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★ 第17回大阪ヨーロッパ映画祭(2010)レポート

 『ソウル・キッチン』 ファティ・アキン監督インタビュー

インタビュー終了後の記念写真


『ソウル・キッチン』 (Soul Kitchen)
ファティ・アキン監督 インタビュー

監督・脚本:ファティ・アキン(2009年 ドイツ 1時間39分)
出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ
配給:ビターズ・エンド

 
第17回大阪ヨーロッパ映画祭で、世界三大映画祭制覇の俊英ファティ・アキン監督の初来日に、大阪は大興奮!緊急増席満員御礼となった。大阪ヨーロッパ映画祭では第13回に『クロッシング・ザ・ブリッジ』上映以来、『ソウル・キッチン』で2回目の参加となるファティ・アキン監督に自身の作品づくりで念頭に置いていること、心の故郷イスタンブールへの思いや、ドイツ社会の現実について作品の枠にとどまらない様々な話を伺った。
━━━ 若くして世界的有名な監督になったことについて?
それほどだとは思っていませんが、そう言って頂けて光栄です。自分の仕事に満足できないことが多いので、もっといい作品を撮れるんじゃないかなと考えています。
私の尊敬している人に比べたらまだまだです。映画はコミュニケーションのツールの一つですので、成功して、こうして旅ができることはとても嬉しいと思っています。
━━━ その尊敬している映画人とは?
黒澤明やフルカー・シュレンドルフ、マーティン・スコセッシなどです。中でも、スコセッシ監督には、手作りの映像の素晴らしさやカメラの使い方など、多岐に渡って映画作りの本質を教えて頂きました。映画は、作り手の人間性やバックグランドにあるもの全てが作品の一部であるとね。ドイツのイルマース・ギュネイ監督は、侍の刀のようにシャープな作品を作っている人で、彼にも影響を受けました。

━━━ アダム・ボウスドウコスとの共同脚本作りは如何でしたか?
それまで自分で書くことを基本にしていましたので、初めてのことでしたが素晴らしい経験でした。アダムはとても面白く、彼のユーモアのセンスを沢山盛り込めました。彼は10年位レストランを経営していて、その経験も活かされています。時々、行き詰まった私がパニックになっても、彼は忍耐強く付き合ってくれましたよ。

━━━ストーリーはジノスの恋人、ナディーンが中国人の恋人を作るという設定で、ジノスがトルコ系の女性とくっつくという流れでしたが、それがドイツ社会の現実なのでしょうか。
民族的には違っても、あるところは皆ドイツ人なのです。ドイツはこの数十年ですごく多民族国家になりましたから、私の心の中ではマイノリティーであったり、そうでなかったりの間に区別はないんです。逆に、自分自身が両親がトルコだというバックグラウンドでマイノリティーに対するシンパシーがあります。マイノリティーというのは世界中どこでもいるわけですから。この映画にでてくる悪い人というのは私が実際に知っている人がベースになっていて、不動産屋もハンブルグにいる不動産屋です。特にこの1、2年で経済危機がありましたけど、それはニューヨークの不動産関係から始まっているわけで、不動産というのは悪のイメージがありますし、ドイツで不動産屋というのは白人が多いのでああいうキャラになりました。

多くのドイツ人が排他的ではなく多民族を受け入れるようになってきたということと、あまりシリアスすぎないことを学んだという点ではポジティブになってきていると思います。この映画もドイツで商業的に非常に成功しましたが、お客様のほとんどが白人でした。あまり深刻すぎないようになってきたのはいいことだと思います。


奥様とラブショット
━━━アイデンティへのこだわりについて?(若者が現状からの脱皮という自由を希求して貴方の映画に共感している。)
そうした分析は難しいが、私の映画は、誰でも近づけるシンプルで分かりやすいと思います。世界を旅しては扱いやすい子供のような物語を作っています。それでも、批評家には受けても、私の父のような労働者階級の人達には私の気持ちが届かないのです。そういう人達に私の想いを届けるために、あまりシニカルにならず、できるだけシンプルでクラシカルな作り方で撮っています。
━━━ 音楽について?
音楽は食事と同じ、魂の糧が音楽なんです。映画は二次元の世界ですが、それを三次元にも四次元にも見せてくれるのが音楽です。音楽からも感情が生まれ、映像を思い起こさせてくれる。そういう意味では無くてはならないものです。

━━━ イスタンブールの変化について?
トルコの経済的成長の犠牲になっているがイスタンブールの街だと思います。建築ひとつとっても、パリのように保存するやり方ではなく、古いものを破壊して新しいものを建設していくやり方。東京みたいに物価が高く、家賃を払える人しか住めなくなってしまっています。保存してほしいと願っていますが、政治的問題がありますので難しい問題ですね。

━━━ 子供が産まれて作風が変わりましたか?子供に見せたい映画とは?
『トイ・ストーリー』や『ポニョ』のような作品を撮りたい(笑)。いつも子供と一緒に見ていますよ。子供のための何かを撮りたいという希望はあります。『そして私達は愛に帰る』の撮影中に妊娠しましたので、「うまれる」ということに関心が高まり、哲学的な作品ができました。父親になれたことも影響は大きかったですね。子供ができると、タバコを吸ったり酒飲んだり、ムダに時間を過ごすことがなくなりました。

 大阪の次はインドの映画祭に向かったファティ・アキン監督。多忙な中、『ソウル・キッチン』上映中に行われたインタビューでは、マーティン・スコセッシ監督から自分自身のアイデンティティーを活かすことを教わり、評論家に支持されるだけでなく労働階級の父親にも届くようなシンプルな作品を作りたいと願い、そしてわが子にいつかは作品を残したいと願う、今も目を輝かせている映画学生のようなファティ・アキン監督の姿を目の当たりにし、非常に清々しい気持ちになった。

 上映後のディスカッションでは、ほとんどのお客様が帰ることなく熱心にディスカッションに参加し、その後のサイン会は予定時間を過ぎても長蛇の列が途切れず、最後まで大阪の観客とコミュニケーションをとりながら丁寧にサインをされていたファティ・アキン監督。日本にもこれだけのファンがいることを胸にとどめてくれたことだろう。『ソウル・キッチン』で初コメディーを送り出し、これからも「心に届く」作品を作り続けてくれるに違いない。

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