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第17回大阪ヨーロッパ映画祭(2010)レポート
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★『1日のいのち』 マルク・デクルー監督 ディスカッションレポート |
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『1日のいのち』 (Life in One Day)
監督・脚本:マルク・デクルー (2009年 オランダ 1時間34分)
出演:マティス・ファンデサンデバクハウゼン、ロイス・デヨング
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11月20日(土)、「1日のいのち」(2009年オランダ)の上映後に、監督のマルク・デ・クルーさんを迎えてフリー・デイスカッションが行われました。本作は、いいことも悪いことも繰り返す「人生」の意味を問うラヴストーリーです。
〈あらすじ・・・ 人の一生が一日しかない世界に生まれたベニーとジニが恋に落ち、もっと長く愛し合いたいと願う。地獄へいけば何度でも人生の営みを繰り返すことができ、愛し続けることもできると知って、二人は、殺人を犯し、地獄に行くものの、運命の間違いからはぐれてしまい、互いを捜し出そうとするが…。 〉
上映前の挨拶で、監督は一つのギリシャ神話を紹介し、主人公のベニーとジニが互いに相手を強く求め合う気持ちを、神話に託しました。「人類誕生以前、頭が二つ、手が4本、足が4本という生物が存在し、完全であったにもかかわらず、もっと何かがほしいとギリシャの神に願いが届くよう塔を建てた。それを見つけたゼウスが怒って稲妻を投げ、塔も生物も真っ二つになり、その結果生まれたのが、頭は一つ、手足が2本ずつの人間。だから人間はいつも片割れを探し求めている…」
上映後の観客とのディスカッションでは、タイトルの「いのち」について質問され、「寿命がたった1日だと、一つのことを1回しかすることができない。そこからうまれる純粋さが前半のコンセプト。後半は、何百日も生きて何度でも繰り返すことができる世界。2つの対照的な世界で、命についても語りたかった」とコメント。
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後半、画面を2分割して、2つの映像を映し、地獄に行って離れ離れになってしまったベニーとジニのそれぞれの姿を追う意味を尋ねられ、監督は自身の経験として「ガールフレンドと別れてもう会えなくなってしまうと、『今何をしているのだろう?』とつい想像してしまう。頭の中にあっても、現実には会えない。そのことを映像で表してみたいと思った」、「これは、映画の技術としても大きなチャレンジ。2つの画面に分割することで、泣いているジニの画面の横で、他の女の子とキスをしているベニーが映ったりして、1+1=3になり、高い音と低い音が同時に出ると和音になるようなことを映像で表現したかった」と熱意をこめて語った。 |
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「監督が1日だけの命なら何をしたいのか」という質問がとびだし、「家にいて、キスしたり、食べたり、寝たり、なんということはない1日を過ごしたい」との監督のさりげないコメントには、会場から感嘆の声も。
「電車で偶然出会った人も、数秒ずれていれば会えていなかったかもしれない」、「いろんな電車があってどれに乗るのか、他の電車に乗っていればもっといい運命になっていたかもしれない」といろいろな解釈が観客らから出されましたが、監督は「どの解釈もOKです」と答え、「愛と時間との関係、時間の中で愛がどう変わっていくのかは、自身ずっと考え続けてきたテーマで、本当の愛は別の世界にあるわけではなく、自分の心の中にあることを伝えたかった」と語りました。
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