浦河は千歳から3時間かかる不便な港町ですが、ぺてるの家という精神障害者の生活拠点を95年に撮影したことがあるので、そこに大黒座があることは話に聞いて知っていました。たまたま大黒座を応援する映画を作ってほしいという依頼があり、私は埼玉に住んでいるので道内の方に頼んだ方がいいのではとお返事したものの、是非とのことで1年半ぐらい撮影していたんです。
■浦河の町の豊かさを再認識して、映画作りを続行。
ところが、依頼者の方がやめると言われました。すでに20人ぐらい浦河の町の人に話を聞いていて、浦河の町の豊かさを再認識したので、自分で映画を引き続き作ることにしました。国の助成金を急遽もらうことになり、その手続きをしたときに、助成の条件が映画館で2週間上映することだったのですが、大黒座の映画なのでそれはすぐにクリアできると。
■映画館はあって当たり前。「何が珍しいの?」と聞かれる。
どこも小さな映画館は大変です。浦河の人からすれば、映画館は生まれたときからあって、あるのが当たり前のものなので、私が撮っていると「何が珍しいの」と聞かれました。でも、地方で自分の住んでいる町に映画館がなくなった人はやはり寂しいとおっしゃっています。
■今の若い人に映画館ならではの体験を。
今の若い人には、映画館で映画を見ることを是非してほしいです。作品中で映画館主の奥さんである和子さんが「エイリアン2」を見て、外にでたらいつもの町の光景が広がって不思議な感じがしたと言っていましたが、そんな体験ができるのも映画ならではです。
シネコンと町の映画館は、ショッピングセンターと個人商店みたいなもので、町の映画館では店主の目利きや説明があります。そういう説明があったら、今まで見たことないけれど試してみようかなと思えます。それにスタッフの思いや気配りがあります。
こうやって、関西の人が北海道の小さな映画館の話を見ていただけるなんて、作った当初は思ってもいませんでしたが、偶然でも北海道の小さな映画館の映画を見ていただけて、うれしいです。