映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

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クロージングセレモニー後、ゲストとアテンドの皆さん(ABCホールロビーにて)
【第7回大阪アジアン映画祭 クロージング・セレモニー】

318-5.jpg2012年3 月9 日(金)~18(日)、ABCホール、梅田ガーデンシネマ、シネ・ヌーヴォを主会場に開催された『第7 回大阪アジアン映画祭』が、クロージング作品『捜査官X』の上映をもって、閉幕となった。
『捜査官X』の上映前に実施されたクロージング・セレモニーでは、グランプリ以下各賞の受賞結果が発表された。

今年の上映作品は、日本の東日本大震災やタイの大洪水などの天災や、経済不況にあえぐ諸国の現状などを意識してか、人と人との繋がりを感動的に見せる作品が多かったように思う。特に、家族の絆の強さと深い愛情を描いた「神様がくれた娘」や「ラブリー・マン」、豪華キャストの演技が光る「LOVE」や「熊ちゃんが愛してる」などは特に印象深い。また、「ナシレマ2.0」では、さまに民族も言語も複雑に絡み合う社会を、軽快な音楽と細やかな演出でコミカルに見せこんだエネルギーに圧倒された。これらは劇場公開しても十分に観客に満足してもらえるはずだ。

『捜査官X』上映前に行われたクロージング・セレモニーでは、グランプリ、ABC賞を『神さまがくれた娘』(インド)がW受賞、会場は大いに沸いた。また、ウェイ・ダーション監督の『セデック・バレ』(台湾)は見事監督賞を受賞した。

各賞の受賞結果は以下のとおり。
 318-3.jpg★グランプリ…『神さまがくれた娘』(A.L.ヴィジャイ監督)
コンペティション部門作品を対象に、審査委員会が最も優秀であると評価した作品に授与。


318-4.jpg★来るべき才能賞…Namewee 監督(『ナシレマ2.0』)
コンペティション部門作品を対象に、審査委員会が最も映画の未来を担う才能であると評価した人に授与。


★スペシャル・メンション
『ラブリー・マン』(テディ・ソエリアットマジャ監督)
『刀のアイデンティティ』(シュー・ハオフォン監督)
コンペティション部門作品を対象に、審査委員会が優れていると評価した作品に授与。


★ABC賞…『神さまがくれた娘』(A.L.ヴィジャイ監督)
当映画祭実行委員会参加の朝日放送により設けられたスポンサーアワード。アジア映画の新作を対象に、朝日放送が最も優れたエンターテインメント性を有すると評価した作品に授与。

★観客賞…『セデック・バレ』(ウェイ・ダーション監督)
 


RIMG1035.JPGのサムネイル画像のサムネイル画像【オープニングレポート|『道~白磁の人~』の高橋伴明監督、吉沢悠、オープニングセレモニーで舞台挨拶!@第7回大阪アジアン映画祭】はコチラ

 

 

 

 


2banme2.JPG【インタビュー|『2番目の女』キャロル・ライ監督】はコチラ

 

 

 

 

 


kamisama1.JPG【ディスカッション|『神さまがくれた娘』A.L.ヴィジャイ監督、ヴィクラム氏】はコチラ

 

 

 

 

 

 


kamisama3.JPGのサムネイル画像【ディスカッション|『神さまがくれた娘』A.L.ヴィジャイ監督、ヴィクラム氏】はコチラ

kamisama1.JPG第7回大阪アジアン映画祭で見事グランプリとABC賞をダブル受賞したコンペティション部門出品のインド映画『神さまがくれた娘』。『アイ・アム・サム』にインスピレーションを得たというA.L.ヴィジャイ監督が、インドの名優ヴィクラムとタグを組んで描き出した壮大な父娘物語だ。

6歳の知能しかない主人公クリシュナをヴィクラムが全身全霊で熱演。前半はクリシュナがニラを愛情いっぱいに育てる微笑ましい姿が描かれ、後半は引き離された2人の苦痛と法廷での争いに焦点を当てている。重い題材を盛り込みながらも、自然豊かな村で歌って、踊って、ミュージカルのようなシーンもあり、映画がエンターテイメントであることを存分に心得ているインド映画らしい楽しさにも溢れている。

クリシュナとニラの姿に感動の涙が溢れた上映のあと、ゲストとして来阪したA.L.ヴィジャイ監督、主演のヴィクラムが登壇し、観客とのディスカッションが行われた。


━━━ヴィクラムさんの知的障害者役が素晴らしかったが。
ヴィクラム:過去にも『Pithamaga(ピタメガン)』(03)ではセリフがなかったり、『Sethu(セトゥ)』(99)では事故で少し知恵遅れになった人物の役を演じたことがありますが、今回はセリフが多かったので、それを言うのが難しかったです。色々な障害者施設に行って、動きやセリフの言い方を勉強しました。
(クランクインして)最初の10日間ぐらいが経つと、私もクリシュナのことが好きになって、愛情を分け合うことができました。本作を見終わってから自分の娘に電話をしたというお客さんの声もいただきましたが、そんな優しいメッセージが溢れている作品です。

━━━多重人格や視覚障害など、普通の人とは少し違う役をすることが多いのはなぜか。
ヴィクラム:私は自分と正反対の役をやりたいと思っています。現在、ヴィジャイ監督と撮影中の作品では目が見えない警察官役を演じています。でもクリシュナ役は今までで一番難しかったです。ヴィクラムの中には絶対にない部分を持ち合わせた役ですから。

 kamisamakureta.jpg━━━ニラとクリシュナが手遊びをするシーンはアドリブか。

監督:ニラ役のサラちゃんは以前から知っている子でしたが、「この幸せな子は誰だろう。」というぐらいかわいい子です。レッドカーペットでも抱っこをするとサラちゃんは怒って、一人で立派にポーズをとるしっかりした面もありましたね。サラちゃんは日頃はヒンディー語を話しているのですが、本作ではタミル語で全てのセリフを言っています。全然違う言葉ですから、本当にすごいことです。細かいところも全て指示を出していますが、サラちゃんはそれに足した演技をみせてくれました。

━━━今後タミル語圏映画はどういう方向に向かっていくのか。
監督:私たちの文化習慣や、子守歌からはじまる音楽は映画の要素として外せません。インド映画で歌と音楽は欠かせないものですし、我々は感情表現が激しいので、それらを使って表現しているのです。


kamisama3.JPGのサムネイル画像観客とのディスカッションに引き続き、A.L.ヴィジャイ監督、ヴィクラム氏に二人が一緒に映画を作ることになったきっかけや、クリシュナの人物像をどうやって作り上げていったのか、さらにインタビューで話を伺った。


