれた人だけが、この役を引き受けてくれたんです。彼等が本物のランナーになるのを、祈るような気持ちで待っていただけなんですけどね。
――― 実際の箱根駅伝を撮影したシーンも盛り込まれているようですが、気を遣った点は?
監督:映画では架空の大学なので、実際の箱根駅伝を取り入れていく上で、大学名が分かってしまうと困るので、その距離感を保ちながら撮影するのが難しかったですね。

――― 小出さん達の走り同様、大変キレのあるドラマ展開でしたが、編集の段階で苦労した点は?
監督:長めの脚本でしたので沢山カットしなきゃいけないかな、と思っていたのですが、思ったより尺が長くなく、テンポ良く出来ました。

――― 原作のハイジのイメージと違う点は? 
小出:台本もらってから原作を読んだのですが、ハイジはいろんな解釈ができる人物だと思ったので、原作のイメージにこだわらず、監督と一緒に創り上げていくしかないなと思いました。
――― この役で影響された点は?
小出:走りに関しては、リフレッシュできるということを知りました。撮影が終わってからも時々走っています。むしゃくしゃした時など走ると頭がスッキリするというものに出会えました。

――― 走ることは苦しいと思うのですが、どういう時点でスッキリと気持ち良く感じられたのですか?
小出:最初は苦しかったのですが、いろんな変化を実感するようになると楽しくなってきました。例えば、自分のピッチが分かってきたり、フォームが安定してきたりして、体つきも変わってくると嬉しくなってきて、いつの間にか、気持ち良く感じられるようになってきました。でも、気持ちいいくらいが適度で、無理せず持続することが大事だと思います。

――― 実際の箱根駅伝大学へ取材しに行ったのですか?
小出:いえ、特別には行ってませんが、高地トレーニングをした際に、たまたま近くで山梨学院大学が合宿をしてまして、銭湯へ行ったら会ったんですよ。そこで、走りや駅伝への取り組み方など少し話を聞きました。彼等も原作を読んでいて、「期待してます!頑張って下さい」などと言われました。

――― 小出さんは勿論ですが、林君の走りも素晴らしかったですね?
監督:
ランナーとして特別にトレーニングしてきた訳ではなかったようですが、スポーツものの作品に出演する機会が多かったので、基礎体力はできていたようです。コーチにも、長距離ランナーとしての素質を随分かわれていましたよ。丁度高校3年生で進学の時期だったので、コーチに「内の大学に来ないか」と本気でスカウトされてました。あのフォームは、現役のランナーが見ても惚れ惚れするような完璧なフォームだそうです。ただ、本人は走るのは嫌いだと言ってましたが(笑)

――― この役で一番気に入っているところは?
小出:器の大きいところですね。21〜22歳で、仲間のためにあそこまで尽くせる包容力の大きさや優しさなど、完璧なリーダー像だと思いました。

――― リーダーシップのある役を演じるのに、何を心掛けたのですか?
小出:ハイジは自分の気持ちや本音を吐き出すようなことはしない中で、心に何か陰を含んだような演技をするのに苦心しました。人間なので、ただ寛大で優しいだけではリアリティに欠けると思いました。
監督:最初は何を考えてるのかわからないような、まるで詐欺師のような怪しさを持ってほしいと。というのも、ハイジは元々完成された人物ではなく、挫折を味わって、這い上がってきて、自分の意志を持って今の心の広いハイジがいるという風に見せたかったので、小出君が演じることでハイジがより人間らしくなっていきましたね。

――― メッセージをお願いします。
監督:駅伝のタスキって、スポーツの枠を超えて、人と人との繋がりや絆のようなものを示唆してくれているように思います。人と人が助け合うだけでなく、お互いの力を引き出し合うような、そういった絆が生きていく上で大事なんじゃないかなあと。そういう思いを彼等が繋ぐタスキに懸けてみました。それと、彼等が目指すゴールとは、順位や勝敗ではなく、待っている人間にタスキを渡すことが、彼等が目指す境地なのではないかと考えます。
小出:家族や故郷、チームメイトなどいろんなものを背負って生きている、または、一番大事な時間を走ることに費やして自分の若い時の時間を犠牲している、それが走る姿に出ていて、そんな姿こそ、美しいし、カッコイイと思いますので、その点をよく見て欲しいですね。

