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★恋の罪

(C) 2011「恋の罪」製作委員会
『恋の罪』

(2011 日本 2時間24分)(R18+)
監督:園子温
出演:水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉(アンジャッシュ)、津田寛治、二階堂智、小林竜樹、五辻真吾、深水元基、内田慈、町田マリー、岩松了、大方斐紗子

2011年11月12日(土)〜 よりテアトル新宿、シネ・リーブル梅田
他にて 公開
・水野美紀記者会見⇒ こちら
・公式サイト⇒
  http://www.koi-tumi.com

 人間の、とりわけ女の本性をえぐりだした恐るべき映画だ。映画の一場面のようにはらわたごとぶちまけたようなえげつなさ。「冷たい熱帯魚」に続く園子温作品は現代の生の様相を丸ごと見せる。こんなに本音をぶちまけていいのか、と思うほど。建前やうわ辺の映画など拒否していても、あまりにも本音を曝け出されたら気恥ずかしい気もする。かつて、今村昌平が「にっぽん昆虫記」や「赤い殺意」で左幸子、春川ますみを使って女の本性を曝け出した時と同じ感覚か。

 90年代、東京・渋谷のラブホテル街で起きた実在の殺人事件をもとに、子温ワールドが全開。ラブホテルにいるところを呼び出された刑事和子(水野美紀)は猟奇的な殺人事件にのめり込んでいく…。
 全裸も厭わず体を張った3人の女優がみんなハンパじゃない。刑事・和子は仕事と幸せな家庭に充足しているはずなのに、夫の友人である愛人との関係を断てない。事件現場には得意のアクション女優風に颯爽と登場しながら、変態チックな男の要求に易々と従ってしまう。「なぜ女は表と裏の顔を持つのか」という主題に水野美紀がハマる。
 人気小説家と玉の輿結婚した清楚な主婦いずみ(神楽坂恵)はもっとすごい。昼間他所で仕事する夫にいつも欲求不満で、スーパーでバイトするうち怪しげなモデル業者に誘われ、写真がビデオに、やがてAVになるのは時間の問題だった。 いずみに“夜の道”を教えるのが大学のエリート助教授・美津子(冨樫真)も相当なタマ。渋谷のホテル街で立ちんぼ指南、“金をもらう”の指導もする。いずみは美津子に案内されてデリヘル店「魔女っこクラブ」に登録、美津子の“チェンジ”でいずみが出かけた先にいたのは堅物でピュアと信じていた小説家の夫だった……。
 誰も彼もみんな表の顔で生き、裏の顔で羽目をはずす。もとより女だけじゃない。男だって変わらないはずだが、女の方が裏表や変貌度の大きさが目立つのだろう。
美津子の母親まで登場して猟奇殺人犯は誰かとなると、しかとは分からない。首を切断、マネキンに接ぎ木するという犬神家の一族もどきの殺人なのだが、変態的な女の寄り集まりであれだけみんな狂気に陥ったら誰が犯人かはすでに本筋ではなくなっている。
 多くの庶民は本音を敢えてオブラートに包んでうまーく社会と折り合いを付けている。そんな“格好つけ”を廃した園子温は確かに本音のぶつけ合いが抜群に面白い。が、毎日、生活内で本音をぶつけることが出来ればストレスはないかも知れないが、カタストロフィーも早い。どこで折り合いをつけるか、ではないか、と余計な心配までしてしまった。
(安永 五郎)ページトップへ
   
             
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