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【シネルフル】
HP管理者:

河田 充規
河田 真喜子
原田 灯子
藤崎 栄伸
篠原 あゆみ

〒542-0081
大阪市中央区南船場4-4-3
心斎橋東急ビル9F
(CBカレッジ心斎橋校内)
cine1789@yahoo.co.jp


新作映画
 デトロイト・メタル・シティ
『デトロイト・メタル・シティ』
〜話題騒然のデスメタルギャグ漫画「DMC」を
               松山ケンイチ主演で映画化〜


監督 李闘士男   (2008年 日本 1時間44分)
原作 若杉公徳
出演 松山ケンイチ、加藤ローサ、秋山竜次、細田よしひこ、松雪泰子
8/23〜 TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ伊丹 他

公式ホームページ→
 純朴な青年・根岸崇一は、オシャレなポップミュージシャンを夢見て大分から上京する。だが、ふとしたことから悪魔系デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」のギター兼ボーカル、ヨハネ・クラウザーU世として活躍するハメに。彼は理想と現実とのギャップに苦悩するが、そんな想いとは裏腹に、クラウザーさんはカリスマ的存在となっていき…。
 熱狂的な支持を集める、若杉公徳原作のデスメタルギャグ漫画を映画化。平凡な青年がデスメタルバンドのボーカルとして思わぬ才能を開花させていく様を、可笑しくもほろ苦く描く。
誰もが“なりたい自分”になれるわけじゃない。どんなに頑張ってみても、認めてもらえないことだってある。根岸が水たまりに映ったクラウザー姿の自分を見て泣き出すシーンは、彼がまっすぐで心の優しい人物だからこそ、いたたまれない気持ちになってしまう。
 しかし、どんな立場からでも誰かに「夢」を与えられることに気付いたとき、根岸はクラウザーとしての自分を受け入れる。クラウザーさんを必要としてくれるファンがいる限り、その「使命」を果たそうと。そんな彼を温かく見守り、背中をそっと押してくれる母親とのエピソードが感動的だ。
 根岸=クラウザーさんを演じるのは『デスノート』シリーズの松山ケンイチ。内股で体をクネクネさせながら歌う根岸の“キモカワイイ”お茶目さや、クラウザーさんの強烈なビジュアルと破壊的な言動を、持ち前の変幻自在な魅力で見事モノにしている。また、舌でタバコを消し、卑猥な言葉を連発、意見しようものなら強烈なキックをお見舞い…という、クレイジー極まりない事務所の女社長を演じた松雪泰子の壊れっぷりも見モノだ。
 クライマックスでは、ブラックメタル界の帝王として「KISS」のジーン・シモンズ本人が登場し、クラウザーさんと対決するド迫力のライブシーンが楽しめる。映画であることを忘れてしまうほどの圧倒的な臨場感と熱気を、ぜひ劇場で味わってほしい! 
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 ラストゲーム 最後の早慶戦
『ラストゲーム 最後の早慶戦』
〜戦地に赴く若者たちに贈られた試合 人生最後の野球〜


(2008年 日本 1時間36分)
監督:神山征二郎
出演:渡辺大、柄本佑、原田佳奈、柄本明、藤田まこと、富司純子、石坂浩二
8月23日〜 テアトル梅田、京都シネマ、シネカノン神戸ほか
公式ホームページ→
 1943年春、太平洋戦争の真っただ中、野球は敵国アメリカの国技と、東京六大学野球は文部省から中止を命じられる。秋には、大学生らの徴兵猶予が停止され、冬には軍に入営が決まる。出征を目前に控えた学生たちに、最後の思い出に早慶戦をやらせてやりたいという早大野球部顧問、飛田らの情熱が結実。数々の困難を乗り越え、ついに試合の実現にこぎつける。

 本作は、実話をもとにしており、早慶戦の開催に至るまでの飛田の奮闘振りを描きつつ、主人公、早大野球部野手、戸田順治の家族の物語を中心に据えた。順治の母を演じる富司純子が、我が子を戦争に送り出さなければならない、一人の平凡な母親の、やり場のない悲しみを、迫真の演技で伝える。山本圭演じる父親は、既に出征した長男を誇りに思い、次男の順治を、非常時に野球に興じるなんてと叱咤する。それでも、胸の内では、戦局に不安を隠せず、飛田に本音を打ち明ける。お国のためという言葉の裏に隠した、親としての本音がにじみだし、忘れがたい。
 “一球入魂”という言葉を生み、学生野球の父といわれる実在の人物、飛田穂州(とびたすいしゅう)を、柄本明が熱演。出陣のその日まで野球を続けるという強い信念のもと、何としても試合を実現させたいという気骨ある姿に、胸が熱くなる。早大総長を演じた藤田まこと、慶応義塾の塾長を演じた石坂浩二とも、登場場面はわずかながら、存在感のある演技を披露し、ドラマを盛り上げる。

 念願の試合が始まると、飛田は、最後まで全力を尽くしてプレーするよう選手たちを諭す。そして、試合が終わった時、勝ち負け以前に、試合ができたことの喜びが球場全体にあふれだす。選手たちだけでなく、その家族、教師、観客たちが感慨を共有する一体感はみどころ。ぜひスクリーンで観て、熱い思いを感じてほしい。

