topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
  『毎日かあさん』
  小林聖太郎監督インタビュー
  作品紹介
★『毎日かあさん』 小林聖太郎監督インタビュー

(C) 2011映画「毎日かあさん」製作委員会
『毎日かあさん』  ゲスト:小林聖太郎監督

(2011年 日本 1時間54分)
監督:小林聖太郎 原作:西原理恵子
出演:小泉今日子 永瀬正敏 矢部光祐 小西舞優 正司照枝

2月5日(土)〜梅田ブルク7、なんばパークスシネマ ほか全国ロードショー
公式サイト⇒ http://www.kaasan-movie.jp/
 身の回りに起きた日々の出来事を笑いあり涙ありで描く漫画家・西原理恵子の代表作『毎日かあさん』を『かぞくのひけつ』の小林聖太郎が映画化。6歳のわんぱくな息子・ブンジとおませな4歳の娘・フミに振り回されながら、仕事と家庭を両立するサイバラかあさんを小泉今日子、元戦場カメラマンでアルコール依存症を患う破天荒な夫・カモシダを永瀬正敏が演じる。

小林聖太郎監督
 戦場でのトラウマからアルコール依存症となるも、サイバラと子供たちの支えを受けて闘病に成功したカモシダ。だが、今度は彼の体に癌が見つかってしまう―。先に公開された『酔いが覚めたらうちに帰ろう』と同時期の西原&鴨志田ファミリーの物語だが、鴨志田視点の前者に比べて、こちらは西原視点の語り口が特徴。 暴れん坊な子どもたちとのやりとりも、予測不可能なとうさんの酔っ払いエピソードも明るくポジティブに描かれる。人生は楽しいだけじゃない。毎日大変なことばかりだけど、家の中で繰り返される日常はそのまま家族の絆となって、かけがえのない時間をもたらしてくれるのだと教えてくれる作品だ。
 優しい母を心がけながら、やっぱりいつも子供&夫に怒っている(つっこんでいる?)小泉今日子の肝っ玉かあさんぶりが意外と板に付いていて面白い。アイドル出身のキョンキョンに初めておばちゃん要素、もとい“母性”を感じた作品は『雪に願うこと』だったが、小林監督も小泉の起用はこの作品がきっかけになったと語る。「『雪に願うことに』に助監督で参加していたときから、小泉さんには役以外の所でも器が大きくて骨太な印象を感じていました。逆に、西原さんは麻雀や博打や脱税の漫画を書いたりして、酒飲んでワーッとなるイメージがあるんですけど(笑)実際のご本人は柔らかで繊細で女の子を感じる人。そのちょうど裏表な感じがピッタリはまれば面白いかなと。小泉さんは姉御というか男気のある人です。」
 さらに本作は、小泉の相手役を過去に実生活でパートナーだった永瀬正敏が務めていることでも話題になっている。ある意味、突拍子もないキャスティングだが、監督はこの選考について特に元夫婦というのは意識していなかったと明かす。「鴨志田役を考えたときに永瀬さんがいいんじゃないかなと思っていました。
 初めに小泉さんが脚本を読んで受けてくれてから、そのあとに永瀬さんに話をもっていきました。ただ、小泉さんには鴨志田役に永瀬さんという話があるんですけどありえる話ですか?とは聞きました(笑)小泉さんは「なるほど合うかもねぇ」と。永瀬さんにもまず脚本を読んでもらって、実はおかあさん役は小泉さんでと言ったら「ピッタリですね」と。互いをよく知るお二人にそういってもらえるのは心強かったですね」

 スクリーンではそんな元夫婦の阿吽の呼吸が活かされていたのか、ただの俳優同士にはない自然な家族の雰囲気が醸し出されていたように思う。実際、撮影を見に来た西原本人が小泉&永瀬の姿をみて「2人の距離感がうちとソックリで腹立ちました」と太鼓判を押したほど。特に永瀬は役に没頭して全身で鴨志田を演じた。「永瀬さんは鴨志田さんが生前に撮影した写真を家の壁にはって毎日眺めていたみたいで、鴨志田さんになりたいと言っていました。ガンで亡くなる前の撮影では2週間かけて12キロもウエイトを落として、最後の方は水も飲んでいなかった」とその役にかける意気込みを称える。「僕は鴨志田さんには生前お会いしたことがなかったので、西原さんに鴨志田さんはどんな人でしたかといつも聞いていました。でも、赤尾敏とショーン・ペンを足して2で割らずに足しっぱなしの人って言われて(笑)とりあえず濃くて過剰な人だったと。それ故に2人は適度な距離間を取るのがなかなか難しかったんだろうなと。共通点があって惹かれ合うがゆえに近づくと傷つけあったりする関係だったんじゃないかなと思います。」
 さらに、鴨志田になりきっていた永瀬は、セリフの追加を提案することもあったそうだ。「そうなんです。後半に鴨志田がもう一度家に帰ってきて犬を連れて公園へ行くシーンのセリフで、西原:「これからどうするの?」、鴨志田「なんでもいいから仕事する。それで出来ればずっと子供たちと一緒にいたい」とここまでは台本にあったのですが、そのあとの「俺ひとりじゃ生きられない」という言葉は永瀬さんが足してくれました。
 あの場面はセリフや設定に加えて小泉さんと永瀬さんの出す空気で成立していたと思います。小泉さんと永瀬さんも夫婦というよりも同志に近い感じだから、今回の共演は2人ともやりやすかったんじゃないかな。完成した作品を見終わったあともお互いを誉めあっていて、小泉さんは「永瀬くんに感謝しなきゃね」と言っていましたね。」
 しかし、映画全体の雰囲気としては、あまりドラチックになりすぎないように気をつけたと監督は言う。「笑いに関しても、涙に関してもちょっと距離を置いて見てみた。どうですか泣いてくださいというのは嫌でした。」確かに泣かせ演出が過剰な作品ほど心に残らないものが多い。その点、本作は感情には訴えかけるが、感動の安売りはしていない。子役ものびのびと演じていて自然でよかったと思う。「子役に関してはお兄ちゃん役の矢部光祐くんは役柄そのままでわんぱくな子で、妹の小西舞優ちゃんはプロフェッショナルでしたね。オーディションの時に交番で泣くシーンがあって、でも相手役はスタッフだし本気で泣かなくていいよって言ってるのに「大丈夫です、私泣けます」って(笑)」

 そして最後に監督は「あらすじだけだと哀しい話と思われがちですが、否定的にみるのではなく全体的には喜劇として見てほしい。その中で哀しいことや辛いことが彩りになっていればいいなと思っています」とメッセージを語ってくれた。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって