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★ウィンターズ・ボーン

(c)2010 Winter's Bone Productions LLC. All Rights Reserved.
『ウィンターズ・ボーン』 (WINTER'S BONE)
〜山村の荒涼とした風景の中、少女の勇気が光り輝く〜

(2010年 アメリカ 1時間40分)
監督:デブラ・グラニック
出演:ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、
    デイル・ディッキー

2011年10月29日(土)〜大阪ステーションシティシネマ、新京極シネラリーベ、<東京>TOHOシネマズシャンテ他
公式サイト⇒ http://www.wintersbone.jp/
 寒々とした光景が広がるアメリカ中西部ミズーリ州の山あいの小さな村。病気の母に代わって幼い弟と妹の世話をする17歳の少女リー。ある日保安官がやってきて、家を保釈金の担保にしたまま行方の知れぬ父親が裁判に現れなければ、家を没収すると告げる。リーの父探しが始まる。親戚や知人の家を訪ねても、誰もが口を閉ざしがちで一向に見つからない。逆に首を突っ込むなと警告までされる。それでもめげずにリーは父親の消息を尋ね回るが…。
 リーを演じるのは、『あの日、欲望の大地で』のジェニファー・ローレンス。本作でも、強さと弱さをあわせもつ17歳の少女の心の揺れを繊細に演じ、素晴らしい。閉鎖的な村社会の中で、コワモテばかりの中年男や女を前にひるまず、過酷極まりない仕打ちにあっても決してくじけない。きゃしゃで可愛らしい少女がみせる、意外なほどの気丈さ、たくましさに圧倒される。かといって気負うこともなく、弟妹には優しく、年長者として家族の責務を当然のものとして引き受け、黙々と行動するさりげなさ。ひとえに家族を守りたいという一心から生まれたヒロインの気骨ある姿は、心に深く刻み付けられる。生活資金も尽きかけ、軍隊に志願して金を工面しようとして、逆に面接官から諭されるシーンも印象的だ。
 冬の大自然のさびれた風景をとらえたカメラが冷たい空気感を伝え、リアリティを増す。ミズーリ州でのオールロケ、現地住民とプロの役者を混在させたキャスティングにより、薬物中毒、貧困などの問題にあえぐ、アメリカ山間部の実態が生々しく浮かび上がる。タイトルの“冬の骨”が一体何を意味するのか、失踪した父の行方も、物語の展開とともにわかってくるサスペンスで、目が離せない。
 孤独で八方ふさがりのリーにやっと手を差し伸べてくれた叔父を演じるジョン・ホークスがいい。薬物中毒で、はじめはつっけんどんだった叔父が、少しずつ変わっていく。頼りにならないようで、実はきちんと姪を見守ってくれる頼もしい大人のありようをみせてくれる。リーに近寄らないよう注意する、意味ありげな女を演じるデイル・ディッキーも出番はわずかながら強烈な印象を残す。過酷な境遇に負けない少女の生き様が希望を伝え、心温まる傑作。
(伊藤 久美子)ページトップへ
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