  試合から数日後、明治神宮外苑競技場で出陣学徒壮行会が行われ、学生たちは戦地に向かうことになる。そして、映画は太平洋戦争の記録映像を映し出す。砲弾に当たって宙を舞いながら落ちていくゼロ戦。爆発し、炎上する軍艦。戦況を伝えるニュースとして客観的に観られるはずの記録映像が、物語の最後に置かれることで、そこに乗っている兵隊一人ひとりの命が、まさに失われてゆくことを伝える、重みのあるものとして観客の胸に迫ってくる。

  本作は、戦争映画でもあり、青春映画でもある。若者にとっても、戦争を体験した世代にとっても、それぞれの年代で感じとるものがあるにちがいない。野球に熱中する爽やかな青春を描きつつ、徴兵を控えた学生たちの不安な思いや、息子や教え子を戦場に送る家族や教師の苦汁の思いを伝え、若い命を無残に奪ってゆく戦争の不条理、愚かさを観る者の心に深く刻みつける力作となった。  

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 落語娘
『落語娘』
〜背伸びしつつも、懸命に落語に打ち込む姿に好感〜

(2007年 日本 1時間49分)
監督:中原俊
出演:ミムラ、津川雅彦、益岡徹、伊藤かずえ、森本亮治、利重剛
8月23日〜 シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、9月20日〜京都シネマほか

公式ホームページ→
 
 伝統という重い看板を引っさげ、まだまだ男社会の落語界で、真打ち目指してひたむきに芸に励む香須美と、自由奔放で業界のはみだし者、三々亭(さんざんてい)平左師匠との間に生まれる、ほのぼのとした師弟愛が心にしみる。
 香須美は入門して3年目とはいえ、客入れの太鼓、お茶くみ、着替えの手伝いと、前座として雑用に追われる毎日。あこがれの三松家柿紅(みまつやしこう)師匠からは女性ということで弟子入りを断られ、拾ってくれた平左師匠も、いまや、ある不祥事がもとで謹慎中の身。ろくに稽古をつけてくれないどころか、弟子の香須美から金まで借りる始末。前途多難で、なかなか将来の展望がみえない現実に、香須美のストレスと焦りも溜まるばかり。そんな折、平左師匠が一発逆転を期して、禁断の落語「緋扇長屋」という、演じた噺家が次々に命を落とす、いわくつきの噺に挑戦すると宣言。師匠の身を案じ、反対する香須美。果たして平左師匠は最後まで演じきることができるのか。
 香須美を演じるミムラが、初めての落語に挑戦。落語といえば、声色はもちろん細かな仕草まで気を配って何人もの人物を演じ分ける高度な芸。一つひとつの噺を必死で会得し、役に向き合うミムラの真剣さは、そのまま、男社会で差別にもめげず、“好き”の情熱一筋で夢に向かって突き進む香須美の一途さとなって、伝わってくる。駆け出しで未熟者ながらも、賢明さゆえに、ミムラの演じる落語はどこか清清しく、心に残る。公園で子供たちを相手に「寿限無」を演じる姿、喜怒哀楽たっぷりの豊かな表情は微笑ましく、思わず応援したくなるほど。
 軽薄でちゃらんぽらんに見えて、反骨心と洞察力を内に秘めた平左師匠を、津川雅彦が、どこか憎めない、愛嬌ある人物として好演。仁侠映画、時代劇と長年の経験で鍛えた滑舌のよさはさすが。いざ本番、舞台に上がった時の変わりよう、高座でみせる、活きのいい、立て板に水のような見事な語り口はみどころ。
 今、落語が人気だ。落語を題材とした映画も続いている。昨年公開の『しゃべれども しゃべれども』が粒ぞろえの個性豊かな役者たちによる美しく整った合奏曲なら、こちらは一風変わった二重奏。初めは、まるで違うメロディを勝手に奏でていた香須美と平左師匠が、いつしか心地よい和音を生みだしてゆく。寄席での前座の仕事をリアルに再現しつつ、楽屋でのセクハラなどは少し誇張して描き、ファンタジーのような色づけも。アンバランスな二人の二重奏、あなたの心に一体どう響くだろうか。
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 ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン
『ホウ・シャオシェン のレッド・バルーン』
〜青い空を漂う風船に宿る“魂”〜

(2007年 フランス 1時間53分)
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ジュリエット・ビノシュ、シモン・イテアニュ、イポリット・ジラルド、ソン・ファン、ルイーズ・マルゴラン
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 パリの空をゆっくりと浮遊する赤い風船の美しさに思わず息を飲んだ。台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督が、名作『赤い風船』(1956年)と監督のアルベール・ラモリスにオマージュを捧げた本作は、オルセー美術館が映画制作に全面協力する、開館20周年プロジェクトの第1回作品。パリを舞台に一つの家族の日常を淡々と切り取ってゆく。50年以上前にパリで撮影された映画『赤い風船』に映っていたあの“風船”が、何十年もの時空を超えて、再びパリの空に戻ってきたかのように見えて、胸が熱くなった。