 会見の始めに監督が挨拶しようとすると、「よっ!よ〜っ!」とかけ声をあげたり、「どういう立場なんでしょうね?」と、会見場の空気を和ませたり、なんとも明るいムードメーカーの小出さん。人を引き寄せる魅力に溢れているようだ。そんな彼が会見場を去り際に答えてくれたことがある。最近の急成長について、「舞台の経験は大きかったですね」と。中でも、昨年出演した蜷川幸雄演出の『から騒ぎ』の経験は、彼を俳優として未熟な点や可能性について多くを教えてくれたようだ。舞台のエキスパートとの共演は、それだけでも大きな刺激になる。来年も大阪での公演があるというから、今から楽しみでならない。
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  『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』 記者会見
『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』
〜清水崇×柳楽優弥が迷宮への扉を開く
                日本初の3D映画〜

ゲスト: 清水崇監督、柳楽優弥 蓮佛美沙子
(2009・日本/95分) 配給: アスミック・エース
監督: 清水崇   脚本: 保坂大輔
出演 柳楽優弥 蓮佛美沙子 勝地涼 前田愛 水野絵梨奈

10月17日(土)〜 梅田ブルク7 MOVIX堺 109シネマズHAT神戸ほかにて全国ロードショー
新作紹介⇒こちら
公式サイト⇒ http://3d-shock.asmik-ace.co.jp
 無声からトーキー、モノクロからカラー、そして、平面から立体へ。時代と共に進化を遂げてきた映画業界に第三の革命の波がやってきた。ハリウッドでは、2009年は“3D元年”と宣言され、アニメーションを含む数本の作品はすでに日本でも公開されている。なかでも、ロバート・ゼメキス監督の『クリスマス・キャロル』(11月14日公開)、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(12月18日公開)は、実写3D映画の変革の要になるだろう長編大作として大きな期待が寄せられる。その世界的な3Dブームの先陣を切ろうと、日本でもアジア初のデジタル3D映画が、『呪怨』の清水崇監督のもと製作された。
【STORY】
 久しぶりに幼なじみのケン、トモキ、リンが再会したある夜。10年前に遊園地のお化け屋敷で消息を絶ったユキが突然帰ってくる。3人はユキの実家を訪ねるも、妹のミユでさえ本当に姉なのか検討がつかない。その時、ユキが階段から転落して意識を失ってしまう。慌てた4人は近くの病院へ向かうが、到着した院内はなぜか無人で、次第に朽ち果てた廃墟へと様相を変えていく…。
 原案は、世界最大のおばけ屋敷としてギネスブックに認定される富士急ハイランドの人気アトラクション「戦慄迷宮」。行方不明になった幼なじみが突然姿を現したことを機に、10年前、事件が起こったお化け屋敷へ引き戻される若者たちの悲劇をサスペンスタッチで描く。メガホンを取った清水監督と、迷宮に導かれるケン役の柳楽優弥、物語のカギを握るユキを演じた蓮佛美沙子が揃って来阪し、インタビューに応じてくれた。
 今回、日本初となる3D映画のオファーを「今までの映画と方向性の違うもの」だったから受けたという監督は、意外にも戦慄迷宮の存在は知らなかったそうだ。「ストーリーは3Dということを念頭に置いて練っていきました。舞台となる戦慄迷宮にも何度も足を運んで、具体的にシーン構成を詰めていった。初めは、ケンとリンが付き合っていたり、子供たちも、ウサギも出てこない設定だったので、脚本は大きく変わりましたね」
