ぜひ観てほしい作品としては、『沓掛時次郎 遊侠一匹』、『車夫遊侠伝 喧嘩辰』、『十三人の刺客』、『股旅 三人やくざ』、『傷だらけの人生』、『冬の華』など。
映画美術の世界も知れば知るほど、奥が深いと実感しました。「カポック(発泡スチロール)で石垣をつくるにも、少しでも本物に近くみせられるよう頑張りました」と言われたすぐ後に「でも、アップになったら、ばればれでしたねえ」と微笑む井川さんは、率直でユーモアも豊かなすてきな方でした。
傑作といわれる数々の映画において、その名場面の背景には、映画美術の力がいかに大きいかを、今回の特集上映を通じて実感します。映画を観る時、人物だけでなく、その後に何が映っているのか、窓の向こうに何が映っているのか、そんなところも細かく見ていければ、映画はより奥深い顔をみせてくれるに違いありません。映画美術は間違いなく作品のテーマとも関わっているのですか
ら。
井川美術監督特集上映も後半を迎えましたが、最終週には、加藤泰監督の傑作も控えています。ぜひこの機会に一度ご覧ください。
(参考文献「リアリズムと様式美 井川徳道の映画美術」
井川徳道著、多田攻・田丘広編、ワイズ出版) |