 息子のシモンと二人で暮らす人形劇師スザンヌの元に、新しいベビーシッターとして中国の留学生ソンがやってくる。同じアパートに住む友人とのトラブル、新作劇の準備、別居中の夫とのいさかいの中で、疲れと不安を溜め込んでゆくスザンヌ。ラモリス監督の『赤い風船』を愛し、カメラ片手に映画を学ぶ女子学生のソン。物静かで穏やかなソンと、中国の人形劇に惹かれるスザンヌとの間に生まれる信頼と友情。スザンヌを気遣うソンとシモンの優しさが、スザンヌの苛立ちをゆっくりと解きほぐしてゆく。
 東京を舞台に『珈琲時光』を撮ったホウ・シャオシェン監督。本作では、バスティーユ広場、リュクサンブール公園と、古くからの名所をさりげなく映像におさめつつも、シモンの学校への行き帰りの道中や、スザンヌが働く劇場、二人が暮らすアパートの周辺と、パリの何気ない街角の風景を美しくとらえてゆく。
 頑固で、感情の起伏が激しく、つい周りに感情をぶつけてしまうスザンヌをジュリエット・ビノシュが好演。仕事と日々の雑事に忙殺されながらも、毎日を懸命に、たくましく生きていく姿が、等身大で伝わる。都会でシングルマザーとして孤独に生きてゆく辛さと寂しさが、映像から静かに滲み出してくるようで、共感を呼ぶ。

  ラモリス監督の『赤い風船』は、街灯にひっかかった赤い風船を見つけるシーンから始まる。少年が街灯によじ登り、風船を手にしてからは、風船は、少年からつかず離れず、いつもその傍らに寄り添う。少年と風船の仲睦まじい友情の物語でもあった。本作も同じようなシーンから始まる。しかし、人通りの多い駅前で、少年の「降りて来い」との言葉に、風船は降りてくるわけもなく、遥か遠くから少年を見つめるばかり。50年前のパリに比べれば、現代のパリでは、人々は忙しく行き交い、親密さを失ってしまい、たとえ風船が降りてきても、その存在を受け入れるほどの余裕は、道行く人にはないのかもしれない。

  とはいえ、シモンやスザンヌたちを暖かく、優しく見守っているかのように、いつも空をふわりふわりと漂っていく風船のありようは、ピアノやシャンソンの柔らかな音楽とともに、心地よく観客の心の中に流れ込んでくる。とりわけ、最後に、オルセー美術館の天窓から、館内にいるシモン達子供らをのぞいていた風船が、次第に遠ざかり、静かに青空へとのぼってゆく、その動きの美しさと、それを追うカメラの凄さには心奪われた。

  本作で、風船が登場するシーンは多くはない。しかし、パリの空を漂う風船の姿は、きっと観る者の心に、その美しさとともに深く刻み付けられるにちがいない。
(伊藤 久美子)ページトップへ
 ジャージの二人
『ジャージの二人』
〜避暑地ではジャージを、心には余裕を〜

(2008・日本/1時間33分)
監督・脚本 中村義洋
原作 長嶋有
出演 堺雅人 鮎川誠 水野美紀 田中あさみ ダンカン 
8/16〜梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸

公式ホームページ→
 嫁に浮気された無職の息子と3度目の離婚危機に瀕しているカメラマンのオヤジ。ちょっとワケありの現実を背負う親子が、北軽井沢で「何もしない」夏休みを過ごす姿を描いたスロームービー。そのテンポのゆるさと少しの哀愁を感じさせる演出はまるで男性版『かもめ食堂』だ。オヤジ演じる鮎川誠の飄々とした存在感は、もたいまさこ&片桐はいりに匹敵するインパクトだし、冴える小ネタも全体に瑞々しい癒しがあるところも似ている。夏バテをリフレッシュするにはピッタリの映画だ。
(中西 奈津子)ページトップへ
 アクロス・ザ・ユニバース
『アクロス・ザ・ユニバース』 原題『Across The Universe』
〜独創的な映像イメージでビートルズの名曲をアレンジ〜

(2007年 アメリカ 2時間11分)
監督:ジュリー・テイモア  
出演:エヴァン・レイチェル・ウッド、ジム・スタージェス、ジョー・アンダーソン
8/23〜 梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネカノン神戸

公式ホームページ→
 「ライオン・キング」の舞台演出でブロードウェイ・ミュージカルに新風を吹き込み、監督を務めた映画『フリーダ』でもその才能を鮮やかに発揮したジュリー・テイモア監督が、ビートルズのナンバー33曲を用いたミュージカル映画に挑戦。まだ見ぬ父親を捜しにリバプールからアメリカへやって来た青年・ジュードを主人公に、若者たちの恋と青春が描かれる。
 非常にシンプルな物語であるにもかかわらずぐいぐいと引き込まれてしまうのは、本作が、ただビートルズの魅力をなぞって曲を散りばめただけのものではなく、ベトナム戦争やドラッグ・カルチャーなどで混沌としていた1960年代のアメリカを背景に、ビートルズの詞の世界に込められた精神を登場人物たちの心情として物語ることで歌に新たな「魂」が宿っているからだ。
 例えば、ジュードの親友マックスが徴兵検査所へ行ったときに流れる『I Want You(She’s So Heavy)』。このシーンで彼に「おまえが欲しい」と呼びかける者、そして“彼女”とは「誰」なのか。激しいラブソングの歌詞を、アメリカという国への皮肉を込めた痛烈なセリフとして生まれ変わらせたテイモア監督の発想の豊かさと洞察力の深さには脱帽である。また、エメラルド・グリーンの水中をジュードや恋人のルーシーたちが漂う幻想的なシーンや、“イチゴ爆弾”がはじけ、血のように滴り落ちるシーンなど独創的な映像美も見所のひとつだ。
 吹き替えなしで歌っているキャスト陣の声も素晴らしい。特にジュードを演じたジム・スタージェスの繊細でいてどこか色気のある歌声には、ハートを撃ち抜かれっぱなしだった。そのほか、歌手のセディ役ディナ・ヒュークスのパワフルな歌唱力、U2のボノやジョー・コッカーらゴージャスなカメオ出演者が聴かせてくれるヴォーカルも刺激的で心酔してしまう。
 クライマックスでは、ビートルズがアップル本社ビルの屋上で行った伝説のライブが再現され、時代の波に翻弄されてバラバラになってしまったジュードとルーシー、その仲間たちが再会を果たす。そして、彼らが最後に歌うのは…