━━━ヴィクラムさんとA.L.ヴィジャイ監督が一緒に仕事をすることになったきっかけは?
監督:ヴィクラムさんは超多忙な人気俳優なのですが、3年前、ヴィクラムさんに時間ができたとき、すかさず「あなたがこの映画をやらないなら、私は監督を辞めます。」と強引にオファーしました。素晴らしい役者でないと撮れない映画です。電話でヴィクラムさんから「やりますよ。」と言われたときは奇跡が起こったと思いました。本当に夢が叶いました。

ヴィクラム:ヴィジャイ監督は、映画としてはこれで4本目なのですが、南インドの若手の中では一番実力がある監督です。彼の映画は映像がとても素敵だし、彼自身がとても純粋なので、作品の純粋さは彼のキャラクターからもきているんです。彼の前の作品を見て「若いのにすごいな。」と思っていたので、オファーが来たとき是非一緒にやりたいと思いました。一つ一つが大人っぽいニュアンスのある映像を盛り込まれた作品が作れるのは彼しかいないです。ヴィジャイ監督の次回作も是非やらせてくださいと言いました。役者が一人の監督とずっと組んで仕事をするのは微妙に難しいところがあり、普段はやらないのですが、彼の腕を信じているから、今も二人で撮影しています。


━━━ヴィクラムさんはA.L.ヴィジャイ監督をかなり評価しているようだが。
ヴィクラム:彼の作品はそれぞれ全然違います。アクションも撮れば、真面目なものも撮りますし、本作のような映画も撮っています。3本目の映画は時代劇でした。時代劇を撮るのはとても難しいのですが、2ヶ月で撮影し、それが成功したというのも彼の実力を示していると思います。

━━━主人公クリシュナは心底ピュアな人物に仕上がっているか、これは監督のアイデアか、それともヴィクラムさんのアイデアか。
ヴィクラム:ほかにも優秀な監督はいますが、彼らにはこの作品は撮れません。心の底からイノセントでないとこの作品は撮れないんです。小雀のエピソードや、信号が赤になるまで何があっても絶対に待っているとか、これらは本当に監督そのものです。絶対に間違いを犯さない。社会的に全てを考えた上で行動を起こす人なのです。

監督:クリシュナというキャラクターのアイデアはあったけれど、どうやって撮ったらいいのか分からなかったんです。どんな感じで、どういうジェスチャーでクリシュナを演じてもらうかも分からなかった。そんな中、ヴィクラムさん自身がこれらの宿題をもって様々な知的障害者のセンターを訪ねたりしながら、クリシュナの動きを全部自分で作り上げてきたのです。ヴィクラムが初めてクリシュナとしてシーンに出てきたときは、びっくりしました。自分が思い描いていたようなキャラクターそのものだったのです。

 ヴィクラムさんがそうやってクリシュナを演じることで、重ねて次を考えられるようになりました。最初の10日間は私もパニック状態で、セリフをどうしようか迷っていたのです。でもヴィクラム自身がアドリブを言う場面(冒頭の女性弁護士と会話するシーン)を聞いた上で、私もセリフを考えたりしていきました。まさに二人で作ったクリシュナ像ですね。

━━━父と娘の間に流れる愛が本当にうまく描かれているが。
監督:ニラ役のサラちゃんも、私が撮れたのは50%だけで、残りの50%はキャメラの後ろで起こっていたことなんです。ヴィクラムさんは自分の演技だけでなく、サラにもたくさんのことを教えてあげていました。キャメラの後ろで父親役のヴィクラムとたくさんコミュニケーションをとったからこそ、あんな素晴らしいニラを演じることができたんです。本当の父と娘の気持ちになって二人がキャメラの前に現れていました。

━━━本作では、インドの保護者法についても若干触れているが。
監督:障害のレベルによってですが、親権について訴えられたら、最終的には法廷で決められてしまいます。クリシュナもチョコレート工場で働いてはいますが、教えられたことはできても、少し違うと対応できなくなってしまいます。この状態で親権を持つのは難しいのが現状です。

━━━今のインド映画業界はどんな動きが起こっているのか。
監督:インド映画といっても、いろいろな言語で作られているので、民族や習慣に近づいて映画を撮っています。全体でインド映画は年間800本以上作られています。インディー語やタミル語など様々な言語で作られており、技術的にもハリウッドには負けていません。タミル語の映画は内容がインディー語圏の映画よりも深いので、インディー語圏でタミル語映画のリメイクをされることもあります。インド映画産業全体でみても、すぐれた映画音楽家や監督やキャメラマンは、結構タミル語圏から生まれているんですよ。


インド映画界きっての名優ヴィクラム氏がその才能を認める若手注目株のA.L.ヴィジャイ監督とのまさに二人三脚で誕生した『神さまがくれた娘』。本作を経てさらに次回作へと映画を生み出すお二人が、映画のことを通じてお互いの素晴らしい点を次々と挙げる姿に、心底信頼し合っている様子が伺えた。日本語で「おおきに!」と挨拶するなど、サービス精神旺盛ながらもスターの貫録を見せつけたヴィクラム氏の来阪に、グランプリ受賞が大きな華を添えたことは言うまでもない。そして、インドから生まれた新しいゴールデンコンビの次なる作品にも大いに期待したい。(江口 由美)

 

carol.jpg  第7回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門出品作品、香港映画祭上映作品となったキャロル・ライ監督の『二番目の女』。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002で審査員特別賞を受賞した『金魚のしずく』、日本で劇場公開されたカリーナ・ラム、リゥ・イエ主演の『恋の風景』と女性監督ならではの繊細な描写に定評があるキャロル・ライ監督の最新作が海外初公開され、大いに会場を沸かせた。

  双子の美人姉妹と二人が愛してしまった男をめぐるラブサスペンスを、現実と劇中劇を交錯させながら美しくもミステリアスに描いた本作。一人二役に加え、舞台劇でも二役をこなしたアジアンビューティー、スー・チーの熱演や、舞台劇もこなしシリアスな演技を披露したショーン・ユーの新しい魅力を堪能できる作品だ。

  第7回大阪アジアン映画祭および香港映画祭のゲストとして来阪したキャロル・ライ監督に本作の着想や、香港映画界の今について話を伺った。


━━━本作の着想はどこから得たのか。
私には双子の友達がいるのですが、お互いの友達が間違えるので、最終的に二人とも間違えられても「そうよ。」と答えるようにしているという話を聞いたのです。その状況が面白いと思い、本作の構想が浮かんできました。