 そうして完成した物語は、単なるホラーではなく、期待を裏切るスリラーとして観客に驚きと不安を与えるものとなった。幼なじみを置き去りにした過去の“罪悪感”と現在への“執着”が巧みに交わり、制御不能となった感情が“迷宮”の中で大きくうねりだす辺りは、さすが恐怖心理に長けた清水監督といったところ。そんな本作のなかでお気に入りのシーンを尋ねると、柳楽は「ケンが(ユキがお化け屋敷で落とした)ウサギのバッグを振っている場面。監督に「気を抜いて」って言われて演じたウサギのシーンが、監督も家族もお気に入りらしいので、僕もそこが好きです(笑)本当は、気を抜いている所より、最後に叫ぶシーンのように気合が入っている場面を好きって言われたら素直に嬉しいんですけどね」。一方、蓮佛は「最初の樹海のシーンから全編通して、画に奥行きがあって映像が本当にキレイだなって思いました。あと廊下の奥からウサギが飛んでくるシーン。怖いけどキレイだなって思う感覚が初めてだったので心に残っています。あそこは本当に3Dならではの場面で、2Dじゃ絶対味わえない体験ですね。」と映像の奥深さに感動したようす。
 ちなみに、監督いわく柳楽がウサギを振る場面は、映画『台風クラブ』でトイレに閉じ込められた若者たちが「ただいま」「おかえり」「ただいま」と繰り返し呟くシーンにインスパイアされたと言う。「あの年頃の意味の分からない気味の悪さが好きで、今回のスリラーでも出したかった。とり付かれている感じを表現するために、柳楽くんに何て言ったら伝わるのかなと考えて「気を抜いて」になった」と笑う。
 そんな監督から演技について要求されたことを聞くと、蓮佛は「行方不明になって10年ぶりに戻ってきたユキの寂しさを表現するために、落ち着きなく唇をさわるクセを付けてもらいました。あと、劇中のオルゴールにウサギの絵を描かせてもらいました。」と話す。それを受けて柳楽は「逆に、セリフを減らしてくださいってお願いしていました」とお茶目に回答。「僕は、セリフがない日は元気で、多い日は静かなんです。多かった日は、隣に松尾スズキさんがもいるから声も出せないし、心の中で「ちょっとやりづらいかな」って思ってました(笑)」それを聞いた監督が「その日は、是枝監督も陣中見舞いに来て、その上に石井聰亙監督まで遊びに来ていたから余計にね。そこまでくると僕もやりづらい(笑)。やりづらいので帰ってくださいとも言えないですし。にぎやかな現場でした。」と意外な裏話を披露した。
 さらに、ホラー映画に付き物の“裏話”と言えば、現場であった怖い体験だ。今回の映画は、実際のアトラクションを閉館後に使用するため、連日、真夜中に撮影が行われていた。セットにも血みどろのマネキンなどが、所狭しと並べられている。「実は、マネキンの中に本当の人間も紛れているんですが、そのために東京から呼んだエキストラが現場では1人多かったことがありました。25人のはずが26人になっていた。助監督と造形のチームがダブルで確認していたのに、撮影の段階でなぜか数が合わない…。」さらに蓮佛も「撮影の合間に戻ったロビーで、テレビの砂嵐のような音を聞きました。他にも人がいたのに、誰も聞こえなかったって言うから怖くて」と怪奇エピソードを教えてくれた。
 最後に3Dで見てみたい映画のリクエストを聞くと「『ダイ・ハード4』」と即答する柳楽。「映画のなかで投げた消火器を銃で撃つと大爆発が起こる場面がある。あそこが3Dになると迫力ありそう。」蓮佛は「飛び出て来るばかりだと飽きちゃうので、人間の心理描写を主としたものを3Dにしたら面白いかな。」そして、監督は「僕は『ナインハーフ』が3Dで見たい。背中を氷でなぞる場面とか触れたくなる感じがいいかも。大人の純愛映画とかも3Dで作って、3D映画がもっと当たり前になればいいですね」と、今後への理想と期待を語ってくれた。
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  『空気人形』 ARATAさんインタビュー
『空気人形』ARATAさんインタビュー
〜今年はチャレンジの年に。 苦手なことも何でもトライ!〜

(2009年 日本 2時間6分)
監督:是枝裕和   撮影:リー・ピンビン
出演:ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真里、丸山智己、オダギリ ジョー、富司純子