 “ラブ&ピース”のメッセージが、時代を越えて荒んだ現代とリンクしたとき、単なるノスタルジーに終わらない「祈り」にも似た想いが込みあげ、胸が震えた。
(篠原 あゆみ)ページトップへ
 SEX AND THE CITY
『SEX AND THE CITY』
〜瞬きなしの、女に恋する144分!〜

(2008年 アメリカ 2時間24分)
監督・脚本:マイケル・パトリック・キング 
出演:サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソン
8/23〜TOHOシネマズ(梅田・なんば・二条)、OSシネマズミント神戸 
他 全国ロードショー

公式ホームページ→
 女性として人として、何度でもノンストップで見たい作品。話題沸騰のTVドラマから4年、あのSACTがさらなる興奮と感動をひっさげて、待望のスクリーンデビュー! 選ばれし言葉でのナレーションとスタイリッシュな映像で、開演早々に観客の心を奪う。キャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロット―彼女達のゴージャスなライフスタイルは勿論、あなたを虜にするのは、共感してしまう本音で語られる恋と仕事と友情のエトセトラ。
 コラムニストのキャリーは3冊のベストセラー本を出し、「VOGUE」にも寄稿、今や名実共に注目の人だ。くっついたり離れたりを繰り返してきたミスター・ビッグとも、ついに結婚か!? 彼女の結婚話を軸に、妊娠や離婚の危機など女性の様々なライフイベントに焦点を当て、男性の本音も余すところなく織り交ぜた十二分の見応え。友達、恋人、家族と何かでつまずいた時、独りよがりを止めて、ラベルを取っ払い、ただ「私」と「あなた」の関係に立ち戻ってみることの重要さに気づかせてくれる。
 キャリーだけでも80着以上に及ぶ衣装は、最新コレクションが目白押しで、瞬きをすれば見逃してしまうほど。特に、ウェディングドレスの贅沢さは“ならでは”!
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 ハンコック
『ハンコック』
〜ニュー・ヒーローには隠された秘密が…〜

(2008年 アメリカ 1時間32分)
監督:ピーター・バーグ
出演:ウィル・スミス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン、ジェイ・ヘッド
8/30(土)〜梅田ピカデリー、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー

公式ホームページ→
 他愛のないアクション・コメディのようだが,ウィル・スミスとシャーリーズ・セロンがキャスティングされている。やはりこの2人はただ者ではない。ウィル・スミス扮するハンコックは,弾丸を跳ね返し,高速で走る列車を止めてしまうという,強靱な肉体を持つ不死身の存在だ。今日もまた,武装強盗を素手で片付けてしまう。が,その方法が投げやりな感じで荒っぽく,街に大損害を与えてしまい,市民からはブーイングを浴びている。
 PR会社で働くレイ(ジェイソン・ベイトマン)は,ハンコックに命を救われたことから,彼を市民から愛されるスーパーヒーローに生まれ変わらせようとする。レイの妻メアリーに扮するのがシャーリーズ・セロンだ。彼女は,レイがハンコックを自宅に連れてきたとき,世間の嫌われ者がやって来たという表情を見せる。が,ハンコックがイメージチェンジに成功したときも,その表情を変えない。そして,物語は予想外の展開を始める。
 メアリーの表情のナゾが明らかになるとき,ハンコックのやけっぱちな行動の原因も分かってくる。彼は,ほんの80年ほど前から,それ以前の記憶を失い,天涯孤独を感じ,しかも自分が歳を取らないことを知り,自棄的になっていた。それにしても,ハンコックとメアリーは,過去に何か関係があったのか,また一体どんな関係にあったのか。それが分かったときに初めて,メアリーがハンコックを見る目に込められた深い意味が見えてくる。
 映画ではよくコミックヒーローが登場するが,ハンコックのパワーやキャラはオリジナルだそうだ。宇宙から来たわけでもなく,遺伝子の異変でもない。神から特別な能力を与えられた存在として描かれる。荒削りなストーリー展開だが,異形の哀しみを基調とした映画だと言えるだろう。その意味でダークなファンタジーにもなり得たと思うが,そこはやはりウィル・スミス,本作はあくまでもアクション・コメディのスタイルを貫いていく。
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 あの日の指輪を待つきみへ
『あの日の指輪を待つきみへ』
〜埋もれていた運命の愛が50年の時を経て再び輝く〜

(2007年 イギリス/カナダ/アメリカ 1時間58分)
監督:リチャード・アッテンボロー
出演:シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、ミーシャ・バートン
 8/2〜テアトル梅田、シネ・リーブル神戸
 8/23〜 京都シネマ

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 第二次世界大戦中に戦死した米兵の結婚指輪が、50年後に北アイルランドで発見されたという実話を基に『ガンジー』の名匠リチャード・アッテンボロー監督が映画化した壮大な愛のドラマ。

