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★『幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜』インタビュー
『幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜』
ゲスト:小栗謙一監督、
岩本友広さん、川ア拓也さん(共に瑞宝太鼓メンバー)


(2011年 日本 1時間46分)
監督:小栗謙一
出演:岩本友広、高倉照一、山下禅、川ア拓也、辻浩一郎、
    中村義彦、森田祐司、川原慧介
    (以上瑞宝太鼓メンバー)、時勝矢一路他
語り:萩原聖人

2011年5月28日(土)〜角川シネマ新宿、梅田ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
※5月29日(日) 梅田ガーデンシネマで製作総指揮細川佳代子氏の舞台挨拶あり
・作品紹介⇒ こちら
・公式サイト⇒
http://inclusion-movie.com/
 全員が知的障がい者のあるメンバーであるプロの和太鼓集団『瑞宝太鼓』のメンバーに密着し、彼らの練習風景や地域コミュニティーで生活する姿を映し出すドキュメンタリー『幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜』が、5月28日より梅田ガーデンシネマで公開されている。
※6月5日(日)10:00の回 日本語字幕スーパー付きバリアフリー上映会あり

 本作の劇場公開にあたり、小栗謙一監督と瑞宝太鼓の団長岩本友広さん、瑞宝太鼓メンバー川ア拓也さんがキャンペーンで来阪。知的障害者の地域で自立するコロニー雲仙の取り組みや、瑞宝太鼓の活動、本作制作の想いについて語ってくれた。

 ━━━瑞宝太鼓に出会ったきっかけは?
監督:2008年ぐらいに本作のプロデューサーである細川佳代子さんが、これからはインクルージョンの時代だと言って、最初はヨーロッパの現場を取材しようとしていたんです。当時、インクルージョンという言葉は日本の社会には出てきませんでした。英語では「包み込まれる」という意味で、障害のある人たちへの理解を深め、さらに一緒に知恵を出し合おうという発想です。実際には自立支援法という法律もできていますが、単に施設の在り方を示したものであり、彼らの自立につながるものとは言い切れません。
岩本さんも小さいときに施設に入りましたが、施設にいることが幸せなのかと。彼らは家族と普通の生活がしたい。せめて自分の好きな人と好きな場所で暮らしたいということで、民間のアパートを借りて暮らしはじめた訳です。しかし、町の人たちから反対運動が起こりました。窃盗や放火が起こるのではないかという偏見の目で見ていた人たちに、じゃあ隣の人を助けてあげてくださいということで、地域の人たちが面倒をみる近所づきあいを行うようになったんです。次第に彼らがいい人たちで、自分たちが知的障がいのある人の面倒をみたいとまで言われるようになって、コロニー雲仙というとてもいいコミュニティーができあがっていきました。細川さんからヨーロッパではなく、長崎にとてもいいいコミュニティーがあるよと言われて現地へ行ったのが2009年2月のことです。

彼らは牛を育てたり、鳥を育てて卵を売ったり、そうめん工場で働いたり、さまざまな仕事をしながら生活していました。その中で、太鼓を職業にしている芸能プロダクションに出会ったのです。大ホールでコンサートを開いて、入場料をとって、収益を稼いで自分たちで生活をしている。瑞宝太鼓という会社があって、彼らはそこの社員で給料を支払われて生活をしているわけです。それが基本的に企業としても成立している。太鼓のレベルも昨年の大会なんかも青山劇場まで応援に行ったら、そこに向けてものすごく練習してたみたいですからね。一流のプロ以外みんな出てくる中で堂々の2位ですから。

━━━映画を見ていると、彼らが障がいがあることを忘れてしまいますね。
監督:この映画を見て、「どこに障がいがあるの?」と思われるのは、それでいいと思うんです。障がいがあるとかないとか区別しているのは、社会がそう決めた方が便利だから決めているだけです。岩本君のナレーションにもありますけれど、「人は自分たちのことを障がい者だと言っているけれども、学校の先生もそう言ってたし、親もそう言ってたし。」学校の先生が言うのは養護学校に行くときに、親が言うのは年金をもらうときに「障がい者ですから年金ください。」とそういう一つの便宜上の言葉なんです。本人は障がい者と思ったことはあまりない。本来はそんなことが全部なくなっていってみんな同じで、だけどこの人たちはこういうところが大変だから、普通に生活するのは大変だからその穴埋めを国がしましょうと。そういった補助がでてきてもいいような気がします。