2009年10月3日(土)〜梅田ガーデンシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ
公式サイト⇒ http://www.kuuki-ningyo.com/index.html
 是枝監督作品によく登場する、心に空虚感を抱きながらも主体性を模索する人物像を具現化したようなARATAさん。そこには、都会的孤独の似合うクールさと優しさを併せ持つ不思議な雰囲気を感じさせるものがある。演技云々を超えた独特な存在感を持っているようだ。『空気人形』では、心を持った人形が恋心を寄せる純一を好演している。

――― この役を引き受けた理由は?
是枝監督に呼んで頂けたら、作品の内容や役柄に拘らず何でも参加したいと思っていました。是枝監督と一緒に映画作りができるということが重要なんです。今の僕が在るのは、是枝監督に初めて芝居を体験させて頂いたからだと思っています。

――― 本作の純一という役をどう解釈して演じたのですか?
純一という役柄は、『空気人形』の中の役柄だけではなく、是枝監督の『ワンダフルデイズ』や『ディスタンス』などで培ってきたものや考えてきたものなどをベースにして演じました。最初は、芝居が楽しくなってきている中で自分なりにできることをしたいとか、監督に自分の変化や成長のようなものを見てもらいたいなどと思っていたのですが、そんなことは全く不必要だということにすぐに気が付きました。
この純一という役は、『ワンダフルデイズ』の時のように、どこか心に空虚感を抱いて自分の想いを表現できずにいる人物と似ています。「空気人形だからではなく、心が空虚だからこそ違う人生を生きられる」ということを、監督は僕に求めていたような気がします。
人間って何だろう? という部分を表現できればいいのかな、ということに辿り着きました。


――― 是枝監督のことを心から信頼されているのですね?

若松孝二監督や堤幸彦監督作品の中の役とは全く違う人物像ですが、いつも是枝監督の演出をベースにどうふくらませていくのかと考えて演じています。

――― 今回の作品は、これまでの是枝監督作とは違うように感じましたが、現場ではどうだったんでしょうか?
監督がとても楽しんで撮っていましたね。本作のファンタジーの度合が、とてもいい意味でポップになっていました。監督の感覚が、次へ次へと向かって映画を撮っていたようです。
――― 今回、ペ・ドゥナさんやリー・ピンビン キャメラマンを迎えての製作でしたが、現場の雰囲気は如何でしたか?
監督がとても楽しそうに撮ってましたね。監督がノってる姿を見ていると、こちらも充実した気分になれました。

ペ・ドゥナでなければあの役はできなかったと思います。彼女が一番苦労していたようです。日本語で喋るだけでも大変なのに、難しい役をよくこなしていましたよ。日本の女優さんでは出来なかったでしょうね。

人形が心を持ったばかりに言葉を喋り出すシーンでも、周りはとても上手に演じていると思っても、彼女は満足しないんですよ。苦悩している彼女が、より一層人形らしく見せていました。
――― “コミュニケーションをとらない心地よさ”という監督の意図を面白く感じたのですが……?
是枝監督は、社会と距離を置いて冷静に見据えているように感じます。だからといって、冷めているのではなく、是枝監督ならではの目線で捉えたものを、そのまま表現しているからこそ、独特な世界観が生まれている。それは決して強いメッセージを打ち出すためでなく、純粋に心の中で生まれた感情をリアルな世界観として映像化しているのです。


――― 今度、岩松了さんのお芝居『マレーヒルの幻影』に出演されますが、本作の共演がキッカケですか?

10年近く前に現場でご一緒させて頂いて、「変なヤツだけど、気になる存在だな〜」なんて言われていたみたいですけど……(笑)。その後も、「舞台に興味はないの?」と聞かれたことがあったのですが、その頃は舞台へのビジョンが全くなくて、「ないですね〜」と答えていました。
本作のクランクアップ後、「今度芝居やるんだけど、誘ったらやるかい?」と言われ、今年こそ苦手なものをやろう!と思っていたので、グッドタイミングで「やります!」と即答しました。
――― 岩松さんも是枝監督も、ものごとの本質をダイレクトに描かず、その背後にあるものを大事にして演出しているタイプだと思いますが……?
その通りだと思います。言葉になっていない処にとても意味を込めています。「間(ま)」の部分に想いや心を込めていこうとする点が特徴だと思います。
――― 『ミラクル ラブ ストーリー』の首のない役はどうして受けられたのですか?
横浜監督からお話を頂いた時には、即答でした。「やります!こんな面白い役をありがとうございます」ってね。