  1991年、アメリカ。夫を亡くしたばかりの年老いた女性・エセルのもとに、アイルランドから1本の報せが入る。エセルの名前が刻まれた指輪がベルファストの丘で発見されたというのだ。それは、彼女が50年前に恋に落ちた男性と永遠の愛を誓った結婚指輪だった。その恋人が戦死して以来誰にも心を開かずに生きてきたエセルは、過去と向き合うため、アイルランドへと向かう…。
 エセルは恋人・テディが戦死したとき、彼との想い出の品を壁の中に閉じ込めて“封印”する。そしてそのまま、自らの心にも誰も開けることができないほど固く蓋をしてしまう。その後、テディの親友チャックと結婚し、娘を一人授かるも、うまく愛情を注げない。長年自分を支え続けてくれた夫の死にも涙ひとつ見せず「私の人生は21歳で終わったのよ。今さら何を嘆くの?」と娘に言い放つ。そんな風に言われては、娘は自分の存在そのものを否定されたと感じるだろうし、母親に強い不信感を募らせるのは当然だ。
 しかし、エセルを演じるシャーリー・マクレーンの仏頂面に宿る深い悲しみと、喪失感漂う佇まいが“女の哀愁”を感じさせ、心をわしづかみにされてしまう。また、彼女を想い続けながらも、その不器用さゆえ“見守る”ことしかできない男ジャックを演じたクリストファー・プラマーの存在感も光る。
 どんなに辛い出来事でも、受け止めなければ前に進めない。現実からは、逃げも隠れもできない。エセルが、ようやく過去という暗く長いトンネルを自力で抜け出そうとして辿り着いた胸を揺さぶる「真実」が、彼女にもう一度“生きる”勇気を与える。ラストのエセルの表情は、新たな人生の扉を開ける「鍵」はきっと誰もが持っているという、温かい希望を感じさせてくれる。
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 ちいさな恋のものがたり
『ちいさな恋のものがたり』
〜渋谷の交差点に懐かしさが浮かび上がる〜


(2008年 日本 2時間21分)
監督:萩原将司
出演:小野真弓、田中幸太朗、宮地真緒、波岡一喜
8/30〜(大阪九条)シネ・ヌーヴォX にて公開
公式ホームページ→
 きらめく大都会・東京の中で,人々の欲望にもまれながらも,自分らしさを失わないで生きていくことの難しさを感じる。自分をさらけ出すと,周囲の人々との間に摩擦が生じるし,自分を抑えすぎると,その窮屈さに息苦しくなってしまう。どちらにしても,好ましいことではない。本作では,良太と美沙が微妙なバランスを保ちながら生活している。2人は,バンド仲間でデビューを目指しているが,近頃何となく行き詰まりを感じている。
 彼らと袂を分かった修は,社会人として何事も割り切らなければ生きていけないことを覚えるが,上手くいかないこともある。有希は,亡くなった母親が残した40万円と一枚の写真を頼りに父親を探しに上京する。彼女は,東京でどんな体験をすることになるのだろうか。また,渋谷で生まれ育った高校生の清花は,卒業を控えて漠然とした不安に包まれているようだ。それぞれの人生が東京で交錯する模様を手際よく織り上げた手腕が見事だ。
 街全体が大きな生き物のようにうごめいているが,少し外れると閑静な場所が広がっている。東京の中でも動と静が截然と棲み分けされているのが渋谷という街ではないだろうか。この街では色んな人たちが生活している。それぞれの人生が渋谷の交差点ですれ違う。そこで何らかの繋がりが生まれることもある。その中で,不器用にしか生きられない人や何かを求めて模索している人に焦点を当てたことにより,本作は共感度の高い映画となった。
 大人になったら,分かることもあれば,分からなくなることもある。大人になることは,ある意味で子供の頃の自分を失うことでもある。そして,自分は小さな頃になりたかった大人になっているのだろうか,と自問自答する。本作は,渋谷の交差点を中心に描かれた心のふるさとの物語である。心のどこかに隠してしまっていた過去の自分との対話を思い起こさせる。ラストでは未来を見据えたような迫力のライブシーンが活力を与えてくれる。
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 敵こそ、我が友
『敵こそ,我が友〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜』
〜バルビーの人生から見えてくるものは…〜

(2007年 フランス 1時間30分)
監督:ケヴィン・マクドナルド
ナレーション:アンドレ・デュソリエ

8月30日(土)〜テアトル梅田、今秋〜第七藝術劇場、京都シネマ、神戸アートビレッジセンター

公式ホームページ→
 ケヴィン・マクドナルドは,アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝いた「ブラック・セプテンバー」(1999年)の監督でもある。これは,1972年のミュンヘン・オリンピックでイスラエル選手団が襲撃された事件を描いた作品だった。本作では,一人のナチス戦犯を取り上げている。描く対象は異なるが,多様な関係者へのインタビューと豊富なアーカイブ映像に基づく手法は共通する。バランスの取れた迫真性に富むドキュメンタリーだ。
 彼自身がインタビュアーに「ヨーロッパではクラウス・バルビーだった」と答えるシーンから始まる。ナチスからボリビアに至るまでの彼の足跡が,テンポの良いモンタージュで端的に示される。そして,被害者らから拷問の様子が生々しく語られ,第二次大戦後フランスで英雄視されたレジスタンス活動家ジャン・ムーランの逮捕と死に言及された後,リヨン郊外の村の孤児院から44人のユダヤ人の子供らが収容所に送られたことが示される。
 本作は,フランスでのバルビー裁判をクライマックスとして,そこに至る過程をたどっていく。一面的な観点に偏っていないため,かえって深みが感じられる。たとえば,バルビーは,娘からは優しく思いやりのある父親だと言われる。裁判シーンでは,被害者らによって非人道性が糾弾されるが,ベトナムのアメリカ将校やアルジェリアのフランス将校と同じであり,怪物ではなく悲劇的な現代人の象徴だという,弁護人の意見も紹介される。
 また,第二次大戦後,アメリカ陸軍情報部が共産主義の台頭を阻止するためにバルビーを雇う。彼は,1951年にボリビアへ脱出するが,チェ・ゲバラとの戦いや1980年の軍事クーデターに関わることになる。ここでも,彼の背後に見え隠れするのが,南米に反共の砦を築こうとしたアメリカの影である。本作は,バルビーという個人を描きながら,時代や社会が怪物を作り出す怖さや,国際社会における国家権力の非情さを浮き彫りにしている。
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 ダークナイト
『ダークナイト』
〜バットマン・シリーズ最高傑作、遂に日本上陸!〜

