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★終着駅 トルストイ最後の旅
『終着駅〜トルストイ最後の旅〜』(原題:The Last Station)
〜トルストイと妻ソフィヤが紡いだ愛と葛藤の日々〜

(2009年 ドイツ=ロシア 1時間52分)
監督:マイケル・ホフマン
出演:ヘレン・ミレン、クリストファー・プラマー、ジェームズ・マカヴォイ、ポール・ジアマッティ他
2010年9月11日〜TOHOシネマズ梅田、敷島シネポップ、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸ほか全国で公開
公式サイト⇒ http://saigo-tabi.jp/
 『戦争と平和』、『アンナ・カレーニナ』で知られるロシアの文豪トルストイは、信奉者も多く、当時のカリスマ的な存在だった。本作はそんな彼を50年近く支え続けた妻や、最後に弟子となった青年教師を通し、一人の男としてのトルストイと彼らの愛の姿が描かれている非常に意欲的な作品だ。
  トルストイ(クリストファー・プラマー)の妻ソフィヤ(ヘレン・ミレン)は、時には助手として、時には13人の子どもたちの母として夫を支えてきた。トルストイは弟子ウラジミール(ポール・ジアマッティ)と新宗教を興し、爵位や財産、家族を捨てて独り身となる決意をする。ソフィヤの猛烈な反発を受けたウラジミールは、トルストイを信奉する青年教師ワレンチン(ジェームズ・マカヴォイ)を助手として屋敷にもぐりこませる。
 本作でまず心を掴まれるのは、トルストイとソフィヤの熟年夫婦がみせる様々な愛の葛藤だ。ソフィヤに自分の理想を邪魔され苦悶する一方で、寝室で二人の時は、ニワトリの真似をしてじゃれあったりもする。威厳がありかつ一人の男としての弱さや甘えをみせるトルストイを、クリストファー・プラマーが味わい深く演じている。そして、長き間変わらぬ愛を貫き、全てを捨てて離れる決意をしたトルストイを必死で取り戻そうとするソフィヤの強いエネルギーを、ヘレン・ミレンが圧倒的な存在感で体現している。
 トルストイとソフィヤ、ソフィヤとウラジミールが喧々諤々やりあう姿を目の当たりにするワレンチン。彼の目を通して、俗に悪女と呼ばれる姿とは一線を画す、ソフィヤの知られざる一面が映し出される。自らも愛を知り、愛する故の苦しみや痛みが分かる大人へと成長していくワレンチンの奮闘ぶりは共感でき、かつ作品に新鮮な風を吹き込んでいる。
 トルストイが最期の時をまさに迎えようとしている駅舎でのラストシーンでは、長年寄り添った夫婦の深い絆を目の当たりにし、目頭が熱くなった。ロシアを舞台に描く文豪トルストイと妻ソフィヤの晩年の姿は、文芸大作とは違った趣のあるリアルで共感の持てる普遍的な男女のストーリーとして永く心に残ることだろう。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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