――― 今年の助演男優賞最有力候補かも?(笑)
予定調和なことが一番苦手で、いい意味で裏切られる台本の方が、楽しくってしょうがない!「えっ、顔がない!? やるやる!」役者冥利に尽きるという感じです。

――― 今、何に一番興味を持っていますか?
歴史が好きです。歴史から学ぶものが多く、それを活かしてデザインすることでしょうか。

 最後に素の部分を見せてくれたARATAさん。決して饒舌な方ではないが、全面的に信頼を寄せる是枝監督への敬意や、俳優としての可能性を追求しようとする積極性など、穏やかな佇まいの奥にある、思慮深さを窺い知ることができた。ARATAさん独特の存在感は、孤独で空虚な日々を送る本作の登場人物とは対称的に、チャレンジ精神と人を理解しようとする洞察力にあるのかもしれない。

  「空気人形だからではなく、心が空虚だからこそ違う人生を生きられる」や「今年は苦手克服の年にしよう!」というARATAさんの言葉が、人との繋がりを避けてばかりいる人々の心にも、自分を変える起爆剤として届いてくれることを願う。

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  『空気人形』 舞台挨拶
『空気人形』舞台挨拶
ゲスト:是枝裕和監督、ペ・ドゥナ、ARATA

雨上がりの朝、空気人形に命が宿る。生まれたばかりの純粋な心と好奇心で、空気人形は、家の外へと歩き出す。都会に暮らすいろいろな人に出会い、レンタルビデオ店で働く青年、純一と恋に落ちる……。そんな不思議なラブ・ファンタジー。
 業田良家の短編漫画「ゴーダ哲学堂 空気人形」を、是枝裕和監督が映画化。心を持ってしまった空気人形という難しい役を演じたのは、韓国の人気実力派女優ペ・ドゥナさん。梅田ガーデンシネマで行われた特別試写会の上映後、ペ・ドゥナさんと、純一を演じたARATAさん、是枝監督が来場、舞台挨拶が行われました。満席の会場からの長い拍手の中、舞台に現れたペ・ドゥナさんは、すらりとした細身にすてきなワンピースで現れ、あまりの可愛らしさに観客もうっとり。最初の舞台挨拶で「こんばんは、ペ・ドゥナです。映画は楽しかったですか?」とゆっくりした日本語で話され、会場は熱い拍手に包まれた。

監督:去年の12月から東京で撮影し、寒かったですが、幸せな現場で、スタッフ・キャストとも充実した時間を過ごしました。映画の中にもそんな時間が映っていたんじゃないかと思います。

ペ・ドゥナ:本当に一生懸命、撮影に臨みました。尊敬する是枝監督とARATAさんと映画をつくることができ、私としても誇りをもった作品です。つらいことや胸の痛いこともありましたが、人形として生きることができて幸せでした。

ARATA:僕自身、とても思い入れのある作品です。今、観終わって、皆さんの心の中に生まれた感情を大切に持って帰っていただければうれしいです。

――――監督からみたペ・ドゥナさんの魅力は?
監督:これはペ・ドゥナさんでなかったら成立しなかったお話です。これほどキャストと役が一体になっているというのは幸せな映画だと思います。「この役、ほかの人の方がよかったんじゃない」と言われるのは悲しいじゃないですか。そういうことは全くないという自信が僕にありますし、それは、撮影を始めてすぐにスタッフ全員が思ったことです。ビニールの人形が心を持って動き出すなんて話を信じられるのも、ペ・ドゥナさんのおかげです。演技をするというより、ちゃんとそこに人形として存在し、人形を生きてくれたことが、フィルムに刻まれているのを観ていて、僕は本当にうれしかったです。

ペ・ドゥナさんは本当に可愛いですし、おもしろいですし、現場でも我慢強いですし、いろいろ魅力はたくさんありますが、何よりもちゃんと人形として生きてくれたことに感謝しています。

――――ペ・ドゥナさんは、現場で監督のことを「完璧、天才」と言っていたそうですが、どんなところでそう思ったのですか?  