━━━ナレーションは監督と岩本さんが考えたのですか?
監督:7ヶ月のうちにいろいろ岩本さんからでてきた言葉を拾って、僕が文章にしました。それを萩原さんにお願いしたときに、萩原さんがどう思うか、萩原さんが「僕は」と一人称で彼の言葉を使うのに抵抗を感じるのではと思いましたが、何も言わないで読んでくださいました。原稿は1週間前に渡したのでその中でいろいろと考えられたと思いますが、見事に客観性を持ちながら彼の内面に入り込んでくださり、すごく感動しました。
━━━岩本さん一家は、結婚をし、子育てもし、まさに先駆者的存在ですね。
監督:ビリーブクルーの悩みがまさにそうだと思うんですが、「自分は彼女がいて結婚したいけれど、親が反対するんだよ。親を悲しませたくないから、ぼくは心に締まっておくんだよ。」と。すごい言葉だと思いますが、それを乗り越えた岩本さんに対しても、世間は子どもを育てられないと思うんです。確かに岩本さんもそういう問題はありました。
母親としてお乳を飲ませてあげられないとか。だけど、周りの世話人さんがファミリーとしているわけです。監視をしている訳ではないのでうるさい存在にならないし、すごくいいシステムだと思います。世話人さんが岩本家に対するサービスをしている、岩本さんたちは利用者という言われ方をされています。

瑞宝太鼓とか岩本さんのような成功例をこの映画で見ていただくと、ヒントになる方々がいっぱいいると思うんですよ。自分たちの中にある身近な方法でこんなことができるのかなと思われるのが一番いいのではないでしょうか。

━━━映画を見て、自分にとって新しい発見はありましたか?
川ア:色んなところを撮っていたので、「こんなシーンが入っているんだ。」とか。一番最後に『漸進打破』を打っているときは、本当にかっこいいと思いました。
岩本:衣装を着て、最後の『漸進打破』を叩いているときは、本当にかっこいいんだなと思いました。

━━━刑務所での演奏シーンでは、観客に感動を呼んでいるのが伝わってきました。
岩本:僕たちもボランティアとして各地刑務所に行ったりして、ずっと手をグーにして聞いていたのが、「いいぞ!」と拍手したり、女性刑務所では一緒に太鼓をしたりしました。
川ア:刑務所から来た手紙は正直に書いてもらっているので、自分たちはこんな風にみてもらっているんだなとわかりました。

 ━━━瑞宝太鼓としての夢は何ですか?
川ア:一人でも多くの人に瑞宝太鼓を知ってほしいです。団長(岩本さん)を一番の目標にしているので、子どもができれば団長みたいな家庭になっていければいいなと。
岩本:ぼくは一つは瑞宝太鼓をもっと有名にして広げていけるようにすることと、息子の裕樹君も太鼓を叩くのが大好きなので、僕の本当の夢は岩本組を作って自分も作曲して衣装を作って、太鼓たたきを集めて、全国で演奏できればいいなと思っています。
━━━ビリーブクルーのメンバーに恋愛の相談を受けるシーンがありましたが、お二人は同じ知的障がいを持つ方から相談されることが多いのでしょうか?
岩本:ありますね。結婚は楽しいとこもあって、たまに喧嘩をすることもあって、ずっと考えもするけれど、もし彼女ができたら自分からアタックすればと。ぼくみたいに同期の相手で一目見たときに「あ、天使みたいだ。」と、そんなのでもいいし。
川ア:自分の場合はお互いに一目惚れなのでよかったけれど、奥さんの両親に反対されたこともありました。

━━━この映画をどんな人に見てもらいたいですか?
川ア:全国の人に見てもらいたいです。
岩本:全国のみなさんに見てもらいたいし、僕はお母さんが三重にいて、お母さんもまだ見ていないので、見てほしいのはお母さんの家族とお母さんです。最初電話をしてお母さんが映画に出ていると言ったら「いやあ、恥ずかしかばい。」と。「笑いあり、涙あり、感動だから見た方がいいよ。」と言ったんです。

 コロニー雲仙での取り組みが全国に広がればと、本作への想いを語ってくださった小栗監督。また、メンバーの岩本さん、川アさんからは、結婚のエピソードもお聞かせいただくなど、和やかなインタビューとなった。瑞宝太鼓のメンバーそれぞれの人生の軌跡を映し出しながら、瑞宝太鼓の音楽をさらに高める新曲『漸進打破』を練習するメンバーのひたむきな姿を追う感動のドキュメンタリー。知的障がいを持つ人たちと我々が共に生きる社会の在り方の、一つの答えが見えるだろう。
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