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★トルソ
『トルソ』
〜若い女性の揺れる思いを繊細に表現〜


(2009年 日本 1時間44分)
監督・撮影・脚本:山崎裕
出演:渡辺真起子、安藤サクラ、ARATA、蒼井そら、石橋蓮司、山口美也子

2010年9月4日(土)〜シネ・リーブル梅田、10/16〜京都みなみ会館にて公開
・山崎裕監督インタビュー⇒こちら
・公式サイト⇒
http://www.torso-movie.com/
 言葉で表しがたい様々な感情が、役者の表情から、仕草から豊かに伝わってきて、深い余韻が残る。同僚ともほとんどつきあわず、地味にひとり暮らしを楽しんでいるOLのヒロコ。恋人のように大切にしているのは、顔も手も足もない男性の胸像のトルソ。妹のミナが恋人と喧嘩し、荷物を抱えてヒロコのアパートに転がり込んできて、それまでの静かで穏やかな生活は一転…。
 内にこもりがちで、自分の悩みや思いをほとんど話さないヒロコ。対照的に、あけっぴろげな性格のミナ。姉妹といっても父親も違うし、ミナの恋人はヒロコの元カレ。複雑な事情を抱えながらも、性格のまるで違う二人が一緒に暮らすことで、ヒロコは、今まで心の奥底にしまい込んできた過去と向きあい、新たな感情を体験していく。ベランダで線香花火をしながら思い出話をしていて、ふと小さい頃の妹への羨望の気持ちを口にするシーンは印象的だ。整理整頓された部屋をかき乱すミナに耐え切れず出た文句がきっかけで、互いに感情をむきだしにした喧嘩に、それぞれの悩みの深さを感じた。
 演技力にかけては定評のある渡辺真起子と安藤サクラが姉妹を演じ、セリフにならない感情の小さな揺れまでもが繊細に伝わる。二人が実家に帰った時の母とのちょっとした会話から、かつて何か問題があったこともうっすらと感じられる。予期せぬ妊娠という問題に直面したミナの悩みに姉として世話をやいたり、相談にのることで、ヒロコの世界が外へ向けて開かれていくきっかけとなる。
 公園で遊具で遊ぶサクラをヒロコが見つめるシーンや、ヒロコがミナを見送るシーンが心に残る。監督は、『誰も知らない』、『歩いても 歩いても』など是枝裕和映画のキャメラマンとして知られる山崎裕。手持ちカメラを生かし、役者の感情を生々しくフィルムに刻みこんでいく。
 さまざまな困難を越えて、姉妹が、互いを大切に思い、同じ女性として励ましあい、前向きに人生に向き合おうとしていくラストはさわやかだ。
(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
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