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★『マイ・バック・ページ』記者会見レポート
『マイ・バック・ページ』 <5/24(火)大阪記者会見レポート>
ゲスト:妻夫木聡、松山ケンイチ、 山下敦弘(のぶひろ)監督
〜大阪へ!“ダルマ”に大ヒット祈願〜


(2011年 日本 2時間21分)
監督:山下敦弘
出演:妻夫木聡 、松山ケンイチ、忽那汐里、石橋杏奈、中村蒼、韓英恵、長塚圭史、山内圭哉、古館寛治、あがた森魚、三浦友和

2011年5月28日〜新宿ピカデリー、丸の内TOEIほか全国ロードショー
・ 作品紹介⇒ こちら
・ 公式サイト⇒
 http://mbp-movie.com/
 妻夫木聡、松山ケンイチという日本映画界屈指の若手演技派を主役に、『天然コケッコー』や『リンダ リンダ リンダ』などの自然体の青春風景を瑞々しく捉えることで定評のある山下敦弘監督が描く人間ドラマ、映画『マイ・バック・ページ』。5月28日(土)の全国公開に先駆けて、大阪・堂島ホテルにて記者会見が開催された。
  当日は妻夫木 聡×松山ケンイチの豪華2ショットに山下監督が登壇。神戸で行われた撮影の裏話や大阪の印象などを語り、会場を大きく盛り上げました。また、会見の最後には映画の大ヒットを祈願して"ダルマ"に目を入れました。





















































〈はじめに〉
妻夫木:大阪にキャンペーンに来られてとても嬉しく思っております。この映画は主に東京を中心としたお話ですが、大阪の方にもこういう時代があったことを感じてもらえる作品となっていますので、是非しっかりと見届けてもらいたいです。

松山:本当にいい映画ですので、よろしくお願いいたします。

山下監督:大阪には8年住んでいてとても慣れた土地ですが、こんなに沢山の人が取材に来てくれたのは初めてで、とても嬉しいです(笑)。今回、関西(神戸)でも撮影して大変お世話になりましたので、こういう形で帰ってこられて本当に嬉しいです。

――― 大阪の印象について?
妻夫木:大阪は、どこの場所よりも観客との距離感が近いのが嬉しいです。どんな作品でも温かく迎えてくれて、「なんかこの人達、一緒に映画作ってくれたみたい?」と思うほど。いつもありがたく感じます。それから、食も楽しみで、食い倒れたいなと思っています(笑)

松山:大阪ではキャンペーンが特に印象に残っています。いつも舞台挨拶をやらせて頂くのですが、お客さんのパワーがすごく熱いです。今日の舞台挨拶も楽しみにしています。

山下監督:とても今回リラックスしています。昨日外国人記者クラブみたいな所で会見やって、胃が痛かったのですが、今日はとても気が楽です。大阪は20代の頃から知ってるので、自主制作してた頃の学生気分に戻れてとても居心地いいですね。

――― 神戸でのロケの思い出は?
山下監督:クランクイン後の最初2週間は神戸で撮影したんですが、スケジュールに余裕があったので、妻夫木君と食事に行っては話し込み、特に沢田というキャラクターを作り上げていきました。とても重要な期間でした。

妻夫木:神戸撮影中に監督と話し合った内容は具体的には覚えてないのですが(笑)、その頃の人達は何を考えていたか?ジャーナリズムとは何だろう?など大枠での話をしていました。自分達なりの『マイ・バック・ページ』を作り上げるためには同じイメージを膨らませる必要があるのでは?とか。あと、三浦さんらと食べた神戸牛が美味しかったです。

――― 初共演ですが、お互いの印象について?
松山:はじめから爽やかな印象でして、現場でもいつもクールな顔をしていて、器の大きな俳優だなと思いました。沢田のセリフや動きについて、想像以上に監督と話し合っているのを見て、計算しながら繊細に演じていました。思慮深い役者だと思いました。

妻夫木:最初会った時はとても無口で、大丈夫かな?と心配しましたが、その後の活躍では毎回違う顔を見せてくれて、即座に表現できる強い感性を持っている俳優だなと思います。撮影中も無駄にコミュニケーションをとらず、その距離感が心地良く、一緒に仕事していて楽しかったです。

――― 山下監督から見た二人は?
山下監督:「沢田」は難しい役で、妻夫木君は凄い役者だなと思いました。役者が持っている「力」がないと成立しない役でした。松山君は面白い役者だなと。「梅山」という役も魅力がないと単なる詐欺師になってしまうので、それを松山君が本来持っている魅力で成立させていました。

――― 二人から見た山下作品は? 監督の面白さは?
妻夫木:何と言っても見た目が面白くて可愛いらしい!(笑)。 監督の映画は、人間の良い所ばかりではなく悪い所も見せて、その「人間ってダメだな」と思わせる所が逆に可愛く見えてしまう。そんな撮り方をする監督の演出を受けてみたいと思っていました。どう演じるかだけでなく、人間はどう生きるか?と一緒に考えてくれるところもまた嬉しいですね。
映画を観てよくコメントを求められるのですが、自らコメントを出させて下さいと言ったのは、山下監督の『天然コケッコー』だけです。

