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【シネルフル】
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河田 充規
河田 真喜子
原田 灯子
藤崎 栄伸
篠原 あゆみ

〒542-0081
大阪市中央区南船場4-4-3
心斎橋東急ビル9F
(CBカレッジ心斎橋校内)
cine1789@yahoo.co.jp


新作映画
 オーケストラの向こう側
『オーケストラの向こう側 フィラデルフィア管弦楽団の秘密』
〜映画の楽しみを倍増させてくれる音楽!〜

(2004年 アメリカ 1時間30分)
監督:ダニエル・アンカー
出演:フィラデルフィア管弦楽団の105人のメンバーたち
7/26(土)〜第七藝術劇場にて公開

公式ホームページ→
 岩城宏之著「フィルハーモニーの風景」(岩波新書)は,指揮者とオーケストラとの水面下でのせめぎ合いを垣間見せてくれる。オーケストラそのものが一つの生き物のように活動している。その様子が目に浮かぶように描写されていて面白い。オーケストラの内側といった感じの読み物だった。これに対し,本作は,オーケストラの向こう側に存在する個々の楽員に焦点を当て,そこからオーケストラという全体を振り返る構成になっている。
 映画はいきなり「音楽とは何か?」という問いから始まる。万人に共通する答えがあるわけではなく,個々人によって様々な答えがあるだろう。また,クラシックだけが音楽ではないし,オーケストラに所属する者だけが演奏家であるわけでもない。楽員がジャズを楽しんだりサルサのバンドに参加したりする。路上でアコーディオン奏者が演奏する音楽に楽員が聴き入っているシーンが印象に残る。音楽にはあらゆる意味で境界は存在しない。
 また,雑音と音楽の違いは何かについて話すシーンがあった。意図に基づいた音だという意見に対し,救急車のサイレンも意図に基づく音ではないかという意見が出される。雑音と音楽の限界のあいまいさが窺われる。それがストラヴィンスキーに絡めて話されることに,思わず納得させられてしまう。更に,共感覚の持主,たとえば音という聴覚刺激に対して視覚的に色を感じる人がいる。その視覚イメージが映像で示されていたのも面白い。
 技術と感動とは違うものだという鋭い指摘がされる。確かに音楽だけでなく演劇でも同じことがいえる。プロの職人がそつなく仕事をこなしているという感じを受ける舞台がある。巧いとは思うが,そこには心に響くものがないのだ。オーケストラが見事に音を合わせているだけでは感動は生まれない。楽員それぞれが個性を発揮したのではまとまらない。ほんのり見え隠れする程度の個性の表出がオーケストラに多様性を与えるのかも知れない。
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 崖の上のポニョ

『崖の上のポニョ』
〜動く絵本に溢れる水を通して見えるものは?〜

(2008年 日本 1時間41分)
原作・脚本・監督:宮崎駿
声の出演:山口智子、 長嶋一茂、 天海祐希、 所ジョージ
奈良柚莉愛、 土井洋輝

7/19(土)〜TOHOシネマズ梅田、 TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー

公式ホームページ→

 さかなの子のポニョは,宗介少年と触れ合い,ハムの味を覚える。人間を辞めて海に住む父親は,「いつまでも幼くて無垢なままでいれば良かったのに」と嘆息している。そんな父親を後目に,ポニョは人間になりたいという気持ちを押さえられなかった。彼女は,人間の世界に溶け込もうとして魔法を使い放題だ。果たして彼女は人間になれるのか。また,一体どのようにすれば人間になれるのか。

 今回の宮崎アニメは,水のイメージに富んでいる。ろ過され不純物を取り除かれた水で溢れている。水が透き通っているので,底までくっきりと見える。そのため,水の中に沈んだ山道など,人間の営みがすべて浄化されるような感覚がある。そのような中で,少しずつ大きくなっていく月が映し出される。その姿は美しく,そして不気味でもある。柔らかそうな光を湛えながらも,どこか刺々しさを秘めて,人間界を見下ろしているようだ。
 ところが,台風が来たように海が荒れていても,なぜか風の気配があまり感じられない。海自身が意思を持っているのか,あるいは妖しい月の気配から漂う何かの意思が海に働き掛けているのだろうか。いずれにせよ,波は,それ自体が一個の生命を持った存在のようだが,同時に海という一つの大きな生き物のほんの一部に過ぎないようでもある。自然と人間が共存できるかどうかは,人間次第だとでも言うかのように,自然は超然としている。
 千尋やハウルのような厚みや華やかさはないが,決して内容が薄くなっているわけではない。ポニョにも宮崎アニメのエッセンスが凝縮した形で含まれている。ナウシカのようなシンプルさの中に,トトロの親しみやすさが溶け込んだ味わいの逸品だ。そしてまた,念じ続ければ夢は叶うという,これまで大勢の人々が色んな形で表現してきた思いが,ポニョを始め,宗介の母が勤めるケアセンターのお婆さんたちや貨物船に乗って嵐に巻き込まれる宗介の父親のエピソードに表れている。
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 岡大地監督特集上映






