メイド・イン・ジャパンでここまで壮大なSF映画が作れるとは!今までSF映画は日本がアメリカに太刀打ちできないジャンルのひとつだと思っていたが、そんな劣等感を感じさせないほど、ヤマトは悠々と宇宙空間を漂っていた。もう冒頭から映像の美しさに釘付け。無数の星が散らばる広大な宇宙での戦闘シーンは、地上戦にはない風格とロマンを携えていてこれぞ映画だと嬉しくなる。沖田艦長役の山崎努が完成試写を見て「ブラボー!」と叫んだそうだが、2時間18分の“航海”は本当にあっという間だった。
2199年の地球は、ガミラスの侵攻により放射能汚染され寿命1年にまで迫っていた。人類が生き残るのは絶望かと思われたある日、地球から14万8千光年離れたイスカンダルから放射能を除去する装置があるという情報が届く。嘘か誠かその真意はつかめないが、1%でも希望があるのならばと地球防衛軍は最後の宇宙船艦「ヤマト」をイスカンダルへ派遣する。
偉大なアニメを1本の映画に納めるために、キャラクターや状況設定の変更は随分なされたようだ。佐渡先生は男性から女性へ変更され、主人公・古代進の兄・守も冒頭で戦士する。敵側の実体もアニメのように明確には描かれてはいない。そのことに物足りなさを感じたり、一部強引な展開にツッコミを入れる熱狂的ファンもいるだろうが、そこはアニメとは別物の映画版ヤマトとして素直に楽しんでほしい。
しかし、ヤマトの精神面はきちんと受け継がれている。愛する人や地球を守るために戦う不屈の闘志、勇気と希望の表現は直球ストレートに胸に届く。特に、病に倒れた沖田艦長に代わり、艦長代理に任命された古代進のリーダーとしての成長と葛藤は現代社会を生きる者にとっても通じる所がありドラマチックだ。「兄を見殺しにした」と沖田艦長を恨んでいた古代だが、ガミラス戦では自身が仲間を切り離す決断を迫られる。そこで初めて艦長の立場を実感した古代。正義感だけでは人を救えないと知った彼の哀しみと苦悩に胸が締め付けられ、本当の意味での戦いの愚かさを見た。
古代進を演じるのは木村拓哉。ヒロインの森雪を黒木メイサ。その他、名優たちがそれぞれの役にはまった熱演をみせているが、本作ほど木村のスター性を際立たせた作品はないかもしれない。ほぼ100%の国民に浸透する彼の抜群の知名度は、時に俳優として不利な条件となるが、今回ばかりはそのオーラがいい意味で作品の燃料になっていたと思う。山崎監督は木村を選んだ理由を「地球をたくせる存在感がある」と話していたが、まさに彼の完成されたカリスマ性がなければ、実写版ヤマトという大博打はうてなかっただろう。木村の自らあえて困難な道を選択し開拓してゆく“志”と、常に“全力”を出しきる真摯なスタイルは、「ヤマト」の勇敢さとリンクしてひとつの大きな夢を作り上げた。