ペ・ドゥナ:はい、いつも撮影現場で「完璧、天才」と言っていました(笑)。
作品しか観ていない時の、監督に対する私の印象は、非常にシリアスな方で、いつも現場では深刻な態度で撮影に臨んでいらっしゃると思っていました。けれども、監督ご自身の、映画に対する情熱や世界観、哲学もすばらしいですし、演出力も完璧、プラス人柄や、スタッフへの愛情にも毎日、感動させられました。俳優と一緒に映画をつくっている感じがしましたし、監督が現場で俳優からインスピレーションを受け、私たちも監督に質問をし、私たちと呼吸をあわせながら、つくっていこうとしているところにいつも感激していました。

――――ARATAさんは、監督とは『ワンダフルライフ』('98)以来の長いおつきあいですが、どんな存在ですか?
ARATA:僕が初めて映画づくりの現場に役者として入った時の監督で、自分のベースとなっている方であり、特別の存在ですね。

監督:二人ともそうだよね。僕も『ワンダフルライフ』は、初めてのオリジナル作品なので、同時にデビューしたような感じで、監督と役者という意識よりは、不思議な距離感なんですよね。この10年、離れていた時も長いんですが、なんとなくお互いに時々会っては、今考えてることや、次の作品とかについての話も続けながら、互いに成長してきたので、こうやって、同じ映画で舞台に立つのは感慨深いですね。

――――最後に観客に向けてのメッセージを
監督:ラブ・ファンタジーという誘い文句に誘われて来た方は思ったよりもシリアスなシーンもあったと思うんですよね。だけど、僕がARATAさんたちと一緒に考えていたのは、人形が人間になって心を持つ、その「心を持つ」ということは、すてきなこともあるけど、すてきでないこともたくさん経験します。周りにいる人間として、それを避けている人たちを描いています。人形は、心をもったからこそ、つらいことも含め、できるだけ正面から受け止めて体験するつもりで描きこみました。観終わったあとの感情が、どういうところに皆さんの中で着地するのか、明日起きた時に、どんなふうにこの映画が思い返されるのか、そんなに単純な感情ではないような気がします。単純じゃないことにこそ大事なことがあるのではと考えて撮った映画ですので、持ち帰っていただいて、長くそばにおいてもらえたらと思います。

 最後にメッセージを求められ、少し考え込んだ後、「観に来てくださって、ありがとうございました」と滑らかな日本語で挨拶されたペ・ドゥナさん。撮影が終わり、韓国に戻って半年以上経つというのに、きちんと日本語を話そうとしてくれたのは、何よりの日本のファンへのプレゼント。監督がペ・ドゥナさんあっての作品と激賞されたとおり、短い舞台挨拶の中からも、ペ・ドゥナさん映画に対する真剣で、まっすぐな姿勢が伝わってきた。

  映画のテーマにも触れた監督の最後のメッセージは奥深い。最後は悲しい空に“希望”の光が優しく差し込む。空気を、息を吹き入れられることで膨らむ空気人形が生きた軌跡をぜひ映画館で感じてほしい。

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  『未来の食卓』 監督インタビュー
『未来の食卓』
〜“安全な食生活”、未来のために今できること〜

(2008年 フランス 1時間52分)
監督:ジャン=ポール・ジョー
出演:エドゥアール・ショーレ、ペリコ・ルガッス

2009年9月19日〜第七藝術劇場、近日〜京都シネマ、神戸アートビレッジセンター
公式サイト⇒ http://www.uplink.co.jp/shokutaku/
作品紹介 ⇒ こちら