●【岡太地監督特集上映】
最新作『屋根の上の赤い女』他 @神戸アートビレッジセンター
<上映作品詳細:3作品共、監督は岡太地、配給はヨモスガラブフィルムス>

A:『屋根の上の赤い女』
(2007年/日本/30分)
出演:山中崇、神農幸、高城ツヨシ、梶本潔、板倉善之、ほか

公式ホームページ 『屋根の上の赤い女』

B:『放流人間』
(2006年/日本/60分)
出演:川口渉、三嶋幸恵、青野まいあ、高城ツヨシ、ほか

C:『トロイの欲情』
(2004/日本/84分)※デジタル上映
出演:中村真利亜、松井宏樹、高城ツヨシ、ほか
※第27回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2005 準グランプリほか、計4冠受賞!

<上映スケジュール>
神戸アートビレッジセンター KAVCシアターにて(7/15は休館)
●7/12(土)〜14(月)17:10→A:『屋根の上の赤い女』+B:『放流人間』
●7/16(水)〜18(金)17:10→A:『屋根の上の赤い女』+C:『トロイの欲情』
※7/12(土)初日は岡太地監督が来場。舞台挨拶あり!
※木曜サービスデイ一律1000円
 昨年9月に東京:池袋シネマ・ロサで行われた岡太地監督特集が、そっくりそのまま関西上陸! 京都府出身&大阪芸術大学卒業の岡太地は、関西が生んだ新しい才能として大きく注目されている逸材。最新作にして初の35o作品である『屋根の上の赤い女』を中心とした3作品は、いずれも彼らしい独自の映像で綴られたボーイ・ミーツ・ガール・ムービーだ。

  『屋根の上の赤い女』は、赤い服のヒロインと青い屋根のコントラストが目に鮮やかで、とてもかわいらしく愛おしい一遍。京阪電鉄のイメージガール<おけいはん>の3代目美少女であり、『パーク・アンド・ラブホテル』で映画界でもにわかに注目を浴びた神農幸と、『ぐるりのこと。』『チーム・バチスタの栄光』でキラリと光った山中崇というHOTな配役も見逃せない。

  前作『放流人間』は、精子バンクを巡って繰り広げられる意欲作。愛を求める男と、愛はいらないという女の感情のすれ違いが悲しいスリルを生んでいる。

  『トロイの欲情』は、PFFアワード2005で4冠受賞という快挙を成し遂げた比類なき大傑作。接写と俯瞰ショットが大半という驚くべき大胆さだが、それがただ単なる実験ではなく、面白さに繋がっているところが素晴らしい。
  トレードマークのキス・シーンがそれぞれの作品で弾ける瞬間、これぞオンリーワンの岡太地ワールドが花開く。監督念願の関西凱旋を心から祝したい。初日には監督の舞台挨拶もあるぞ!
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 『白い馬』・『赤い風船』 同時上映
『白い馬』+『赤い風船』(デジタルリマスター版での2本セット上映)
〜天才アルベール・ラモリスが遺した永遠不滅の映像詩〜


◎『白い馬』
(1953年 フランス 40分)
監督:アルベール・ラモリス
出演:アラン・エムリー ローラン・ロッシュ フランソワ・プリエ パスカル・ラモリス
ナレーション:ジャン=ピエール・グルニエ
☆1953年カンヌ国際映画祭 短編グランプリ受賞
☆1953年ジャン・ヴィゴ賞受賞
☆2007年カンヌ国際映画祭 監督週間出品(デジタルリマスター版)

◎『赤い風船』
(1956年 フランス 36分)
監督:アルベール・ラモリス
出演:パスカル・ラモリス サビーヌ・ラモリス ジョルジュ・セリエ パリの子どもたち
☆1956年カンヌ国際映画祭 短編パルム・ドール大賞受賞
☆1956年アカデミー賞 脚本賞受賞
☆1956年ルイ・デュリック賞受賞
☆1956年フランス・シネマ大賞受賞
☆2007年カンヌ国際映画祭 監督週間出品(デジタルリマスター版)