(2008年アメリカ 2時間32分)
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ほか
8/9(土)〜 梅田ピカデリー他全国ロードショー

公式ホームページ→
 この濃密さは只事ではない。質・量ともに圧倒されること請け合いの152分がここにある。

 前作『バットマン ビギンズ』でシリーズ初登板を果たしたクリストファー・ノーラン監督は、これまでのティム・バートン監督やジョエル・シューマカー監督が創り出したポップでカラフルな世界観から一転、リアリズムを重視したハードなアプローチによってバットマン誕生秘話を描き、実に新鮮であったが、続けてメガホンを取った3年振りの続編である本作は、そのスタイルを更に推し進めてみせた。その中で、第二班監督を置かず、常に自らが現場に立って全ての演出を施したというノーランの姿勢は、歴代バットマン映画史上初めて、タイトルから『バットマン』の冠を外すという大いなる挑戦に秘められた大いなる自信と覚悟の表れと言える。そういった文字通り入魂の姿勢が、シリーズ最高と断言できる傑作を生み出したのだ。
 本作を巡る最も大きな話題は、バットマンの宿敵であるジョーカーを演じた故ヒース・レジャーの名演であろう。早くも本年度のアカデミー賞助演男優賞最有力候補の呼び声が高いそうだが、なるほど、実際にその演技を目の当たりにすると大いに頷ける。その圧倒的な存在感は特筆物で、彼が画面に登場する度に、場に危険な魅力が充満する。怪物的なまでの恐ろしさと、それゆえに目を離すことが出来ない誘惑。ジャック・ニコルソンによる有名な怪演を凌駕する凄まじさは、大げさではなく神話と呼べる領域に達している。
 しかし、ここで真に重要なのは、本作の見どころが、ヒース・レジャー最期の姿という一点に集約されないところだ。彼の素晴らしい演技は、確かに本作の成功にとってかけがえのないものだが、それはあくまで本作を構成するピースの1つ。ジョーカーの強烈なインパクトを活かしながらも、そこだけがいびつに浮かび上がることのないドラマ全体の強度に驚いた。苦悩のヒーロー・バットマンを演じるクリスチャン・ベールを始め、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケインといった、続投組の英国実力派俳優の安定力や、今回初出演のアーロン・エッカート、マギー・ギレンホールもそれぞれ素晴らしい演技を見せる。また、手に汗握るアクション、心が凍りつくようなサスペンス、隙の無い人間模様といった、エンターテインメント要素をこれでもかとばかりに盛り込みながら、きっちりと1本のドラマとしてまとめきった語りの上手さにも思わず舌を巻いた。

 演出・脚本・演技が三位一体となった深みある超一級エンターテインメント大作だ。必見!!
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 赤んぼ少女
『赤んぼ少女』
〜楳図かずおファン必見! 遂に映画化成功作現る!!〜
(2008年 日本 1時間44分 R-15指定作品)
監督:山口雄大
出演:水沢奈子、野口五郎、斎藤工、板尾創路、堀部圭亮、亜沙美、生田悦子、浅野温子
8/23(土)〜 大阪:シネ・リーブル梅田にてレイトショー
9月予定   兵庫:シネ・リーブル神戸にてレイトショー
※<タマ3(タマミ)割引>=3人で鑑賞すると、当日料金1,800円が1,000円に!!

公式ホームページ→
 楳図かずおマンガの映画化作品中、最高の出来だと断言してしまおう! これまでに、幾多の映画人が挑戦しては失敗作の烙印を押され続けてきたため、<楳図マンガの映画化作品に成功作なし>というのが定説となっていたものだ。
 それにしても、ファン心理とはつくづく奇妙なものだ。映画化されると聞けば、その度に諦めと言って良いほどの大きな不安を抱きながらも、その一方で胸の高鳴りを抑えきれず、いそいそと劇場に足を運んでしまう。その結果、大抵は苦笑いする羽目になるのだが、やがてはそれさえ楽しみに思えて来るほど。そこにあるのは本物のファンの姿・本物の愛情だ。
 とは言え、満足出来る作品であって欲しいという期待は常にある。「ひょっとしたら……」「今度こそ!」という希望が常に原動力となっているのだ。そして、その希望が、遂にしっかり形となって届けられたのだから、喜びもひとしおというものだ。