レッドカーペットでのダンディーなジャン=ポール・ジョー監督
 監督のジャン=ポール・ジョー氏は、自らも癌を患い、生死をさまよう程の重病だったという。なぜ自分が癌を発病したのか? その疑問を解明するために、食の安全性と農業の現状にカメラを向けることになる。それは監督の決死の製作だったに違いないのだが、作品はガブリエル・ヤレドの優美な音楽と豊かさを感じさせる映像美で、いたって穏やかなドキュメンタリー映画に仕上がっている。美しい田園風景の中に潜在する農薬汚染や環境汚染を、南仏の小さな村の取り組みを中心に、詳細なデータと将来像を示しながら見えない恐怖を捉えて説得力がある。

――― 農業国フランスでこのような農薬汚染の実態を描いて、クレームはなかったのですか? 何が一番問題でしたか?
いいえ、ありませんでした。一番の問題は、資金調達と配給会社を探すことでした。誰もこんなに成功するとは思わなかったのです。


――― バルジャック村の人々の反応は?
村で開催した試写では約700人の方に見てもらいました。子供達の素直な反応と共に、親達もとても満足してくれて、給食に切り替える人が増えてきました。
(フランスでは、給食を食べるか弁当持参かを選択できるらしい)
――― 給食のシーンで、食材別に添加物の具体的数値が表示されていましたが、リサーチはどのようにされたのですか?
3人の研究者が協力してくれました。その中のフランソワ・エイユレットが2冊の研究データ本を出版していますが、いずれも企業からのクレームや訴訟などはありません。その数値が否定しようがない正しいものだということです。

――― 製作のきっかけは、ご自身の病気と関係していますか?
はい。癌の検査結果を待っている時、もし生き延びられたら、この問題にカメラを向けようと思ったのです。

――― そうした監督の決死の思いが込められて製作された訳ですが、今後のドキュメンタリーの在り方や行方についてどう思われますか?
映画はとても大事な役割を持っていると思います。その理由は、この地球上で生きている人すべてが「ACTOR(俳優)=動く人」であるのですから、一般の人々がフィルムに映ることがあってもいいのでは? さらに、環境をテーマとした映画は重要になってくるでしょう。1956年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジャック・イヴ=クストー監督の『沈黙の世界』が初めての環境をテーマにした作品といえるでしょう。近年では、アル・ゴア氏の『不都合な真実』が重要な役割を果たしていますね。
――― 作曲家ガブリエル・ヤレド氏へのアプローチはどのように?
プロデューサーでもある妻のベアトリスが、先ず彼に手紙を書きました。そして、編集中の3時間ものを見てもらって、GOサインを出してもらったんです。彼は電波障害に関心を持っていて、環境問題に対する意識がとても高かったのです。

――― 今後の映画製作のご予定は?

今年の春から撮影に入り、2010年の終わりに終了予定です。カナダのモントリオール近郊を舞台にして、自然破壊の現状を捉えるつもりです。
 本作は、2009年フランス映画祭で上映され、監督とプロデューサーでもある奥様とご一緒にインタビューに応えて下さった。美男美女のカップルで驚いたが、取材中病弱な監督を心配そうに見守っておられた奥様の表情が印象的だった。カナダでの撮影は、より厳しい自然との格闘になりそうで、心からご健闘をお祈りしたい。
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  『悪夢のエレベーター』
『悪夢のエレベーター』
〜ワケあり男女4人の密室劇を描くサスペンス・コメディ〜

(2009年 日本 1時間45分)配給 日活
監督・脚本 堀部圭亮
出演 内野聖陽 佐津川愛美 モト冬樹 斎藤工 大堀こういち 芦名星 本上まなみ

10月10日(土)〜シネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋、新宿ミラノ3ほか全国ロードショー
関西では、10月17日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて公開!