7/26〜 大阪:梅田ガーデンシネマ
8/2〜  兵庫:シネ・リーブル神戸
8/9〜  京都:京都シネマ

公式ホームページ(2作品共通)

 2007年のカンヌ国際映画祭は、<真の傑作は永遠不滅である>ことを証明してみせた。1950年代に発表されたアルベール・ラモリス監督の短編映画『白い馬』と『赤い風船』の2本が、発表から半世紀以上の時を経て2度目の正式招待作品として上映されたのだ。名作の回顧上映は珍しくないが、同一作品が2度も正式上映を受けることは前代未聞の快挙であった。上映後、会場は拍手と喝采に彩られたという。なんとも微笑ましいエピソードではないか。
 そんな二本の傑作が、この夏、我が国でも劇場公開となる。これがただ単なるリバイバル公開ではなく、二本立て興行であり、しかも、最新技術によって、より一層鮮やかに蘇ったデジタルリマスター版での上映であることが嬉しい。
  『白い馬』はモノクロ作品、『赤い風船』はカラー作品という違いがあるが、筋立てそのものはほぼ同じ。主人公はいずれも少年で、そのタイトルの通り、前者では白馬、後者では赤い風船と固い友情で結ばれる。その友情は、決して少年の思い込みによるものではなく、相思相愛のもの。とは言っても、白馬や風船にセリフを与えて擬人化しているわけではない。全てを映像で表現しているのだ。その証拠に、どちらの作品もセリフ抜きで充分に理解できる。ここにあるのは、素晴らしい映像と音楽を、優れた演出で結びつけたもの、即ち<映画>だ。アルベール・ラモリスは、写真やドキュメンタリー映画の分野から出発したが、『白い馬』の馬が示す野性味や大地の雄大さ、『赤い風船』のパリはメニモルンタンが示す下町の情緒に、そのバックボーンが存分に活かされた。
 白馬・赤い風船と少年の友情が微笑ましく、思わず、頬がほころぶ。しかし、その友情を邪魔する者が現れる。それは馬飼いたちであり、心ない子どもたち。一転して、心に痛みが走る。「逃げろ!」「頑張れ!」と心の中で叫びながら、思わず手に汗を握ってしまう。この辺りの物語の切り替えが抜群に上手く、アルベール・ラモリスの演出にすっかりノセられてしまう。その心地良いことと言ったらない。『白い馬』は大地を駆けて大海原に、『赤い風船』は雄大な大空に、それぞれ融け込み、同時に観客の心に清らかな寓話として染み込んでいく。これこそ映画の魅力! 映画という名の奇跡!!
 物語の根底には聖書の存在があると聞く。馬の演出や風船に命を吹き込んだ撮影にも興味は尽きない。しかし、そのあたりの種明かしは無用のものとも思える。それよりも、この宝石のような2本の映像詩をスクリーンで鑑賞できる歓びをこそお伝えしたい。是非、御覧を!!
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 カンフー・パンダ
『カンフー・パンダ』
〜大人も子どもも楽しめる! これぞファミリー・ムービー!!〜

(2008年 アメリカ 1時間32分)
監督:ジョン・スティーヴンソン&マーク・オズボーン
声の出演(字幕版):ジャック・ブラック、 ダスティン・ホフマン、 アンジェリーナ・ジョリー 、 ジャッキー・チェン 、ルーシ・リュー、 イアン・マクシェーン ほか
声の出演(吹替版):山口達也、 笹野高史、 木村佳乃、 中尾彬、 MEGUMI ほか
7/26〜 梅田ピカデリー 梅田ブルク7 なんばパークスシネマ TOHOシネマズなんばMOVIX京都 神戸国際松竹、他にて全国ロードショー