  本作は、楳図ファンの間でも特に人気の高い『赤ん坊少女』(本作の公開に併せて『赤んぼ少女』として復刻出版)の初映画化作品。
 昭和30年代という時代設定もそのままに、オート三輪を登場させるなど、細部の時代考証も抜かりがない上、ヒロインを演じる水沢奈子のレトロ感漂う面立ちや、野口五郎・生田悦子・浅野温子といった経験豊かな助演陣の好演・怪演も、原作のイメージを損なうことがなく、好印象。また、楳図作品の中でも屈指の名キャラクターとして知られる悲哀のモンスター・ヒロイン“タマミ”も、原作そのままの姿で登場する上、期待以上の見せ場を用意しており、観客を飽きさせることがない。
 加えて、原作を大切にしているとは言っても、その表面をなぞるだけではなく、『シャイニング』『ブレイン・デッド』『恐怖の振子』『吸血の群れ』などといった過去のホラー映画に対するオマージュを散りばめたり、CG技術を効果的かつ違和感なく取り入れるなどして、映画版ならではの味わいを意欲的に追求していることにも感心した。

  限られた予算の中で、より良い作品を作ろうとする努力が、これまでの不名誉なジンクスを見事に吹き飛ばした面白怖い快作だ!
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 たみおのしあわせ
『たみおのしあわせ』
〜父と息子は新しい世界へ踏み出せるか?〜
       スパークする愛,ゆらゆら燃え続ける愛…


(2007年 日本 1時間58分)
監督・脚本:岩松了
出演:オダギリジョー、麻生久美子、原田芳雄、大竹しのぶ、小林薫、石田えり
8月2日(土)〜梅田ガーデンシネマ、シネカノン神戸、
8/9〜京都シネマ

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 父親と息子の関係を軸として,男女の愛や結婚について語っていく。その語り口は舞台と基本的には変わらない。ありふれた日常を描いているはずだが,どこかで小さなズレが生じ,少しずつそれが大きくなっていく。現実をちょっと違った角度で眺めると,そこにフシギ世界が見えてくる。舞台の岩松ワールドに魅せられた人はもちろん,新しい世界をちょっと覗いてみようという人も,本作のラストはきっと忘れられないものとなるだろう。
 オダギリジョーが冴えない息子たみおを好演している。本当に冴えない風情を全身から漂わせている。彼は,父親と2人暮らしをしているが,この2人の関係が実にいい。こんなに微笑ましい父子の情景をスクリーンで見るのは何年振りだろうかと思うほどの懐かしさが感じられる。特に,父親に扮した原田芳雄が,酒を飲みながら息子と話しているうち,子供のように拗ねるシーンには,絶妙の味わいがある。そんな2人が女性に翻弄される。
 父親は,息子が結婚して独立することを望んでいるが,息子に対する甘えがあって,今一つ吹っ切れないものがあるようだ。たみおは,瞳と婚約する。瞳に扮した麻生久美子は,たみおの父親と世間一般の感覚から少々外れた接し方をする女性をごく普通の存在感で好演し,映画に奥行きを与えている。一方,息子は,父親と瞳の微妙な雰囲気に気付かないまま,父親と職場の女性との交際を影ながら応援しており,その様子がまた微笑ましい。
 ところで,男女の愛に結婚と言えば,マイク・ニコルズ監督の「卒業」が思い浮かぶ。登場人物がスクリーンから飛び出してくるようなラストシーンが圧巻だった。岩松了もまた同じようなことをやってみたかったのだろうか。全く違った展開の末に,ラストで行き着くところは同じ…と思ったものの,やはり一筋縄ではいかない。ラストシーンでは,それまで見え隠れしていた母親の姿が見えたような気がして,ほんわかとした感触が残った。
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 カンフー・ダンク!
『カンフー・ダンク!』
〜生身×CG×ワイヤー・アクション! 
           この夏、大穴の面白さ!!〜

(2008年 台湾/香港/中国 1時間45分)
監督:チュー・イェンピン
出演:ジェイ・チョウ、シャーリーン・チョイ、チェン・ボーリン、バロン・チェン、 ン・マンタ、アンソニー・ウォン、エリック・ツァン、ほか
8/16(土)〜 梅田ブルク7 なんばパークスシネマ MOVIX京都 神戸国際松竹、他にて全国ロードショー
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 「サッカーの次はバスケ? それってなんだか安直じゃない?」と、それほど期待せずに見たらこれが嬉しい誤算! これだから映画は実際に見てみないとわからない!! 超大作・話題作がひしめくこの夏、これぞ大穴と思える面白さに満ちた超一級のスポーツ・アクション・ムービーだ。
 【カンフー学校で育った孤児の青年ファンが、ひょんなことからバスケット・ボールの花形選手として注目を集めることに!】というストーリーは単純明快。序盤でファンがいかにカンフーの天才であるかを、マフィアたちとの格闘シーンで存分に見せつけておき、そこからバスケット・ボールへと見せ場をスライドさせていくのだが、その過程には説得力があり、テンポも良い。この小気味良さが成功の秘訣だ。アクション監督を『少林サッカー』や『どろろ』で知られるチン・シウトンが担当。<生身×CG×ワイヤー・アクション>を組み合わせた見事なアクション・シーンは必見だ。
 主演は、台湾出身のジェイ・チョウ。作曲家として活躍した後、自身も2000年に1stアルバムをリリースし、歌手デビュー。これまでにリリースした8枚のアルバムは、累計で1,400万枚を超えるセールスを記録。『頭文字D』『王妃の紋章』で映画俳優として、そして、8月日本公開予定の『言えない秘密』では監督業にも乗り出し、マルチな才能を存分に発揮している。今やアジアNO.1のスーパー・スターと言ってよい。彼が歌う主題歌もその勢いを感じさせてHOT&COOL!
 ジェイ・チョウを筆頭とするイケメン・スターの競演は女性ファンにとってたまらないところ。更に、エリック・ツァンやアンソニー・ウォンといったベテランが脇をがっしり固め、存在感を存分に発揮。大迫力のアクション・シーンと合わせ映画ファンや熱い男性ファンも大満足すること間違いなしだ。
 黄色い歓声と野太い雄叫びのウェーブの中で鑑賞したい痛快な1作。
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 闇の子供たち
『闇の子供たち』
〜もう知らないとはいえない。富める国、日本の罪〜