公式サイト⇒ http://www.akumu11.jp/

【STORY】
 ある日の深夜。頭の痛みで目が覚めると小川順は、エレベーターの中にいた。同乗していた怪しい男によると、エレベーターは突然急降下してから停止したままだという。さらに、非常ボタンは故障、携帯電話も不通、防犯カメラも作動していない。妻の出産に駆けつける途中だった小川は、絶望に襲われるが…。

 愛人宅から出産間近の妻のもとへ急ぐ男・順(斎藤工)、空き巣狙いでマンションを訪れた関西弁のヤクザ・三郎(内野聖陽)、ジョギングに出かける途中だったジャージ姿の超能力者・牧原(モト冬樹)、イジメを苦に屋上から飛び降りる予定のゴスロリ少女・カオル(佐津川愛美)。同じエレベーターに乗り合わせた奇妙な4人が繰り広げるウソと本音の密室エンタテインメント。そもそもなぜこの4人は出会ったのか。どうして非常ボタンは故障しているのか―?エレベーターが再び動き出した時、絡み合う謎が悪夢へと変わる!

 『悪夢のドライブ』『悪夢の観覧車』と併せて累計50万部突破した木下半太の“悪夢”シリーズ第一弾を映画化。メガホンを取るのは、本作が長編監督デビューとなる俳優の堀部圭亮。公開に先がけ監督と関西ヤクザを演じた内野聖陽が来阪し、インタビューを行った。
 俳優以外にも『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』他、バラエティ番組の構成作家としての顔をもち、幅広いフィールドで活躍する堀部は「自分の基本は俳優」としながらも「一度、全体に自分の手を入れたモノを作ることが夢だった」と監督デビューについて語る。

 そんな堀部の監督ぶりについて内野は「ビジョンがハッキリしていて、やりやすい」と絶賛。「本当に事細かく演出されていました。時には、演じて見せる瞬間も(笑)それが、俳優陣が困るくらいすごく面白い芝居なんですよ。でも、おかげで監督の求めているものが手に取るように分かりました。モト冬樹さんとも素敵な監督だって話していたんです。」さらに、出演の決め手は「監督の脚本」と即答。「シナリオの構成力がすごく面白いと思った。それに、密室劇という設定にも惹かれました。極限状態に置かれている人間には、いつも興味がありますね。」

 途中、密室&極限のなかに置かれた4人の物語は、怒涛の急展開を迎える。だが、そのほとんどはネタバレ厳禁。多くを語れない分、そこまでの見せ方が重要になってくる。「ポスターにも“怒濤のどんでん返し!”と書いてあるので、初めからそういう目で見られていますよね。でも、どうストーリーが転がって行くにしても“間引き”するのだけはやめようと思いました。ミステリーの要素もあるので、見終わったあとお客さんに「あそこでアレを出さなかったら、そりゃ犯人誰だか分からないよ。卑怯だよね。」って文句を言われるのは嫌だったんです(笑)。だから、多少バレるかなと思っても、情報は隠さずどんどん出して行こうと。そこは構成作家としての意地ですね。」
 その緻密なこだわりは、撮影時にも発揮された。俳優が“乗る”エレベーターは「扉以外の側壁は3枚に分けてはずせて、全方向から撮影できる機動性の高いセット」を用いて「なるべく狭さを重視した」という。それに対し内野は「監督はカメラを入れる前から、四角四面の中に僕らを閉じ込めていた」と笑う。しかし、何日にも渡る入念なリハーサルは「頭で考えるより体感できるから、俳優としては嬉しいこと。おかげでいい空気感を保てた。常に箱の中にいたので、自分が映っていなくても相手の役者にプレッシャーを与えたりしていた」と振り返る。

 「ほとんどの撮影現場では、カメラを引くと2人いる設定なんだけど、一方の役者を撮る場合、もう1人は大抵カメラの後ろで休んでいる。その時、演じる役者はどこを見て話すかというと、助監督の“拳”だったりする(笑)。シリアスな芝居をするのに、相手が助監督の拳って…。なので、今回は皆さんに映らないけど居て下さいって呼びかけました。あの狭さでカメラも照明もあるのに、中腰で相手の役者の目だけが見える状態で頑張ってくれた」 その俳優目線での心遣いに内野も賛同。「相手の瞳を見て芝居をすれば、こちらにも“揺らぎ”が出るんだけど、拳だとなかなか出しにくい。だから常に映ってないときも本気の芝居をしていました。そういう方が予想もしない演技が出てくる。そのライブ感が伝われば」

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