公式ホームページ→
 パンダとカンフー、全編を彩る中華風味という組み合わせは、今年開催される北京オリンピックを意識してのもの。この時期に照準を合わせて448人ものスタッフが、実に4年半をかけて作り上げたという本作は、まさしくアメリカ・ショウビズ界の結晶と言える。と、このように書いてしまうと、さぞかしの大作なのだろうと身構えてしまわれるかもしれないが、そこは心配御無用。大作であるのに、気軽に見られるという親しみやすさがこの作品の素晴らしいところだ。
 面白い! 面白い!! 【ちょっぴりぐうたらでドジ、けれども心はキレイなジャイアント・パンダのポーはカンフーが大好き。当然、腕前はからっきしで、現実をダラダラと過ごしている。そんなポーが、ある日突然、最強と言われる<龍の戦士>に選ばれる。「嘘!?」「そんなバカな!」 ポー自身も耳を疑う中、かつて街を恐怖のどん底に陥れた最凶の戦士タイ・ランが牢獄から脱走。復讐に燃えるタイ・ランに街中が震え上がる。嫌が応でも運命はポーに託された……】というストーリーは単純明快。
 あれよあれよという間に展開する手に汗握る物語にすっかりノセられ、時にクスクスゲラゲラ、時にハラハラドキドキ。ホロリとさせられる場面もあり、喜怒哀楽をジェットコースター気分で味わえる。メリハリの利いた85分がすこぶる楽しい。そして気づけば大満足のエンド・マーク。
 本作に込められたメッセージは<自分を信じて努力をしましょう>ということ。これは、世代を問わずに響くものだ。そしてもう一つ。世の大人・親に対して<子どもを信じて育て、そして導いてあげましょう>ということ。  とても大切なことを、これほどの面白さで伝えてくれることのありがたみが心に響く。なんと豊かなことだろう!

 子どもはもちろん、同伴の大人も我を忘れて存分に楽しめる。これぞファミリー・ムービー! 字幕版・吹替版ともに良し。この夏、大いにおすすめしたい秀作だ。
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 おいしいコーヒーの真実
『おいしいコーヒーの真実』
〜コーヒー豆を巡る大いなる矛盾を知る〜

(2006年 イギリス/アメリカ 1時間18分)
監督:マーク・フランシス&ニック・フランシス
7/26(土)〜 大阪:十三第七藝術劇場、8/16(土)〜 兵庫:神戸アートビレッジセンター
近日公開予定 京都:京都みなみ会館

公式ホームページ→
 ここ数年、ドキュメンタリー映画ブームが続いているが、昨年末あたりから<食>を巡る作品が大いに注目されるようになってきた。『いのちの食べかた』『食の未来』『ハダカの城〜西宮冷蔵・水谷洋一〜』といった作品が、単館系映画館を中心にヒットを記録している。連日、食品の産地や賞味期限日の偽装問題が報道される日々が続いており、<食>への関心が今まで以上に高まっているためであろう。
 本作で映し出されるのは、タイトルの通り、コーヒーを巡る真実だ。 コーヒーは、石油に次いで世界第2位の市場を誇り、1日に消費されるコーヒーの量は、なんと約20億杯分にも上るとか。 本作の原題にもなっているが、コーヒー豆は<BLACK GOLD(黒い金塊)>という異名を持っている。それだけの価値があるということだ。となれば、最高級のコーヒー豆を栽培している農家などは、さぞかしの大富豪に違いない・・・・・・、と思ったら、これが大間違い。
 エチオピアでは、5人に1人がコーヒー栽培で生計を立てているが、コーヒー農家の生活は子どもを学校に通わせることすらままならず、時には緊急食料支援を受けなければ生きていけないほど、貧困に喘いでいる。
 なぜか? そこに先進国が自国の利権を貪っている事実があるからだ。
 コーヒー一杯が330円として、コーヒー農家に支払われるのは僅か3〜9円。それ以下の時もあるという。

  本作は、そういった知られざる現実を克明に映し出す。全体の構成・編集にメリハリが欠けるという不満はあるが、示される真実の重みは観る者の心に響くはず。
 コーヒー党の方はもちろんのこと、そうでない方にも一見の価値有り。なぜなら、本作が真に伝えようとしているのは、コーヒーを巡るトリビアではなく、そこに潜む矛盾。それはつまり世界規模の社会問題であるからだ。
 <知る>ことで、何かが変わることがある。本作は、あなたにとって、その<きっかけ>を与えてくれる作品になるかもしれない。
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 スターシップ・トゥルーパーズ3
『スターシップ・トゥルーパーズ3』
〜伝説のパワード・スーツが遂に実写映像化!〜

(2008年 アメリカ 1時間45分 R-15指定作品)
監督:エド・ニューマイヤー
製作総指揮:ポール・バーホーベン
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン、ジョリーン・ブラロック、ボリス・コドジョー、 スティーヴン・ホーガン
7/19〜 敷島シネポップ、MOVIX堺、高槻ロコ9プラスシネマ
8/30〜 橿原シネマアーク
  ほか全国ロードショー