監督・脚本:阪本順治、(2008年 日本 2時間18分)
出演:江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市
8月2日(土)〜テアトル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネカノン神戸

公式ホームページ→
 小さな少女が横たわり、こちらを見つめている。無垢で美しい大きな瞳。まるで、日本人一人ひとりのありようを問いかけているようにもみえる。

  阪本順治監督渾身の力作。東南アジアで現実に行われている幼児売買春、臓器売買をテーマにした梁石日の同名長編小説を、監督自ら脚本。タイの子供達が、貧しさゆえに取引され、大人達の欲望の対象に、富める者の犠牲になっている実態を描き出す。タイでの現地ロケを敢行、役者達も熱演。目をそらすことのできない、リアリティあふれる力強い社会派ドラマが生まれた。
 タイ在住の新聞記者、南部は、日本人の子供のために臓器移植手術が行われることを知る。幼い子供達を救おうと、NGO職員の音羽らとともに奔走。幼児売春、臓器売買と、闇で行われているマーケットの実態を明らかにしようとする。

 農村には貧困が広がり、人身売買は社会構造化している。たとえ一人の子供の命救うことができても、また別の子供が犠牲となる。南部達の試みは微力だ。しかし何かせずにはいられない。
 音羽は、子供達を助けたい一心で、後先を考えず感情のまま行動し、後で、その思慮のなさを南部から責められる。それでも、自分の信じるままに進み、無謀にもみえる行為が、懸命さゆえに結果へとつながり、地に足のついたものとなってゆく。

  原作とは異なる結末を加えた監督の思いを背負うのが、南部を演じる江口洋介。数々の脅しにも屈せず、取材を貫く潔さ。命をかけて挑む毅然たる覚悟と内に秘めた深い思い。「日本人の自分自身にはね返ってくるような作品にしたい、他人事と決着してしまうような善悪で割り切れるような犯罪ものにしたくない」という監督の思いどおり、ずっしり心に迫ってくる。南部の心の中の闇、罪悪感をほのめかし、児童買春する者、加害者を生み出す日本や先進国の社会のありようを問いかける。これは東南アジアという異国の地の物語ではない。まさに日本の私たち一人ひとりにつきつけられた物語だ。

  幾つもの謎を残し、観客の想像に委ねた結末は、強烈な印象を残す。生きた子供達から臓器移植をするという、想像しただけで気が重くなりそうな、重いテーマに果敢に挑み、問題を投げかけた阪本監督の勇気を讃えたい。
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 インクレディブル・ハルク

『インクレディブル・ハルク』
〜悲劇のモンスター・ヒーロー<超人ハルク>再臨!〜

(2008年アメリカ 1時間52分)
監督:ルイ・レテリエ
出演:エドワード・ノートン、リヴ・タイラー、ティム・ロス、ティム・ブレイク・ネルソン、
ウイリアム・ハート
8/1(金・映画の日)〜 TOHOシネマズ梅田 敷島シネポップ TOHOシネマズ二条 三宮シネフェニックス  ほかにて全国一斉ロードショー

公式ホームページ→

 前作から5年、スタッフ・キャストを一新した続編が遂に公開となる。
原作は、『スパイダーマン』『アイアンマン』などを生み出したマーベル・コミックの中でも、特に根強い人気を誇る『超人ハルク』。

 【青年ブルース・バナーは、極秘軍事実験の失敗から、心拍数が200を超えると緑色の肌と怪力を持つ<超人ハルク>に変身してしまうように……】 自分の意志とは関係なく変身してしまう上、その間の記憶も残らないというのが持ち味だ。
 このハルク。実はイギリス人作家が生み出した、有名な2大モンスターを基に生み出されたキャラクターだという。1つはメアリー・シェリーが創造した<フランケンシュタインの怪物>。もう1つはロバート・ルイス・スティーヴンソンが創造した<ジキル&ハイド>。

 おまけにもう1つ。自制の効かないハルクだが、恋人のベティだけは守ろうとする。これは名作『キング・コング』からだ。こちらも、メインの原作者であるエドガー・ウォレスはやっぱりイギリス人。
 そして、監督はフランス人のルイ・レテリエ。『トランス・ポーター』シリーズでブレイクした俊英だけに、アクション演出はお手の物。些か都合の良すぎる展開は気になるが、見せずに引っ張るだけ引っ張っておいて、ここぞとなれば一気に見せ付けるあたりは実に上手い! 原産地はイギリス、加工はアメリカの原作を、フランスの調理人が見事に料理してみせた。
 主演はエドワード・ノートン。当初、そのヒョロっとしたルックスに違和感があったが、そこは演技派の面目躍如。単純なマッチョ・ヒーローではなく、悲劇のモンスター・ヒーローの苦悩を見事に表現している。また、ハルクを追う側に、クセモノのティム・ロス、ベテランのウイリアム・ハートという絶妙の配役。
  大音量&大音響で味わってこそ、映画館ならではの迫力をお楽しみあれ!
【P.S.】
最後にニンマリのワンシーンが用意されているので、そちらもお見逃しなく!
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