劇中劇を取り入れたのも、舞台の話と現実の話の二つがあって、舞台のストーリーが二人の状況に繋がっているので両者を融合させました。女優が何かを「演じる」ということが主題にもなっています。

 RIMG1108.JPG━━━劇中劇は元々ある作品なのか。
『再世紅梅記』という越劇(広東オペラ)で、香港人なら誰でも知っている有名な作品です。古典作品なので、せりふ回しを現代風にアレンジし、北京語に変えています。

━━━スー・チーの一人二役ぶりが見事だが、出演するにあたってのエピソードは?
脚本を見せた時点で面白そうだと思ってもらえました。山口百恵が双子の姉妹を演じた『古都』(80市川崑監督作品)をスー・チーさんに見せ、こんな感じで演じてみてはどうかと打診したところ快諾してもらいました。

━━━どのようにして双子姉妹のキャラクターを作っていったのか。
もともと細かく姉妹の設定をしていました。姉は優しい性格で妹を大事にしているし、妹は奔放で野心が強い。スー・チーさんはトップクラスの女優で理解力も高いので、設定を読み込んでご自身でキャラクターをしっかり作り込んでいきました。

━━━ラブストーリーでのショーン・ユーのシリアスな演技が新鮮だったが、
ショーン・ユーさんは見た目は現代的ですが、時代劇にもマッチするルックスです。本作では時代物の劇中劇を披露するので、時代物の装束をつけてもかっこいい彼を起用しました。

━━━ 一貫してモノトーンな姉妹や劇中劇の衣装が印象的だが、衣装、美術に関するこだわりは?
本作では美術、衣装にもこだわっています。衣装担当には「シンプルで、かつ華麗な感じ」と指示をしました。キーカラーを赤、黒、ゴールド、白の4色に決め、そこからあまり離れることのないようにしました。

基本的には無地の衣装が多いですが、冒頭で姉が着用する花柄のワンピースが登場します。水中シーンにも使われているのですが、ここでは水の中でも写りのいいワンピースを衣装担当がわざわざ選んでくれました。

━━━今の香港映画界はどんな動きになっているのか。
今の香港映画界は大陸と合作の作品ばかりになっています。香港だけで作っている作品はほとんどない状況です。ジョニー・トー監督やイー・トンシン監督もしかりですが、香港市場が小さくなっているので、合作でないと成り立たないのです。また、大陸では審査があるので、どうしてもそれに合わせた描き方になってしまいます。

━━━大陸ではどんな映画が望まれているのか。
私もまだ模索中です。『2番目の女』は香港に先駆けて大陸で公開したので、すでにネットで評判が出回っており、高尚な趣味の方には受け入れられているようです。大陸の観客の大半は、まだ映画を見る水準が一定のところまで達していません。香港人だと音がいい、映像がきれいといった部分まで見ますが、大陸の人はまだストーリーとセリフに重きを置いていると思っています。

━━━最後に本作で監督が描きたかったことは?
女性の微妙な心理を描いています。そして常に誰かと比較してしまうような、人間としての微妙な心理を描いているのです。(江口 由美)


nibanme.jpgのサムネイル画像『2番目の女』 (The Second Woman)
~人の心こそ,この世で一番ミステリアス~

(2012年 香港,中国 1時間45分)
監督:キャロル・ライ
出演:スー・チー,ショーン・ユー,チェン・シュー,シー・メイチュアン,チャン・ナイティエン


姉フイシャンと妹フイパオの双子の姉妹を巡る映画だ。スー・チーが一人二役で姉妹に扮した。最初は外見だけでなく性格も2人の違いが明瞭になるように演じているが,次第に区別が曖昧になりミステリアスな色が濃くなる。監督は,イカ墨が流れ広がるシーンに姉の心の暗闇をイメージしていたと言う。イカ墨がどす黒い血のような感触で,何か悪いことが起きそうな予感がする。実際に姉の行為が原因となって姉妹の間に不和が生まれる。

妹は,舞台女優であり,同じ劇団の俳優アナンと付き合っている。ところが,姉がアナンと惹かれ合う気配を感じ,猜疑心に満ちた眼で姉を見る。そのシーンがホラー風で,姉妹の間に流れる不穏な空気を映すようだ。また,姉が体調を崩した妹に成りすまして舞台の代役を務めるが,その後で妹が「別人のようだった」と絶賛の拍手を浴びる。そのときの妹は驚き困惑した様子で,姉との確執を深めていく。なかなかサスペンスフルな展開だ。

広東オペラを舞台劇に改編した「紅梅記」が劇中劇として上演される。3年前に死んだフイシャンが彼女と瓜二つのチャオロンに憑依し,恋しいペイランに会いに来るという話のようだ。劇団の看板女優に扮したチェン・シューが劇中劇で一人二役を演じ優美な所作で魅せる。赤と白の衣装は情熱と清明を感じさせる。ペイラン役のアナンの前で,フイシャンがフイニャンと,チャオロンがフイパオとシンクロし,壮絶とも言える結末を迎える。

フイシャンがフイパオに付いて裏山に行った後,フイパオが戻ってきてフイシャンが行方不明となる。舞台での立ち位置,湖で発見された上着等を用い,もしかしたら逆かも知れないと思わせる。一方が他方に殺されたのではないかという疑問も浮かぶ。母親でさえ区別が付かないミステリアスな展開の中,クライマックスでは戻ってきた方が劇中劇のヒロインを演じる。妹と同じ男を愛した姉の心には暗闇が広がり,自身をも呑み込んでいく。

(河田 充規)

 


 

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9日19時から大阪市北区の梅田ブルク7で、大阪アジアン映画祭オープニング作品『道~白磁の人~』のワールドプレミア上映とオープニングセレモニーが行われた。最初に台湾からの来日ゲストとしてコンペティション部門『父の子守歌』のチャン・シーハオ監督と特別招待作品部門『星空』のトム・リン監督が登壇。東日本大震災を題材にした作品がワールドプレミア上映されるチャン・シーハオ監督は、「飛行機から降りてそのまま会場に来ました。」とユーモアいっぱいに挨拶した。『九月に降る雪』同様ファンタスティックな青春ストーリーがジャパンプレミア上映されるトム・リン監督も、最新作『星空』が当映画祭に招待されたことへの喜びを語った。

 

op-2.jpgそして、日本統治時代の朝鮮半島を舞台に、朝鮮工芸の継承に努め、朝鮮の人たちと真の友情を育んだ浅川巧の人生を感動的に描いた『道~白磁の人~』の高橋伴明監督と主人公浅川巧役の吉沢悠が登壇。満席のファンから熱い拍手が沸き起こった。

高橋伴明監督は、「映画監督をして40年、結婚して30年の節目の年で、映画監督を辞めたいと思ったときもありましたが、妻(高橋恵子)に『私は映画監督と結婚したのよ。』と言われたんです。今日ここに映画監督として立てたことをうれしく思います。今回の映画は直球を投げました。」と笑顔で挨拶。吉沢悠は「私は33歳になりますが、浅川さんのすばらしい功績を知りませんでした。今皆さんもこの映画を観て浅川さんを知るきっかけになってくれれば。」と役柄同様実直な面持ちで挨拶した。本作で韓国語も披露している吉沢悠は、共演者で親友役のペ・スビンと日頃は得意の英語でコミュニケーションを取りながら、時には現場に内緒で夜に共通の趣味である釣りをしていたとプライベートでも微笑ましいエピソードを披露。高橋伴明監督と初タグを組んで、最初は怖いイメージがあったが現場では声を荒立てることもなく、とても自由にやらせてもらったと監督への感想を語った。

韓国人スタッフに囲まれての撮影となった高橋伴明監督は、一番楽しかったことが「みんなで食事に行ったこと。キムチとマッコリさえあれば。」映画人として国を超えても心が通じることを身をもって体験したという。

最後に高橋伴明監督が「日韓併合時代、日本が朝鮮を強制的に植民地化したことが尾を引いている気がします。表面的ではなく、根本的に分かり合うメッセージとして受け取ってもらえればうれしいです。」と挨拶し、感動のワールドプレミア上映へとバトンタッチした。

 

第7回大阪アジアン映画祭コンペティション部門上映、特別招待作品部門上映、インディ・フォーラム部門上映は18日までシネ・ヌーヴォ(九条)、梅田ガーデンシネマ(梅田)、HEPホール(梅田)、14日からはABCホール(福島)、プラネット・スタジオ・プラスワン(中津)で上映が行われる。今年は香港返還15周年を記念した特別企画『香港映画祭』も同時開催。香港から監督やプロデューサーを迎え、ジョニー・トー監督最新作の『高海抜の夜』上映&トークイベントが行われるHONG KONG NIGHTなど、最新香港映画を堪能できるプログラムにも注目だ。

他にも、ヴェネチア、ベルリン映画祭で話題沸騰!日本統治下における台湾最大の抗日暴動事件を起こした先住民の物語を壮大な二部作に仕上げた台湾映画『セデック・バレ 太陽旗』、『セデック・バレ 虹の橋』を完全版で上映。アジアのアカデミー賞、アジアン・フィルム・アワードに監督賞、主演男優賞で堂々ノミネートされたインドネシア映画『ラブリー・マン』、ウォン・カーウァイ監督最新作の武術顧問を担当しているシュー・ハオフェン監督の斬新な武侠映画『刀のアイデンティティー』など期待と興奮の話題作が目白押しだ。

今年から創設されたインディー・フォーラム部門では、CO2助成監督作品のワールドプレミア上映をはじめ、イン・リャン監督がワンカットで撮影した四川省バス事故の遺族を描いた『慰問』などの海外インディペンデント作品も上映される。多彩なゲストを迎えたアジアンミーティングも見逃せない。

 

チケットは指定席1回券前売、当日共に1300円、共通自由席前売1100円、当日1300円

共通自由席3回券前売3000円、当日3600円

詳細は大阪アジアン映画祭運営事務局まで

TEL 06-6373-1225 http://www.oaff.jp/

 

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 hamamura-1.jpgのサムネイル画像  浪花の春恒例の「おおさかシネマフェスティバル2012」が3月4日(日曜)、大阪・谷町四丁目の大阪歴史博物館4階講堂で行われ、主演女優賞・浅丘ルリ子、主演男優賞の豊川悦司ら受賞者が一堂に勢ぞろい。浪花の名物司会者・浜村淳の名調子とともに満員のファンを沸かせた。


日本映画 個人賞は以下のとおり。


※敬称略
監督賞:阪本順治(『大鹿村騒動記』)
主演女優賞:浅丘ルリ子(『デンデラ』)
主演男優賞:豊川悦司(『一枚のハガキ』)
助演女優賞:神楽坂恵(『冷たい熱帯魚』『恋の罪』)
助演男優賞:片岡愛之助(『小川の辺』)
新人女優賞:杉野希妃(『歓待』)
新人男優賞:まえだまえだ(『奇跡』)
脚本賞:新藤兼人(『一枚のハガキ』)
撮影賞:北信康(『一命』)
音楽賞:安川午朗(『八日目の蝉』『大鹿村騒動記』)
新人監督賞:三宅喜重(『阪急電車 片道15分の奇跡』)
特別賞:原田芳雄、森田芳光


<授賞式でのコメント>

asaoka-2.jpgのサムネイル画像●主演女優賞・浅丘ルリ子『デンデラ』
東映『デンデラ』(天願大介監督)で主役を務めた元日活の大女優・浅丘は晴舞台にも悠然、授賞式では大トリとして登壇し「(他の)受賞者の皆さんはもう1時間半も待ってらっしゃるから」と他を気遣う余裕を見せながら、浜村氏としばし思い出話。

松竹の看板『寅さん』シリーズにマドンナ「リリー」役で最多4度も出演したことについて「最初は北海道の酪農のおかみさん役だったんだけど(山田監督に)こんなに手足が細くては無理なのでは、伝えますと、監督も“そうですねえ”とおっしゃって」と裏話。結果、山田監督がとあるキャバレーの前を通りかかった時に「リリー」が出演していたことから「流れ者の踊り子リリー」が誕生した、という知られざるエピソードも披露。「寅さんが一番愛してくれたマドンナでしたね」としんみり。