公式ホームページ→
 地球連邦軍と“バグズ”と世ばれる昆虫型エイリアンが繰り広げる壮絶な惑星間戦争を描いた『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)は、映画化不可能と言われたロバート・A・ハインラインによるSF小説の金字塔『宇宙の戦士』を、『ロボコップ』『氷の微笑』のオランダ人監督ポール・バーホーベンが大迫力のSFX映像で大スケールの作品に仕上げた鳴り物入りの超大作。
 しかし、過剰な残酷描写が、戦争讃美映画だという誤解を招いてしまった。真逆である。バーホーベンには、母をアウシュビッツで亡くし、自身も逃亡生活を余儀なくされた経験がある。「幼かった私にとってあの光景はSFだった」そうだ。このSF大作には戦中派としての悲惨な戦争体験が込められていた。しかし、大多数の観客には逆に受け止められてしまったのは残念なことである。
 それにもめげず、バーホーベンは、TV用アニメ・シリーズと実写画版続編2作品の製作総指揮を担当。構想期間を含めると実に25年以上に及ぶ本シリーズは、彼のライフワークと言える。
 正直なところ、続編2作品は低予算映画。前作の3倍の予算という本作も、1作目と比べるとバグズの動きやセットなどはチープに感じられる。しかし、シリーズ通して製作・脚本で参加しているエド・ニューマイヤーを初監督に抜擢。原作からかけ離れてしまった前作の失敗を踏まえながら原点回帰を試みた。その甲斐あって、派手さは抑え目だが、手堅い演出で退屈はしない。同時に1作目にバーホーベンが込めた思いに立ち返ってもいる。その志はしっかり受け止めたい。
 また、本作最大の見所は、パワード・スーツ“マローダー”が遂に映像で表現されていること。『機動戦士ガンダム』のモビル・スーツのモデルとなったことで有名なパワード・スーツだが、これまでは技術・コストの都合で叶わず、原作ファンの失望を買っていたのだ。
“マローダー”登場の瞬間は、SFファンにとって感涙物に違いない。
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 ドラゴン・キングダム
『ドラゴン・キングダム』
〜ジャッキー・チェン&ジェット・リー 夢の競演!!〜

(2008年 アメリカ 1時間45分)
監督:ロブ・ミンコフ
出演:ジャッキー・チェン ジェット・リー マイケル・アンガラノ リー・ビンビン
7/26〜 梅田ピカデリー 梅田ブルク7 なんばパークスシネマ MOVIX京都 神戸国際松竹、他にて全国ロードショー

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 ジャッキー・チェンとジェット・リーが、ハリウッド製のアクション・ファンタジー大作で正面きって共演するというだけで、胸が高鳴ったが、いざその激突が目の前の巨大なスクリーンで繰り広げられると、それどころの話ではなかった。映画ファンの夢が、今、こうして実現しているという興奮! そこには本物の感動があったのだ。
 1970年代から映画界入りしたジャッキー・チェンは、現在に至るまで、一貫して体当たりのアクションにこだわり、世界的なカンフー・スターとして絶大な人気を得た。
 一方、ジェット・リーは、一世代年少ながら、1970年代に中国全国武術大会5回連続優勝を達成。この時、ジャッキー・チェンは、知人から「凄い子どもがいる」と聞かされ、見に行ったことがあるという。
そんな2人が、30年に渡る赤い糸を手繰り寄せ、ハリウッドでW主演。映画ファンだけでなく、きっと本人たちも感無量に違いない。出し惜しみしないアクションの数々に、その喜びが表れている。いきなり酔拳を大復活させるジャッキー・チェンに対して、デビュー作の『少林寺』を思わせる僧衣姿で登場するジェット・リーに大喝采間違いなし!
 【カンフー映画オタクでひ弱なアメリカ人青年(マイケル・アンガラノ)が、ひょんなことから<ドラゴン・キングダム>というファンタジー世界に誘い込まれ、そこで2人の師匠に出会い、身も心も成長していく】という物語は決して目新しいものではないが、まったく飽きさせない。それもそのはず、アクション監督にユエン・ウーピン、撮影監督にピーター・ポウといった、アクションの見せ方を知り尽くした天才が参加しているのだ。観客の望むものをきっちりと見せてくれるのだから流石だ。
 『西遊記』を下敷きに、『白髪魔女伝』など、知る人ぞ知る香港映画ネタを散りばめながら、誰にでも楽しめる娯楽大作に仕上げたロブ・ミンコフ監督の手堅い演出も良い。
 夢を叶えてくれる映画の魔法。劇場で存分に味わって頂きたい。
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 歩いても 歩いても
『歩いても 歩いても』
〜家族の肖像〜

