〈はじめに〉
妻夫木:大阪にキャンペーンに来られてとても嬉しく思っております。この映画は主に東京を中心としたお話ですが、大阪の方にもこういう時代があったことを感じてもらえる作品となっていますので、是非しっかりと見届けてもらいたいです。
松山:本当にいい映画ですので、よろしくお願いいたします。
山下監督:大阪には8年住んでいてとても慣れた土地ですが、こんなに沢山の人が取材に来てくれたのは初めてで、とても嬉しいです(笑)。今回、関西(神戸)でも撮影して大変お世話になりましたので、こういう形で帰ってこられて本当に嬉しいです。
――― 大阪の印象について?
妻夫木:大阪は、どこの場所よりも観客との距離感が近いのが嬉しいです。どんな作品でも温かく迎えてくれて、「なんかこの人達、一緒に映画作ってくれたみたい?」と思うほど。いつもありがたく感じます。それから、食も楽しみで、食い倒れたいなと思っています(笑)
松山:大阪ではキャンペーンが特に印象に残っています。いつも舞台挨拶をやらせて頂くのですが、お客さんのパワーがすごく熱いです。今日の舞台挨拶も楽しみにしています。
山下監督:とても今回リラックスしています。昨日外国人記者クラブみたいな所で会見やって、胃が痛かったのですが、今日はとても気が楽です。大阪は20代の頃から知ってるので、自主制作してた頃の学生気分に戻れてとても居心地いいですね。
――― 神戸でのロケの思い出は?
山下監督:クランクイン後の最初2週間は神戸で撮影したんですが、スケジュールに余裕があったので、妻夫木君と食事に行っては話し込み、特に沢田というキャラクターを作り上げていきました。とても重要な期間でした。
妻夫木:神戸撮影中に監督と話し合った内容は具体的には覚えてないのですが(笑)、その頃の人達は何を考えていたか?ジャーナリズムとは何だろう?など大枠での話をしていました。自分達なりの『マイ・バック・ページ』を作り上げるためには同じイメージを膨らませる必要があるのでは?とか。あと、三浦さんらと食べた神戸牛が美味しかったです。
――― 初共演ですが、お互いの印象について?
松山:はじめから爽やかな印象でして、現場でもいつもクールな顔をしていて、器の大きな俳優だなと思いました。沢田のセリフや動きについて、想像以上に監督と話し合っているのを見て、計算しながら繊細に演じていました。思慮深い役者だと思いました。
妻夫木:最初会った時はとても無口で、大丈夫かな?と心配しましたが、その後の活躍では毎回違う顔を見せてくれて、即座に表現できる強い感性を持っている俳優だなと思います。撮影中も無駄にコミュニケーションをとらず、その距離感が心地良く、一緒に仕事していて楽しかったです。
――― 山下監督から見た二人は?
山下監督:「沢田」は難しい役で、妻夫木君は凄い役者だなと思いました。役者が持っている「力」がないと成立しない役でした。松山君は面白い役者だなと。「梅山」という役も魅力がないと単なる詐欺師になってしまうので、それを松山君が本来持っている魅力で成立させていました。
――― 二人から見た山下作品は? 監督の面白さは?
妻夫木:何と言っても見た目が面白くて可愛いらしい!(笑)。 監督の映画は、人間の良い所ばかりではなく悪い所も見せて、その「人間ってダメだな」と思わせる所が逆に可愛く見えてしまう。そんな撮り方をする監督の演出を受けてみたいと思っていました。どう演じるかだけでなく、人間はどう生きるか?と一緒に考えてくれるところもまた嬉しいですね。
映画を観てよくコメントを求められるのですが、自らコメントを出させて下さいと言ったのは、山下監督の『天然コケッコー』だけです。
松山:とても近い存在に感じられます。全く陽の当たらない人を描くのが巧いと思いました。山下監督の作品は2作目ですが、『リンダ
リンダ リンダ』の時はお芝居がわからなくて、付いていくのに必死でした。わざと字幕を小さくして面白く見せたり、演じる以上に役の色付けをしてくれたりして、とても助けて頂いたので印象に残っています。山下監督だからこそ、この完成度だと思います。
――― 1960〜70年代について?
山下監督:アメリカンニューシネマが大好きで、アメリカの役者が大好きで、映画を沢山見てきました。映画から当時のカルチャーを感じ取っていたような気がします。
妻夫木:個人的範疇で判断をしてしまう現代人に比べ、当時の人達はもっと大きなものと戦っていて、今より情熱やパワーがあったように感じます。この間の中国万博もすごかったですが、1970年の大阪万博もあの時代にあんな技術を持っていてとても誇らしく感じました。岡本太郎展に行ってわかったのですが、人間の可能性って限りがなく、想像は自由であっていいのだと。あの頃の年代の方が自由に発想して行動できたのではないかと羨ましく思うこともあります。
松山:この時代のマンガ原作(『カムイ外伝』『銭ゲバ』)の仕事をやらせてもらう機会がありましたが、今のマンガと違うなと。大きな物に向かって戦いに挑んでいく、勝ち取っていくというように、当時の若い人達は見ている方向が違うなと、とても興味を持ちました。
〈最後に〉
山下監督:まだ本作をひと言で表現できないでいます。あの時代を知らないキャストやスタッフで作った映画ですが、何らかの批判やメッセージが込められています。そして、沢田や梅山と同じくらい殺された自衛官のことも力を込めて描いていますので、その辺りもしっかりと見て頂きたいです。
松山:悲しい事件を扱っていますが、男が一旦挫折して最後は再生していく作品です。今まで見た青春映画とは違ったものになっていますが、そこには普遍的な要素が描かれていますので、沢山の方に見て頂きたいと思います。
妻夫木:1回きりの人生なんだから、がむしゃらに生きてみるのもいいんじゃないかなと思います。失敗を恐れずに何事にもトライすることの素晴らしさを、この映画を通じて感じ取って頂けたら嬉しいです。本日はどうもありがとうございました。 |