受賞作『デンデラ』については「(雪山ロケは)とても寒かったんですが、カットの声がかかると、みんなで温めて下さった。寒いですけど温かかったですね」。
「私はこれまでに158本、映画に出演しましたが、女ばかり50人、一番下が70歳の私。こんな役ないですよね。出させてもらってよかった」。


toyoetu.jpgのサムネイル画像●主演男優賞・豊川悦司「一枚のハガキ」
新藤兼人監督の前作「『石打尋常高等小学校 花は散れども』に出させてもらい、2度目に呼んでいただいてもう一度“新藤作品に出させてもらえる”ことが何よりうれしかった。戦友の未亡人役の大竹(しのぶ)さんとも前作から一緒でした。戦争体験はなく“戦争ってどういうものなんだろう”と考えながらだったんですが、監督がご自身の実体験を書かれたもので、監督がボクのモデルだったのがラッキーでした。だから、現場では恐ろしいほどの緊張感でした」。 「ビジュアル的には『~花は散れども』と正反対だったんですが見ていた頂いた方に“新藤さんに見える”と言われるならうれしいことです」。
 

kagurazaka-2.jpg ●助演女優賞・神楽坂恵『冷たい熱帯魚』『恋の罪』
園子温監督作品で女優開眼した神楽坂は「大阪にはしょっちゅう来ていて大好きな街。自分の人生の大事な2本で受賞なんてこの上ない喜びです」と感無量の面持ち。「グラビアアイドルではインパクトない、と思っていて、自分で何がしたいのか、分からなかった。女優なら自分を発言できる場所がある、と思った。園監督に厳しくしごかれて追い詰められて、辛かったけど、全否定されてよかったと思う」。

 前夜、郷里の岡山に帰り、この日は父親ら3人の親戚と車に同乗して会場入りした。父親は浜村氏からステージに上がるよう促され、テレながら壇上へ。「娘が女優になるなんて今でも信じられない。(娘の)映画は見てません」。
神楽坂は「父はシャイな人で、私の結婚式でもしゃべらなかったのに…。この席で親孝行も出来ました」とうれしそうだった。

 kataoka-1.jpg●助演男優賞・片岡愛之助『小川の辺』
愛之助は現在、京都・南座公演に出演中。午前の部終了後、タクシー→新幹線→ハイヤー、車中で着替え、という強行スケジュールで会場へ文字通り駆け付けた。メイク10分で慌ただしくステージに上がった愛之助は「藤沢周平作品の大ファンで舞台で“蝉しぐれ”もやっている。(『小川の辺』には)喜んで出させてもらいました。(主演の)東山紀之さんは何でも出来る方なので、セリフなくても会話しているような感じでしたね。監督はカット割りを少なくしたいという要望だったんですが、私は(カットを)長くやっていただく方がいいのでありがたかった」と歌舞伎役者ならではの強みも披露した。

この日はちょうど40歳の誕生日。スタッフが用意したケーキにナイフを入れるポーズで「2度目の成人式」の喜びを表した。「芸歴30年で40歳の節目の日に映画で初めての賞をいただくなんて、忘れられない門出になりました。歌舞伎大好きで歌舞伎あっての私だと思っていますが、歌舞伎以外の仕事もやっていきたい」と新たな門出を誓っていた。
 

 sugino.jpg●新人女優賞・杉野希妃『歓待』
アジアン・インディーズのミューズ的存在の杉野希妃は「“歓待”で何回か大阪で舞台あいさつさせてもらった。人生で一度しかもらえない新人賞を第二の故郷の大阪でいただけたことがうれしい。この映画は企画から公開まで立ち会ったので感激もひとしお。個人賞ですが、作品にいただいた作品賞だと思っている」。
杉野は慶応大在学中に韓国・ソウルに留学、06年に韓国映画『まぶし一日』で映画デビュー。女優だけでなく、プロデューサー業も兼ね、昨年公開の『マジック&ロス』で(リム・カーワイ監督)では、韓国映画『息もできない』のヤン・イクチュンとキム・コッビとの共演を実現させた。昨年の東京国際映画祭では「アジアの風」部門で特集上映されるなど“新人”離れした活躍ぶり。広島市出身だが、すっかり気に入った大阪で「いつかこの場所で映画を撮りたい」と語っていた。


 sakamoto.jpg●監督賞・阪本順治監督『大鹿村騒動記』
作品賞に加え監督賞にも輝いた大阪・堺市出身の阪本順治監督は晴れの凱旋受賞。特別賞(故原田芳雄氏)、音楽賞(安川午朗氏)と合わせ4冠獲得の快挙に「原田(芳雄)さんの思いの強さがこの作品に結晶した」とまずは偉大な主演俳優に感謝の気持ちを表した。
「原田さんに“あなたとは初めてだなあ”とまず言われた。それまでに6本やってるんですけどね。主演と監督としては確かに初めてだった。私のデビュー作“どついたるねん”に出ていただいてから23年、最後にご一緒できたことに強い縁を感じます。作品を皆さんに愛していただいてありがとうの気持ちでいっぱいです」。

阪本監督は現在、吉永小百合主演の新作『北のカナリアたち』の撮影中で、2月に北海道ロケを終えたばかり。今後、春、夏にも撮影の予定。これ以外にもロシアなどでロケを行う国際的な新作にも着手する。おおさかシネマフェスティバル“2連覇”も有望とあって自信と余裕を感じさせた。
 

 harada.jpg●特別賞・故原田芳雄 『大鹿村騒動記』(代理・長女原田麻由)
“原田一家”の一員だった阪本順治監督と東京から同行して会場入りした原田麻由は、2日の日本アカデミー賞授賞式で原田芳雄「主演男優賞」の代理受賞してきたばかり。
 大阪では「芳雄に代わりまして参りました。(芳雄も)この場で皆さんにお会いしたかったと思います。先日、芳雄の遺品を整理してまして大阪で賞を頂いた時の写真が出て来ました。その時のうれしそうな様子を見て私もうれしかった。素敵な賞をありがとうございました」。


kita.jpg ●撮影賞・北信康『一命』
3Dで初時代劇での受賞に「3Dはキャメラが大きいんですが、2Dで上映する劇場もあるので、両方出来るように考えた。(市川)海老蔵さん、役所広司さんら芸達者な人ばかりなので、芝居の邪魔にならないように、と」。 『一命』は小林正樹監督の世界的名作『切腹』のリメイクで比較対照されることについて「意識してもかなわないことなので。3Dは映画表現の幅を広げる意味があると思う」と話していた。


shindou.jpg ●脚本賞・新藤兼人(代理:新藤次郎)
『一枚のハガキ』代理・新藤次郎近代映画協会社長(兼人氏長男)
次郎氏「(兼人監督は)がんこじじいで、今は映画のこと以外は何もしたくない、という生活ですね。“一枚のハガキ”を撮る前から車椅子になりまして“これが最後になるね”と言ってました。“何が良いかね”とあれこれ探して“これだったら最後にふさわしい”と選んだ。監督は家族全部を映画にしてますからね」。懸念される監督の状態については「体力は落ちているが、先生は元気です」。とは言うものの、期待の声が大きい「もう一本」については「インディーズでやってると、撮影中にひとり倒れたりすると会社がつぶれたり大変なことになるので…」と否定的だった。


yasukawa.jpg ●音楽賞・安川午朗『大鹿村騒動記』『八日目の蝉』
「去年1月、同時期に依頼された。2人の監督(阪本順治、成島出)から“大丈夫か”と心配されたが、2本の内容が極端に違うのでやりやすかった。代表作を聞かれて「うーん“君に届け”“どろろ”“感染列島”」と自作を並べていた。