監督:是枝裕和(2008年 日本 1時間54分)
出演:阿部寛 夏川結衣 樹木希林 原田芳雄
7月19日(土)〜梅田ガーデンシネマ 京都シネマ シネカノン神戸
公式ホームページ→

 是枝作品は普遍的なことを理屈や概念ではなく画で見せてくれる。監督が「特別な映画」と語るのは老親を軸にした家族の物語。そこには亡き母への想いがあった。主人公の良多に対し、監督・阿部さんが愛情を持って評した“小さい男”という人物像について二人はとことん語り合った。阿部さんは「役者として自分のなかのそういう(小さい)部分を出していくのが好き、素晴らしい共演者とひとつの家族を創れたことが宝」と充実感をにじませた。

 その言葉通り、個性派揃いの俳優陣がスクリーンでひとつに溶け合っている。田中祥平くんも撮影の合間には阿部さんと蝉取りに興じ、夏川さんと阿部さんで取り合うほどの人気ぶりだったとか。また、光の捉え方に独特の魅力がある。玄関、子どもらが遊ぶ庭、散歩道、眩しく輝く瞬間の光を切り取り、生命の美しさと儚さを同時に表現している。家族が共に輝ける時間は短い。それが、巣立ち、やがて新しい家族を育む生き物の宿命なら、せめてそのことに思いを馳せる時間を持ちたいと、静かに気付かせてくれる作品。
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 水の中のつぼみ

『水の中のつぼみ』
〜3人の少女の心模様を,鋭く新鮮な感覚で。〜

(2007年 フランス 1時間25分)
監督・脚本:セリーヌ・シアマ
出演:ポーリーヌ・アキュアール、アデル・ヘネル、ルイーズ・ブラシェール、 ワレン・ジャッカン

『フランス映画祭2008』 上映作品
一般公開は、7月19日(土)〜梅田ガーデンシネマ、8月〜シネカノン神戸、晩夏〜京都みなみ会館 にて公開
公式ホームページ→

 3人の少女それぞれの,同性に対する憧れを超える恋心,同じ異性を巡って湧き上がる対抗意識,同性に知られたくない意外な臆病さなどが,おそらく同性ならではの鋭さで描出されていく。この3人の関係がプロローグで手際よく紹介され,グイッと引き込まれる。
 マリーは,上級生のフロリアーヌに恋心を抱くが,マリーの同級生アンヌは,フロリアーヌに夢中の男の子との初キスを狙っている。親友同士がフロリアーヌに対してプラスとマイナスの相反する感情を抱く。このアンバランスな状態が3人の間に緊張を生み出すのだが,これらの情報が全て観客にも提示されるため,観客も登場人物と同じ思いを共有し,同じような緊張状態を体験することになる。
 監督の視線は,3人の少女に照準が当てられ,他にブレることが決してない。鋭利なカミソリの刃でザッザッと柔らかで繊細な肌を撫でていくような感覚を覚える。それは,おそらく少女たちのナマの心がスクリーンに表出して,少しでも圧力が加わると表面が避けてしまいそうな,微妙な緊張感が保たれているからだろう。特に,マリーは,フロリアーヌの捨てたゴミを持ち帰ったり,彼女の唐突だが切実な依頼に応じたりする。そんなマリーの姿には何とも言えない痛々しさがある。
 冒頭では,シンクロナイズド・スイミングの水上の華やかさと対比するように,水中で必死にもがくように水を掻いているシーンが映される。マリーは,フロリアーヌとの関係を深め,アンヌを子供っぽいと非難し,彼女に対するマイナスのイメージを抱くことで,何とか心のバランスを保とうとする。このマリーの葛藤を象徴していたのかも知れない。
  しかし,実際には,アンヌの方が,マリーはもちろんフロリアーヌより,物事を冷静に見詰めていたようだ。そして,ラストでは,マリーとアンヌが穏やかな感じで水面に浮かんでいる。嵐が過ぎ去った後の静けさ,いや,ただ台風の目に入っただけなのかも知れない。
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