松山:とても近い存在に感じられます。全く陽の当たらない人を描くのが巧いと思いました。山下監督の作品は2作目ですが、『リンダ リンダ リンダ』の時はお芝居がわからなくて、付いていくのに必死でした。わざと字幕を小さくして面白く見せたり、演じる以上に役の色付けをしてくれたりして、とても助けて頂いたので印象に残っています。山下監督だからこそ、この完成度だと思います。

――― 1960〜70年代について?
山下監督:アメリカンニューシネマが大好きで、アメリカの役者が大好きで、映画を沢山見てきました。映画から当時のカルチャーを感じ取っていたような気がします。

妻夫木:個人的範疇で判断をしてしまう現代人に比べ、当時の人達はもっと大きなものと戦っていて、今より情熱やパワーがあったように感じます。この間の中国万博もすごかったですが、1970年の大阪万博もあの時代にあんな技術を持っていてとても誇らしく感じました。岡本太郎展に行ってわかったのですが、人間の可能性って限りがなく、想像は自由であっていいのだと。あの頃の年代の方が自由に発想して行動できたのではないかと羨ましく思うこともあります。

松山:この時代のマンガ原作(『カムイ外伝』『銭ゲバ』)の仕事をやらせてもらう機会がありましたが、今のマンガと違うなと。大きな物に向かって戦いに挑んでいく、勝ち取っていくというように、当時の若い人達は見ている方向が違うなと、とても興味を持ちました。

〈最後に〉
山下監督:まだ本作をひと言で表現できないでいます。あの時代を知らないキャストやスタッフで作った映画ですが、何らかの批判やメッセージが込められています。そして、沢田や梅山と同じくらい殺された自衛官のことも力を込めて描いていますので、その辺りもしっかりと見て頂きたいです。

松山:悲しい事件を扱っていますが、男が一旦挫折して最後は再生していく作品です。今まで見た青春映画とは違ったものになっていますが、そこには普遍的な要素が描かれていますので、沢山の方に見て頂きたいと思います。

妻夫木:1回きりの人生なんだから、がむしゃらに生きてみるのもいいんじゃないかなと思います。失敗を恐れずに何事にもトライすることの素晴らしさを、この映画を通じて感じ取って頂けたら嬉しいです。本日はどうもありがとうございました。

【STORY】 
 1969年。理想に燃えながら新聞社で週刊誌編集記者として働く沢田(妻夫木聡)。彼は激動する"今"と葛藤しながら、日々活動家たちを追いかけていた。それから2年、取材を続ける沢田は、先輩記者・中平とともに梅山(松山ケンイチ)と名乗る男からの接触を受ける。「銃を奪取し武器を揃えて、われわれは4月に行動を起こす」という予告。沢田は、その男に疑念を抱きながらも、不思議な親近感を覚え、魅かれていく。そして、事件は起きた。「駐屯地で自衛官殺害」のニュースが沢田のもとに届くのだった─。















【解 説】
 1969年といえば、アポロが月面着陸に成功し人類が初めて月に到達した年。1960年〜1970年にかけて、科学の急速な発展に伴い人々の価値観も変化していった。人権問題、自由主義運動、米ソ冷戦、ベトナム戦争の泥沼化など、世界的に激動の時代でもあった。日本でも反戦運動と日米安保条約に対する反対運動が学生を中心に高まり、1969年の新左翼による東大安田講堂事件を頂点に、1970年の赤軍派による日航機ハイジャック事件、1972年の連合赤軍によるあさま山荘事件など、反社会的犯罪へと変化していった。正に社会に変化をもたらそうとする運動が終息しつつあった1969年、ジャーナリストとしての使命を果たそうとする沢田と、思想家として注目を浴びたい梅山が出会う。
 
 本作は、映画評論家・川本三郎氏が自身の朝日新聞社記者時代を綴ったノンフィクションを、当時まだ生まれてもいない若いスタッフとキャストで映画化したものである。あくまで学生運動は背景にしか過ぎず、二人の若者の生き様を通して、理想と現実を見極めていかに人として真剣に生きるかという、いま最も欠けている問題を提示している。

 ジャーナリストと人としてのモラルの狭間で苦悩する「沢田」という人物像を、激動の時代に溶け込むように演じた妻夫木聡は、自身の役柄だけでなく、作品全体を高めるような演技で体現。『ノーボーイズ、ノークライ』『悪人』で見せた絶望的表情の中に誠実さと情熱を漂わせた演技は、役者としての度量の大きさを感じさせた。本作は彼あっての作品と言っても過言ではない。

 一方、沢田を利用しようとする「梅山」という役も真贋を明確にできない微妙な役柄で、それを松山ケンイチが、朴訥だがどこかつかみ所のない表情で興味深く魅せている。この両雄の対峙を最後まで緊迫感のある映像で惹きつけた山下監督の演出力もまた特筆すべきことだろう。
 青春の苦い経験というだけでは片付けられない、もっと人間の奥深いものを感じさせるスケールの大きな映画だ。

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