 (安永 五郎)

asaoka.jpg◆主演女優賞に浅丘ルリ子さん(出席)
◆新作プレミア『僕達急行 A列車で行こう』試写会(特別賞受賞記念)
◆阪本順治監督作品・監督賞『大鹿村騒動記』受賞記念上映


 ルリ子さんが、愛之助が、阪本監督が、「おおさか」の映画祭にやってくる! 浪速の春恒例の「おおさかシネマフェスティバル」2012が今年は3月4日(日曜)、大阪・中央区の大阪歴史博物館(4階講堂)で行われることが分かった。
 「映画ファンのための映画まつり」として関西の映画ファンに広く支持されてきたこの映画祭は、5年前から「大阪アジアン映画祭」と統合し、日本映画のお祭りとアジア映画の祭典という一大イベントとして開催される。前身の「おおさか映画祭」以来の恒例行事で、映画祭最大のイベント「11年度べストテン」と「個人賞」が下記の通り決まった。

 ベストテンは、年間200本以上観賞した人による投票委員の投票をもとに選考委員会で決定された。2011年1月から12月までに関西で公開された映画を対象とし、個人賞は優れた技量を有するとともに「大阪及び関西ゆかりの人」を判断材料としている。大阪唯一の、大阪ならではの映画祭。3月4日の授賞式には、主演女優賞・浅丘ルリ子さん、助演女優賞・神楽坂恵さん、助演男優賞・片岡愛之助さん、監督賞・阪本順治監督ほか受賞者を多数迎え、ベストテン発表と表彰式を開催する。

 また、受賞記念として午前中に、昨年末に惜しまれつつ亡くなった森田芳光監督(特別賞)の遺作『僕達急行 A列車で行こう』のプレミア試写。午後にはベストテン1位(作品賞)のほか監督賞、音楽賞、特別賞の4冠に輝いた阪本順治監督作品『大鹿村騒動記』を上映する。大阪・関西の映画ファンが集う熱い場になれば、と実行委員会では話している。

◎ベストテン
◎日本映画部門
1位「大鹿村騒動記」
2位「八日目の蝉」
3位「一枚のハガキ」
4位「冷たい熱帯魚」
5位「奇跡」
6位「デンデラ」
7位「小川の辺」
8位「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」
8位「阪急電車 片道15分の奇跡」
10位「海炭市叙景」

◎外国映画部門
1位「英国王のスピーチ」
2位「ゴーストライター」
3位「ブラック・スワン」
4位「トゥルー・グリット」
5位「ソーシャル・ネットワーク」
5位「家族の庭」
7位「ヒア・アフター」
8位「アジョシ」
9位「未来を生きる君たちへ」
10位「イリュージョニスト」
※日本映画は8位が、外国映画は5位が同数。

◆個人賞(日本映画部門)
【監督賞】阪本順治(大鹿村騒動記)
【主演女優賞】浅丘ルリ子(デンデラ)
【主演男優賞】豊川悦司(一枚のハガキ)
【助演女優賞】神楽坂恵 (冷たい熱帯魚、恋の罪)
【助演男優賞】片岡愛之助(小川の辺)
【新人女優賞】杉野希妃(歓待)
【新人男優賞】まえだまえだ(奇跡)
【脚本賞】新藤兼人(一枚のハガキ)
【撮影賞】北信康(一命)
【音楽賞】安川午朗(八日目の蝉、大鹿村騒動記)
【新人監督賞】三宅喜重 (阪急電車 片道15分の奇跡)
【特別賞】原田芳雄さん (大鹿村騒動記)
【特別賞】森田芳光監督

■個人賞(外国映画部門)
【監督賞】ロマン・ポランスキー(ゴーストライター)
【主演女優賞】ナタリー・ポートマン(ブラック・スワン)
【主演男優賞】コリン・ファース(英国王のスピーチ)
【助演女優賞】ヘイリー・スタインフェルド(トゥルー・グリット)
【助演男優賞】マット・デイモン(トゥルー・グリット)

 

 


【ベストテン発表&表彰式、受賞記念2作品上映】
◆日程 2012年3月4日(日曜)午前10時開会(9時30分開場)

◆会場 大阪歴史博物館4階講堂(大阪市中央区大手前4‐1‐32)
TEL: 06-3946-5728
地下鉄谷町線・中央線「谷町四丁目」駅下車9号出口、NHK放送会館隣

◆料金 一日通し券 目売り2800円、当日3000円(全席指定)

 

(C)2012『僕達急行』製作委員会
 

(C)2011「大鹿村騒動記」製作委員会
 【スケジュール】
9 :30 開場
10:00 委員長あいさつ
10:05 特別上映『僕達急行 A列車で行こう』関係者トーク
10:20 受賞記念上映①『僕達急行 A列車で行こう』
     (森田芳光監督特別賞)休憩(約45分)
13:00 ベストテン発表&表彰式  ~ 14:40(予定)
15:00 受賞記念上映② 『大鹿村騒動記』
   (作品賞、監督賞・阪本順治監督、故原田芳雄さん特別賞、
       音楽賞・安川午朗)受賞記念上映~ 16:32(予定)

●問い合わせ先
大阪映像文化振興事業実行委員会「おおさかシネマフェスティバル」事務局
TEL: 06(6373)1221
FAX:06(6373)1213
〒530-0014 大阪市北区鶴野町4番B -801

★ ゲストプロフィールとコメント
 ● 監督賞 阪本順治監督 『大鹿村騒動記』(東映)
【受賞の言葉】原田芳雄さんについていきさえすれば、という想いで撮りました。日々のディスカッションが今は本当に懐かしい。ぽっかりと空いた穴を埋めるには私自身が今まで以上に撮影“ごっこ”に励むしかない。もっと遊べと、声が聞こえる。皆さん、有難うございました。

【略歴】1958年10月1日、堺市生まれ。家の向かいが東映の劇場だったことから、映画に親しみ、三国丘高校から横浜国立大学。在学中から石井聰互、井筒和幸、川島透らの監督作品の現場に美術助手や助監督として参加しながら自主映画を制作。89年、赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビュー。ブルーリボン最優秀作品賞、日本映画監督協会や芸術選奨文部大臣などの新人賞。『王手』『ビリケン』の``新世界3部作``で知られるが、00年『顔』でキネマ旬報ベストワン、01年度の日本アカデミー賞最優秀監督賞受賞。ほかに97年『傷だらけの天使』、08年『愚か者 傷だらけの天使』、02年『KT』、07年『魂萌え』08年『闇の子供たち』、10年『座頭市 THE LAST』など、一作ごとに話題を集める注目監督。


●主演女優賞 浅丘ルリ子『デンデラ』(東映)
【受賞の言葉】主演女優賞を頂戴致しまして、誠にありがとうございました。これも厳しい寒さの中で、天願大介監督をはじめ、スタッフ・キャストの皆さまと力を合わせた結果だと思っています。今日の日本の状況の中、困難に立ち向かって生きるということを改めて考えさせてくれる作品でした。この映画に参加できたことを光栄に存じます。

【略歴】日活・井上梅次監督『緑はるかに』のヒロイン募集に応募、3000人の中から選ばれて銀幕デビュー。60年代は日活の看板女優としてヒロイン役を多数演じた。石原裕次郎と共演した蔵原惟繕監督『憎いあンちくしょう』などで存在感を発揮、同監督の『愛の渇き』(67年)は中でも高く評価された。代表作はほかに、石原プロ時代の『太平洋ひとりぼっち』、『栄光への5000キロ』、浦山桐郎監督の問題作『私が棄てた女』、日活の超大作『戦争と人間1部~3部』など。松竹の看板作品『男はつらいよ』シリーズには『~忘れな草』『~相合い傘』『~ハイビスカスの花』『~紅の花』と最多4度、クラブ歌手「リリー」役で寅さん(渥美清)のマドンナを務め評判を取った。昨年は東映『ジーン・ワルツ』にも出演。


●主演男優賞 豊川悦司(とよかわ・えつし)『一枚のハガキ』(近代映画協会)
【受賞の言葉】「一枚のハガキ」での受賞を心の底より嬉しく思います。
この映画は僕の中で、とても大きな映画です。人間のはかなさ、そして再生する逞しさをこの作品は描いています。大阪の街も新しいリーダー達を迎え、生まれ変わろうとしている気 がします。人の中にこそ街があり、社会があり、世界があります。
その逆はありません。新藤監督はじめ、全てのスタッフ、キャストの皆さんに感謝します。

【略歴】1962年、大阪府出身。関西学院大学在学中は演劇部所属。演劇集団「円」の研究生を経て、89年『君は僕をスキになる』でデビュー。91年『12人の優しい日本人』(中原俊監督)、翌92年『きらきらひかる』(松岡錠司監督)、『課長島耕作』(根岸吉太郎監督)など、実力派監督に起用されて注目を集め、日本アカデミー賞など数々の映画賞を受賞、その後も『Love Letter』(岩井俊二監督)、『フラガール』(李相日監督)、『顔』(阪本順治監督)、『サウスバウンド』(森田芳光監督)、『今度は愛妻家』(行定勲監督)、『必死剣鳥刺し』(平山秀幸監督)ら第一線監督に立て続けに出演。日本映画になくてはならない顔。新藤兼人監督作品にも08年『石内高等尋常小学校 花は散れども』に続いての出演。


●助演女優賞 神楽坂恵(かぐらざか・めぐみ)『冷たい熱帯魚』『恋の罪』
【受賞の言葉】子供の頃から大好きな大阪で、私にとって掛けがえのない二作品で、助演女優賞を頂けたこと。とても嬉しく幸せです。これからも女優として人として、精進していきたいと思います。本当に、ありがとうございました。

【略歴】1981年、岡山県出身。グラビアアイドルとして活躍していたが、07年『遠くの空に消えた』で映画デビュー。09年『童貞放浪記』(小沼雄一監督)で注目を集め、三池崇史監督『十三人の刺客』に出演後、園子温監督の『冷たい熱帯魚』でファンの度肝を抜いた後、『恋の罪』、『ヒミズ』と同監督の作品に立て続けに出演して一気にブレイクした。昨年秋、園監督と結婚した。


●助演男優賞 片岡愛之助(かたおか・あいのすけ)『小川の辺』
【受賞の言葉】私の大好きな藤沢周平先生の作品で、公私ともお世話になっている東山紀之さんと共演させていただき、そして地元大阪の助演男優賞をいただきました事、役者としてこの上ない喜びでございます。このたびいただきました助演男優賞を糧に一層芸道を精進いたします。ありがとうございました。

【略歴】1972年、堺市出身。本名・片岡寛之。77年、松竹芸能の子役オーディションに合格、芝居の世界へ。81年、十三代目片岡仁左衛門に見出され、片岡一門の部屋子になり、片岡千代丸襲名、京都・南座「勧進帳」で子役として初舞台。93年、二代目片岡秀太郎の養にとなり、大阪・中座「勧進帳」の駿河次郎で六代目片岡愛之助襲名。上方歌舞伎を中心に活動、数少ない大阪出身、大阪在住の歌舞伎俳優。主に二枚目だが、骨太な役もこなす。今は立役専門。映画は05年『シベリア超特急5』に出演後、07年、『Beautyうつくしいもの』で歌舞伎役者役も。08年『私は貝になりたい』、09年『築城せよ!』に出演。映画ファンにもなじみ

●新人女優賞 杉野希妃(すぎの・きき)『歓待』(和エンターテインメント)
【受賞の言葉】新人女優賞という一生に一度しかいただけない貴重な賞をありがとうございます。 昨年何度か舞台挨拶に伺った際に、大阪の方々の映画愛を直に感じました。 女優として、人間として、さらに大きくなって、いつか大阪が舞台の映画を作りたいです。

【略歴】1984年 広島市出身。ノートルダム清心高校から慶応義塾大学経済学部進学、大学3年修了時にソウルに留学、06年、韓国映画『まぶしい一日』″宝島〟編主演デビュー。昨年公開の『マジック&ロス』で主演、プロデューサーとして、韓国映画『息もできない』コンビ、ヤン・イクチュン、キム・コッピとの共演を実現。昨年、第24回東京国際映画祭の「アジアの風」部門で「女優・プロデューサー杉野希妃」アジア・インディーズのミューズとして特集上映される。 

●新人男優賞 まえだまえだ 『奇跡』(ギャガ)
 【受賞の言葉】航基(兄)奇跡です!この映画を通して是枝監督やたくさんのスタッフの方に出遭えた事は一生の宝です。ありがとうございます。
旺志郎(弟)今まで生きてきて何の賞ももらった事がないのでめっちゃうれしい!!いい映画に出させてもらえてホンマによかった!!

【略歴】前田航基 1988年、大阪府出身。弟・旺志郎とお笑いコンビ「まえだまえだ」として活動、07年、「M-1グランプリ」に出場、史上最年少で準決勝進出」し「エンタの神様」など数々のバラエティー番組で注目される。昨年、NHK朝の連続テレビ小説「てっぱん」、映画は『バルトの楽園』、『ゲゲゲの鬼太郎』。
前田旺太郎 2000年、大阪府出身。兄・航基との漫才コンビで人気。ディズニー映画『スノー・バディーズ・小さな5匹の大冒険』に兄弟で日本語吹き替え出演した。

●脚本賞 新藤兼人(しんどう・かねと) 『一枚のはがき』(東京テアトル)
【受賞の言葉】シナリオライターとしてまた監督として常に「スゴイ映画」を目指してきました。監督最後の作品「一枚のハガキ」でおおさかフィルムフェスティバル脚本賞をいただき光栄です。ありがとう。 (新藤次郎)

【略歴】1924年、広島県生まれ。34年から京都・新興キネマ現像部を皮切りシナリオ執筆。溝口健二監督に師事。44年松竹大船脚本部に移籍。同年4月入隊、宝塚海軍航空隊で終戦を迎える。戦後、吉村公三郎監督『安城家の舞踏会』などで脚本家の評価を高め、50年、同監督とともに「近代映画協会」設立。51年『愛妻物語』で監督デビュー。『原爆の子』『第五福竜丸』など戦争や原爆をテーマに作品を作り続け、60年の『裸の島』がモスクワ国際映画祭グランプリに。『鬼婆』(64年)『本能』(66年)など実験的な意欲作も多く、『ある映画監督の生涯  溝口健二の記録』(75年)は記録映画の
傑作と高く評価された。95年『午後の遺言状』は各種映画賞を独占した。『一枚のハガキ』は「最後の作品」。

●撮影賞 北信康(きた・のぶやす) 『一命』(松竹)
【受賞の言葉】映画を観て頂いたファンの方々に選んでもらえた事が一番嬉しく思います。監督はじめスタッフ、キャスト一同、真摯に作品と向かい合い作り上げた「一命」です。新しい形での映像表現も良き経験となりました。再び大阪に呼んでもらえる様に今後も頑張りたいと思います。 有難うございました。

【略歴】1960年、香川県出身。仙元誠三、栢野直樹、篠田昇ら名カメラマンに師事。主な作品に『北の零年』(05)、『バッテリー』(07)、『新宿インシデント』(09)、『食堂かたつむり』(10)、『漫才ギャング』(11)など。故森田芳光監督とは『黒い家』(99)、『模倣犯』(02)、や『十三人の刺客』(10)で名コンビぶりを見せている。後者では日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した。

●音楽賞 安川午朗(やすかわ・ごろう) 『八日目の蝉』(松竹)、『大鹿村騒動記』(東映)
【受賞の言葉】『賞に選んで頂き評価してくださった事、大変光栄です。「大鹿村騒動記」「八日目の蝉」はちょうど同じ時期に作曲しました。正直、苦労しました。しかし、両作品に参加出来た事は僕の劇伴音楽屋人生の宝物であり、一生忘れない出来事でした。すべての方々に感謝します。

【略歴】1965年、愛知県出身。東京藝術大学在学中よりスタジオミュージシャンとして活動。89年頃に石井隆(劇画家、映画監督)と出会ったことをきっかけに映画音楽の仕事を。『ヌードの夜』(93)『花と蛇』(04)などの石井監督作品のほか、平山秀幸監督作品、瀬々敬久監督ら、多彩な映像作品の音楽を手がける。阪本順治監督とは、『行きずりの街』(10)に続き、『大鹿村騒動記』(11)

●新人監督賞 三宅喜重監督(みやけ・よししげ) 『阪急電車』(東宝)
【受賞の言葉】おおさかシネマフェスティバルの新人監督賞、本当に有難うございます。大阪で生まれ育ち大阪が大好きな私にとっては、今回の受賞は本当に感慨深いものがあり、今後、より良い作品を作る励みにしたいと思います。

【略歴】1966年、大阪府出身。1960年、関西テレビ入社、本社制作本部を経て、1997年から東京支社勤務、「白い春」「トライアングル」「がんばっていきまっしょい」など、多数のテレビドラマを高く評価されている。大阪を舞台にした単発ドラマ「ありがとう、オカン」では日本民間放送連盟賞番組部門・テレビ番組最優秀賞受賞。『阪急電車』で映画デビュー。

●特別賞 原田芳雄(はらだ・よしお) 『大鹿村騒動記』(東映)
【略歴】1940年2月29日、東京都出身。本所高校を経て俳優養成所を卒業、座員に。テレビデビュー後、68年、松竹『復讐の歌が聞こえる』で映画デビュー。ワイルドなアウトロー的キャラで代表作は日活バイオレンス・アクション『反逆のメロディー』、『野良猫ロック 暴走集団‘71』、東宝のヒットシリーズ『無宿人御子神の丈吉』(3本)など。90年、『われに撃つ用意あり』『浪人街』でブルーリボン賞主演男優賞、97年『鬼火』で毎日映画コンクール男優主演賞。阪本順治監督作品には89年の監督デビュー作『どついたるねん』以来6本に出演した。08年、大腸がんが発見されたが、病を押して『大鹿村騒動記』に出演、完成披露試写会には車椅子で出席した。昨年7月19日、肺炎のため死去。『大鹿村騒動記』は死去3日前に公開された。

● 特別賞 森田芳光(もりた・よしみつ)
【略歴】1950年、東京出身。日大芸術学部放送学科時代から自主映画製作をはじめ、81年、落語家を主人公にした『の・ようなもの』でデビュー。83年、松田優作主演の『家族ゲーム』が出世作になり新世代の旗手に。84年、沢田研二主演『ときめきに死す』、薬師丸ひろ子主演で大ヒットした『メイン・テーマ』。松田優作主演、夏目漱石原作の『それから』(85)は各賞を総なめにした。ほかに吉本ばなな原作『キッチン』(89)、パソコンによる男女の出会いを描いた『(ハル)』(96)、渡辺淳一原作『失楽園』(97)、宮部みゆき原作『模倣犯』(02)、黒澤明監督の『椿三十郎』を同じシナリオでリメイクした『椿三十郎』(07年)など一作ごとに話題を集めた。昨年12月20日、急性肝不全により、惜しまれつつ死去。享年61歳。
(安永 五郎)

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